ヒットマンのレビュー・感想・評価
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キラー・コンテンツ
実在したゲイリー・ジョンソンのエピソードがとんでもなさすぎて、記事を読んだパウエル氏がこれは映画になる!と快哉を叫んだであろうことは想像に難くない。ただおそらく当の本人はそうたいした起伏もなく生涯を終えたので、映画としてはあのような無理やり取ってつけたようなオチを付け足したかと思われる。途中まではかなりカリカチュアライズして、殺し屋コスプレ大会の様相を呈していたのに、突如明らかに主人公らしからぬ行動に出る。倫理的にどうこうと言うより、そんなことをしそうもないキャラクターなのだ(女の方はいかにもしそう)。
それにしても元ネタの捜査方法はあまりにもリスキーすぎないか。接触する相手はそもそも人を殺そうと思っている連中なので、どんな行動に出てもおかしくない。しかもその後裁判に出廷して顔出ししているので、報復の危険性も非常に高い(裏社会にも情報が広まって依頼もなくなりそう)。
レオンはジョン・ウェインの仮装とかしていたけれど、あちらは本物の殺し屋だった。この主人公の仮装はほとんど殺し屋コント風なのもあって、どう見ても調子に乗っている。
「元の自分」と「演じている自分」
『トップガン マーヴェリック』以降、出演作品のヒットが続いて日本でも知名度爆上がりのグレン・パウエル。今作はリチャード・リンクレイター監督の新作に主演とのことで、私も楽しみにしていた本作、サービスデイの角川シネマ有楽町は平日午前中にしてはなかなかの客入りです。おそらく“ビフォア”トリロジーからのリンクレイター監督ファンも多いのだろうと思います。勿論、私もその一人。
で、今回はいきなり結論から入りますが、確実に面白いです。ゲイリー・ジョンソンという実在する人物を基に作られたフィクションですが、ゲイリーの本業と副業の意外な組み合わせから展開される物語は、経験と状況によってゲイリー(グレン・パウエル)に意外な変身をさせていきます。実はこれ、物語の前半に伏線としてのシーンがあることで、ゲイリーだけでなく観ている私たちも信じてしまう暗示となっており、やはり巧い脚本だと思います。
そして、ゲイリーを変えるさせるのに強い原動力となるマディソン(アドリア・アルホナ)の存在が重要。二人のまさかの出会いから、ゲイリーに魔が差すきっかけを与える彼女。持ち前の天然性からの大胆すぎる行動は、常に「何か起こりそう」な不穏さも感じますが、魅力的なルックスと抜群な相性の良さでゲイリーもついつい大胆になっていきます。そして、思いもよらぬ展開に、「元の自分」と「演じている自分」の境界線が曖昧になっていくゲイリー。もはやゲイリーとマディソンの運命の行方に目が離せません。
緩急の利いた展開で、前半には想像し得ないほど後半には絶体絶命の状況もあり、まさに興奮のエンターテインメント。勿論、今回もグレン・パウエルの可愛げといい身体全開で、彼のファンなら勿論必見の一作。満足度高いと思います。
え?いいの?
変装はできないが、変奏し続けるリンクレイター
ゲイリーは様々な人物になりきることで、
複雑なミッションを遂行していく。
この多面的で変幻自在なキャラクターは、
一見するとタランティーノ作品のような、
ユーモアや、ブラックなテイストを期待させる。
しかし、リンクレイターは、その期待を裏切るような、
コメディの成分は多少はあるが、
どこか真面目なトーンで物語を進めていく。
どういう事か。
本作のおもしろさは、
◯主人公の多人数の変装。
◯殺人の依頼を受ける殺し屋。
◯おとり捜査。
◯ラブ
だろう。
それに、ブラックさ、ユーモア、アクション等々を加味しない理由は、
リンクレイターのパーソナリティ(作家性というよりも)、
に関係があるのかもしれない。
本作のセリフでも何度も出てきたが、
〈自分って誰〉
〈新たな人生〉
〈違う自分〉
これは、
「スラッカー」から、
手を変え品を変え、
インディペンデントで、
メジャーで、
時には裏声も使いながら、
さじ加減も変えながら、
常に同じメッセージを作品に内包させ続けてきた。
その理由を類推すると、
アメリカ人として、
映画監督として、
ひとりの人間として、
小文字の、
make america great again
を、
人生に仕事に、
アイデンティティに、
目の前で途中下車した、
または、
乗り換えた仲間たちに、
ささやき続けてきたのではないか。
そして本作でも、
残り少ない時間を意識しながら、
あらゆる変装を試みて、
自己探求を行うだけでなく、
社会の中で様々な役割を演じ、
その中で自己を見出そうぜ、
エブリバディ・・と。
ユーモアの成分を少なくして、
つまり、
ゲイリー100%で、
俺はロンにはなれないんだと、
言い続けていたような気がしてならない。
【蛇足】
新宿ピカデリーの、
「リトルダンサー」4K上映のプロモーションのポスターのデカさ、
デジタルサイネージの物量に驚く。
ケン・ローチ作品でおなじみの、
ゲイリー・ルイスが演じるガンコ親父と、
主人公の兄貴のストライキのシークエンスは、
自分が参加した作品のシナリオ会議で、
このシークエンスの親子の関係、
仕事仲間との、
対立、葛藤の役割りの、
バランスの按分を何度例に挙げた事か、、、基本のき。
気になっていた作品。こういうテーマにありがちなシリアス展開があんま...
天網恢恢、疎にして漏らしちゃった!
囮捜査って、ある意味『マイノリティ・リポート』のプリコグを使った犯罪防止のようでもあるけど、やはり恣意性の介在リスクは高いと思う。
それはさておき、微妙にバランスの悪い映画ですね。
哲学を勉強してるというか生業にしている人として、それなりの倫理観とか論理の帰結があるはずなのに、まったく合理性のない結末の展開で、主人公のキャラとしては破綻してませんか?
それなら闇堕ちしても仕方ないよね、という要素もなく、お天道様の下で堂々と幸せになってるし。
『天網恢恢、疎にして漏らさず』なんて故事成語が意外と身体に染み付いてる我々日本人にはちょいと馴染まないというか。
まぁ、コメディといえばコメディなところもあるのでいいんだけど、後味が悪いので〝契約〟を見直してもう一度編集し直したらいいのに。
地味で面白みのない主人公が、充実して輝き始める変化にワクワク!〝危険な男〟の空気をまとい、恋まで絡んでキュンと心くすぐられるばかりか、濃厚なベッドシーンにゾクゾクしました。
「6才のボクが、大人になるまで。」のリチャード・リンクレイター監督と「トップガン マーヴェリック」以降、ハリウッドの出演作でヒットを連発している人気俳優グレン・パウエルがタッグを組んだクライムコメディ。
パウエルが脚本と製作にも参加し、スター映画の裏面のごとき傑作を作り上げました。 偽の殺し屋に扮して、殺人を依頼してきた人物を逮捕に導く。米国の潜入捜査官の実話をもとに、膨らませた作品です。“自分”とは一体何なのか。どうしたらなりたい自分になれるのか。ポップで遊び心たっぷりな物語の中に、哲学的な問いも内包されています。
●ストーリー
ニューオーリンズで2匹の猫と静かに暮らすゲイリー・ジョンソン(グレン・パウエル)は、大学で心理学と哲学を教える傍ら、地元警察に技術スタッフとして協力していました。
ある日、おとり捜査で殺し屋役となるはずの警官が職務停止となり、ゲイリーが急遽代わりを務めることに。依頼人を事前に調べ、その人好みの殺し屋になりきって逮捕につなげます。このとき殺人の依頼者を捕まえるためにさまざまな姿や人格になりきる才能をゲイリーは、思いがけず発揮してしまうのです。こうしてゲイリーは、演技”を始めます。専門の心理学の知見を活かしつつ、多様な顧客のニーズに合わせて、彼らが求めるタイプのヒットマンへの変身を個別に繰り返す偽の殺し屋を演じていくのです。時にはタフで非情な男に、時には色男に。そして、有罪判決を勝ち取るための証拠を引き出し、次々と逮捕へ導いていきます。
ところが、支配的な夫との生活に追い詰められた女性・マディソン(アドリア・アルホナ)が、夫の殺害を依頼してきたことで、ゲイリーはモラルに反する領域に足を踏み入れてしまうのです。
セクシーな殺し屋ロンに扮して彼女に接触。支配的な夫レイ(エバン・ホルツマン)との生活に傷つき、追い詰められた様子の彼女に、ゲイリーは思わず手を差し伸べてしまいます。逮捕するはずの相手に対し「この金で家を出て新しい人生を手に入れろ」と見逃してしまうのです。恋に落ちてしまったふたりは、やがてリスクの連鎖を引き起こしていくことになるのです。
この出会いで2人は恋に落ちますが、後日、マディソンの夫が何者かに殺害され、彼女と彼女と一緒にいた殺し屋らしい人物(ロンのこと)が容疑者として浮上します。殺し屋ロンに扮し続けるゲイリーは、マディソンの容疑を晴らすため、一芝居買って出ますが…。
●解説
人間関係の機微をつぶさに描いてきたリチャード・リンクレイター監督が、人との出会いによってもたらされる自己への影響に焦点を当てました。地味でさえなかったゲイリーは、マディソンとの出会いを経て自ら作り出したロンの人格を気に入っていくのです。だけど、全く違う人間に変わるわけではありません。もしかしたら、なりたい自分の要素はすでに自分の中にあって、運命的な出会いが引き出してくれるものなのではと思わせる展開なのです。
ゲイリー…もとい、パウエルが、服装や髪形、話し方まで変えて様々なタイプの殺し屋を演じる一連のシーンは見もの。ゲイリーの繰り広げる七変化はまるで詐欺師の仕業。時にそれをリアルに演じ分けているパウエルの演技力の凄さを感じさせてくれるものです。特に大学教授のゲイリーと殺し屋として登場する彼とセクシーな殺し屋ロンとして、マディソンの逢瀬で鼻の下を伸ばす彼とでは、別人のようなキャラの違いを感じさせてくれたのです。
自分ではない誰かになりきる、芝居の根源的な楽しみを謳歌しているようでした。
ところで、普段の我々にとって殺し屋は遠い存在ですが、フィクションの物語としては定番でしょう。本作の劇中には古今東西の殺し屋作品を紹介するラインがあり、日活映画「拳銃は俺のパスポート」も含まれていました。言わば犯罪映画のパロディーという枠組みの中で、演じる営みを笑いながら〝人間の正体って?〟などちょっと哲学っぽく扱う趣です。そんな哲学的な問いも流れ、味わいも深いのです。
何より本作の愉快な設定を生きるパウエルは実に楽しそうでイキイキしています。彼にとって“演技”はエンティンメントの歓びそのものなのでしょう。「サービス業ですから」との台詞を笑顔で放つ俳優パウエルの存在証明は、まさに演じることの中にこそあるのだと思いました。
●感想
地味で面白みのない主人公が、意外や〝別人になりきる〟才を発揮し、充実して輝き始める変化にワクワク!〝危険な男〟の空気をまとい、恋まで絡んでキュンと心くすぐられるばかりか、濃厚なベッドシーンにゾクゾクしました。マディソンって本当に色っぽい女なんですぅ~(^^ゞ
●プロの殺し屋を演じ70件以上を逮捕に導いた実在のゲイリー・ジョンソン
本作のモデルとなったゲイリー・ジョンソンは、1990年頃から偽の殺し屋として警察に協力しはじめ70人以上を逮捕に導いたスゴ腕潜入捜査官。
本作は彼の活動について2001年「テキサス・マンスリー」誌に掲載された記事が基となっています。記事によるとゲイリー(1947ー2022)はテキサスで2匹の猫と暮らし、地方検事局で働きながら、講師として地元のコミュニティカレッジで心理学などを教えていたというのです。まさに本作の設定そのものです。「テキサス・マンスリー」誌の記事では映画に登場する依頼者の基となった数々のエピソードが語られています。
面白い!グレン・パウエル出演作No,1!
面白かった!
グレン・パウエル出演作品は4作目の鑑賞だが、断然今回の作品が面白い。
グレン・パウエルの七変化演技がなかなか面白いし、彼はコメディ作品がこんなに合うとは思わなかった。
実話なのもびっくり。観た後は何故か楽しかった気分になる。
騙された感…
こんな美女が現れたら変わるよ。
ラスト以外はおもしろかった!
特に注目していた作品ではありませんが、グレン・パウエル主演のクライムコメディということで興味をもち、ちょうど時間が空いたので鑑賞してきました。
ストーリーは、大学で心理学と哲学を教える傍ら、その専門知識を活かして警察にも協力していたゲイリー・ジョンソンが、ある日、おとり捜査で殺し屋役の代役を務めることになるが、見事にその役目を果たし、その後も殺し屋役で捜査に貢献していた時、夫殺しを依頼してきた女性・マディソンに同情し、恋に落ちてしまったことから起こる騒動を描くというもの。
依頼人に対してゲイリーが見せるさまざまな顔と、本職を活かした演技が実にお見事です。ゲイリーの活躍に支えられたおとり捜査によって、次々と犯罪者を逮捕していく流れが痛快で、テンポもいいので見入ってしまいます。そんなおとり捜査を通して、自信なさげで冴えないゲイリーが、殺し屋らしい貫禄と佇まいを身につけ、それにつれて外見も変化していく様子が楽しいです。
中盤でのマディソンとの出会いから物語は大きく動き始めますが、ここに冒頭で停職処分を受けた前任の警官ジャスパーを絡めていたのはよかったです。彼を後半のキーマンとして立ち回らせ、ゲイリーを揺さぶる展開はおもしろいです。頭のよいゲイリーがどのように切り抜けるか興味をそそります。
こんな感じでおもしろく展開していたのですが、このオチのつけ方はちょっといただけません。アメリカ人はこれをハッピーエンドと捉えるのでしょうか。自分にはまったく合わない感覚です。うーん、なんともスッキリしないものが残ります。
日本人の感覚からすると、わざと犯罪を犯させて逮捕するのではなく、未然防止に努めるのが筋だと思います。実際、日本におけるおとり捜査はグレー扱いで、一般には避ける傾向にあるようです。しかし、アメリカは違います。犯罪予備軍が殺人などの重罪を犯す前に、軽微な罪を犯させて逮捕しよういう発想なのでしょうか。各国の事情や国民性もあると思いますが、おとり捜査にしろ、ラストのまとめ方にしろ、肌感覚の違いを感じます。
主演はグレン・パウエルで、彼の七変化が大きな見どころとなっています。脇を固めるのは、アドリア・アルホナ、オースティン・アメリオ、レタ、サンジャイ・ラオら。
一見、見ようとは思わなかった作品
タイトルとか、トレイラー、売り文句があまりに安直すぎやしないかと、正直これはパスだなと思っていたんですが、ディレクションがリンクレイターということを知り、マジかという気になってソッコー観賞してみたら、めっちゃオモロかったです。
ベースになった実話があるというのが監督らしさを象徴していましたが、何よりも、複雑に絡み合う内容と重なり合い騙し合う内容に笑いながらハマってしまいました。
かなり特殊な内容が、ごく自然にさらりとエンタメになっちゃっているところにもの凄さを感じてしまいます。
CGバリバリの超大作こそがハリウッド映画というのがごく当たり前なんでしょうけど、こうした濃密な内容を、質の良いパフォーンマンスでもってごく自然に作られているこういった作品こそがザ・ハリウッド映画と感じてしまいます。どんなに予算をかけても、こんな面白い作品を製作することなど困難きわまりないと思うのですが─。
雰囲気がウディ・アレンのようだったし、洒落たセリフや絡みなんかも面白くて、製作側も楽しんでいるような感じも受けました。
結末はどうかとは思いましたが、いい作品です。
マディソン航空
キャスティングはよかったけど、作品自体はとても退屈でつまらなかった
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