ヒットマンのレビュー・感想・評価
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コメディの枠内で人間を掘り下げる巧みな語り口
リンクレイター監督は映画に有機的な空気を持ち込むのに長けた名匠だ。今作でもコメディというジャンルを月並みなテイストに留めることなく、軽やかなタッチの中、主人公の内外面を無理なく味わい尽くす巧みな趣向が試みられている。そこに絶妙にハマっているのがグエン・パウエルの存在感。一つ間違えば癖の強くなりがちな役柄が、ナチュラルさとスマートさと人間臭さを併せ持った彼の魅力によって、嫌味なく引き立てられているのが最大の魅力と言っていい。さらには大学教師のパートタイム仕事が、いつしか”演じる”という真実と虚構性の間にある境界線を行き来しつつ、自らの専門でもあるフロイトの言う”イド”と”エゴ”という意識の構造を身をもって体感することになるという、決して難解になりすぎない程度に心理学で遊ぶ知的なストーリー構築も忘れがたい。実話ベースの素材と、語り口と、演技。これら三要素が実にバランスよく奏でられた一作である。
病める米国社会の風刺画。実話ベースの前半は興味深いが
映画冒頭、「ゲイリー・ジョンソンの人生に着想を得た やや本当の話(a somewhat true story)」との断り書きが示される。主人公のモデルは、警察に協力して殺し屋(hit man)になりすまして殺人教唆の容疑者ら多数の逮捕に貢献した実在の人物だ。 リチャード・リンクレイター監督らがこのユニークな経歴の人物を知るきっかけになったテキサス州の月刊誌の記事(ウェブでもtexas monthly hit manで検索して閲覧できる)を読むと、同州ヒューストンを拠点とするゲイリーが10年で60人以上の殺害を依頼されたという事実にまず驚かされる。ヒューストン市は人口230万人ほどで、日本で規模が近いのは名古屋市。名古屋で毎年6件の殺害依頼があると言われたら嘘っぽいと感じるが、アメリカではそれが現実であることに社会の病み具合の深刻さを思い知らされる。 撮影の都合で舞台をヒューストンからニューオーリンズに移したものの、カレッジで心理学を教えるゲイリーが、囮(おとり)捜査の対象を事前にリサーチして相手が好みそうな殺し屋キャラクターを演じ分けるという前半はおおむね実話の通り。これは殺人教唆犯と囮捜査官という特殊な関係に限らず、相手に応じて複数のペルソナを使い分けるという、作家の平野啓一郎が提唱する分人主義にも関わるような対人コミュニケーションをめぐる興味深いテーマで、後半の内容次第ではアイデンティティと対人関係の観点から人間の本質について深く考えさせる映画にもなり得ただろう。 DVをふるうパートナーを殺してほしいと頼んできた女性を説得して思いとどまらせ、別れて新しい人生を歩むようアドバイスしたエピソードも、元の記事で紹介されている通り。だが、グレン・パウエル(リンクレイター監督と共同で脚本も手がけた)が演じるゲイリーと殺しを依頼してきたマディソン(プエルトリコ系米国人女優のアドリア・アルホナ)との間に芽生えるロマンスと、その後の展開はもちろん創作だ。 フィクションが優勢になるこの後半の展開が、7月に日本公開されたトッド・ヘインズ監督作「メイ・ディセンバー ゆれる真実」に通じる大きな問題を抱えていると感じた。未見の方に配慮しぼかして書くが、この問題には主に2つの側面があり、第1は実在の人物をモデルにしながら、ストーリーをより“劇的に”する狙いで、その人物の価値観や倫理観が偏った、歪んだものとして受け止められるようなエピソードを創作して加えること(元の人物への配慮と尊重を欠いた印象を受ける)。第2は、主人公側による善悪の判断に基づき、悪いことをした奴を(たとえそれが私刑であっても)罰していい、主人公側の目的や幸福のために悪人は犠牲になっても仕方ないとでもいうような独善的なメッセージを伝えかねないこと。 リンクレイター監督作には「エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に」などお気に入りもあるだけに、今作の出来は残念。「メイ・ディセンバー」と同様に、ハリウッドのフィルムメーカーの傲慢さが出たと思う。こうした企画が通り、大規模な予算がつき、完成・公開に至るのもまた、米国社会の病んだ一面を自らさらしているようで皮肉でもある。
主演もいいが脚本もいいグレン・パウエルが本領発揮
大学で哲学と心理学を教える男が、訳あって職務停止になったおとり捜査官に代わって潜入捜査を始めることに。このありそうでなさそうな話がさらに面白くなるのは、主人公が依頼人の女性に恋してしまってから。実話ベースの物語に適度な脚色を加筆し、観客をぐいぐい引っ張っていくのは、主演と脚本を兼任しているグレン・パウエル。今、あちこちで"ポスト誰々"という形容詞付きで語られているハリウッドの新しい救世主だ。 話の肝は、誰しも別人格を装うことは楽しいに違いないが、そこから、自分を変えることと自分自身でいることの配分にこそ生きる知恵があると我々に分からせるところ。そのあたりもパウエルの脚本は巧みだ。 監督のリチャード・リンクレーターはパウエルと共に製作と脚本を担当している。『ファーストフード・ネイション』(06)から20年近くバディ関係をキープして来た2人だが、早くからリンクレーターが"将来きっと大物になる!"と信じていたという盟友のグレン・パウエルが、本当の意味で気になる脇役から魅力的な主演俳優にシフトしたのが本作だ。
グレン・パウエルが書いたセリフはどのあたりだろう?
今年、グレン・パウエル主演作を観るのは『ツイスターズ』『恋するプリテンダー』に続き3本目。 本作では冴えない大学教授の役だけに、今年の他2作ほど元気ではなかったのだが、「偽の殺し屋」を演じ始めてからはイキイキし始めたのでかなり楽しめた(笑) 『ツイスターズ』『恋するプリテンダー』に共通するのは、相手役の女性とのシーン。 シドニー・スウィーニーもデイジー・エドガー・ジョーンズも、本作のアドリア・アルホナも本当に魅力的で……。そう見えるのはグレン・パウエルのおかげ!とまで言わないものの、彼とのシーンがもたらす効果は少なくないように思える。 脇役たちが「コメディですぜ!」と言わんばかりの演技をしてくれるのが楽しく観られ、まさに職人芸だった。 リチャード・リンクレイターとともに脚本にもクレジットされているグレン・パウエルが、一体どのあたりのストーリーやセリフを考えたのか、興味津々である。
今年1番のクライム・ミステリー
空を飛ぶでもなく、カーチェイスで脅かすでもないが、オレ的に今年1番の傑作になったのはストーリーが最高に面白いから。 大学教授で一見普通のおじさん(グレン・パウエル)がおとり殺人請負人。 数々の成功を収めた決め手は「現金」の受信。なのだが、新たな色っぽい依頼人の若奥様(アドリア・アルホナ)には金がないから色気で迫ってきたのには流石の殺し屋もイチコロでした。 ローに抑えた画面がクライム・ミステリーにはまった。リフレインが自然で本が上手い。ただし、パピーエンドに終わるかどうかは見てのお楽しみ。
このお話自身が何処までが囮なのかと惑わされる
殺人を請け負うと見せかけて依頼人を誘い込み、「あいつを殺してくれ」と言う言葉を引き出し、現金を手渡した途端に逮捕という囮捜査に関わる捜査員のお話。まず、そんな捜査がアメリカでは本当にあるなんて事に驚きます。でも、そのネタを作り話として軽やかに押し広げ、一方で深く掘り下げつつ物語を二転三転させる技の冴えは流石にリンクレイターでした。ヒットマン役のグレン・パウエルの本気がどこにあるのか分からないとぼけた振る舞いも魅力的でした。 そして、本作を観終えて直ぐ、元ネタの Texas Monthly (2001/10月号)のweb記事を観に行ってしまいました。
オールパイ・イズ・グッドパイ
近頃人気のグレン・パウエルが、ニーチェだのフロイトだの哲学だの人生だのと長いカットで説教くさいことをしゃべるリンクレーター監督らしい作品なのだが、ひと言で言うと、そんな都合のいい相手がいるかよ!そんな羨ましいうまい話があるかよ!という感想。一応、ちょっと実話を基にしているということで、リアル囮捜査官のゲイリー・ジョンソンさんが人を殺してマディソンみたいなとんでもない美女とくっついたというわけではないと思う(当たり前)。 そんな終盤のイリーガルな展開を受け入れられるかどうかというのはあるが、オレ自身は世の中には死んだ方がいい人間もいると思っているので、ジャスパーはそこまで悪じゃない?と思いつつ、ウディ・アレンのマッチポイントっぽさを感じさせる捻りすぎないアイデアが、犯罪ラブコメとしてちょうどいい加減という気がした。
コメデイにとどまらない哲学性
実在した「偽殺し屋に扮したおとり捜査官」をモデルに、コメディドラマ(映画)にしたと言うことで、中身はまったくの創作のようでした。 予告編では全体の1/2~2/3くらいが、「おとり捜査官が殺人依頼の犯罪者と恋に落ちてしまった」ことが主要なエピソードのように見せていましたが… その話は本編115分中、ラストの30~40分くらいしかなく。 素の彼は善良だがヘタレな弱虫で、心理学の面でのただの警察サポート役な大学講師でしかない人物なのに… 担当捜査官がスキャンダルで離脱したせいで、急遽ピンチヒッターでおとり捜査官をする羽目になり。 コスプレというか「変装によるおとり捜査」でなりきりをすると性格が変わって大胆になり、多羅尾伴内的な活躍をしていき、だんだん性格が変わっていくそのギャップや変化を見せるコメディが、尺の大半でした。 だから予告に騙されたような感覚で観る羽目になりました。 しかも、オチはいくらなんでも倫理的にどうよ、という。 「着想にはモデルがいるけど完全創作」なのはクレジットされているとはいえ、これモデルの捜査官にとってはめちゃくちゃ不本意かつ不名誉な内容じゃないかと、かなり心配になりました。 ただ、その「だんだん性格が変わっていく」部分、考え方が理想から現実に寄り添いつつも思いやりにあふれた哲学的なものになっていくあたりが、いろいろ考えさせられて、単なるコメディにとどまっていなかったのは興味深かったです。
楽しく見られる作品ではあろうが、字幕がやや難解か
今年353本目(合計1,445本目/今月(2024年10月度)4本目)。 ※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。 ※ 時間調整のために「シティハンター」を見てからになりますが、アニメ系作品(派生も含む)は憲法論が絡まない限りレビュー対象外です。 さて、こちらの作品です。 最近、いわゆる「*し屋」を扱う映画が増えてきましたが、まぁ全体的にそうであるわけではなく、「ベイビーわるきゅーれ3」や今日(10/4)からの「~ドキュメンタリー」等、一時的に「あたかも多く見える」というのに過ぎないのでしょう。 本映画もそれを扱った映画ですが、シリアスなアクションものというより笑いを誘うコメディものの扱いで、そこは同じ「*し屋」を扱う映画の中でもよい具合に「すみわけ」ができている点は良かったです。同じ理由でそうした「ちょっとどうか」と思う職業を描きつつもその表現の幅も色々で、この手の映画でありがちな「表現が残酷すぎる」という点についても本映画はコメディ系(お笑い系)に偏っているので見やすいのが良かったところです。 ただ、それでも全くないわけではないわゆる「マシンガン等のシーン」も数は少ないとはいえありますので、耐性がない方(いわゆるちかちかシーン)は後方推奨といったところです。 採点に関しては以下まで考慮しています。 ------------------------------------------------------------ (減点0.4/「アズイフ構文」が何を指すか理解しがたい) これはそのまま出てくるのですが、より分かりやすく書くと「as if構文」です。as if には「あたかも~であるように」の意味が主にあり、「この意味では」その後には仮定法現在(接続法)が来ます。 一方で相手の表情や話し方などから「~(状況から)~のように見える」の意味では直説法が来ることもあります。例えば、 >> You talk as if you're angry (怒っているような話し方だね) …の場合には as if 以下は直説法です(ここが接続法なら as if you << be >> になる)。 映画でいう「as if構文」はこのことを指している(ネイティブでも誤用が多く、正しく使えるかどうかが「教養のある話し方」「書き方」ができるかのバロメーターとして使われることも多い)のですが、このことは一定の英文法の知識があればわかりますが、当然映画内ではこの単語がいきなり出てくるだけで英文法の話にも一切飛ばないので、そこがちょっと好き嫌い分かれるかなといったところです(多くの方には多分理解が難しい。ただ、一度出てくるだけでこのことはトリックになっていないし、これがわからないと理解ができないという趣旨の映画でもないので、減点幅はある程度多くは見ても調整済み)。 ------------------------------------------------------------
犬好きの社会と猫好きの個人
大学講師の傍ら電子工作の副業で警察の捜査に協力していたゲイリーが、殺し屋役として囮捜査に担ぎ出されたばかりに足を踏み入れる道ならぬロマンスと、その結末を描いた作品。 変装モノの作品は変装の出来やキャラの使い分けのぎこちなさによって白けてしまったり、どの顔がハマっているかでストーリーの先がわかってしまう部分があるので、個人的には難しいジャンルだと思っている。本作はゲイリーを変装の名手とせず、織り交ざるチープな変装が依頼者達の短絡さを強調したりコメディ味として効いていた。 人付き合いの薄いゲイリーの人格を掘り下げる際にモノローグだけに頼らず絶妙な距離感の人物を登場させたり、合間に挟むゲイリーの授業風景をそれまでの話の総括と次の展開の匂わせに使ったり、伏線の徹底回収ぶり、囮捜査で公判を維持できるのかという疑問にも答えて…と、ストーリー構成が非常に丁寧だった。そうして感心した分、ラストには驚いた。 ロンとして語っていた言葉が半ば本心だったのか、奔放かつ理解ある彼女ちゃんの存在には勝てなかったのか、興味本位で覗いていたものに影響されたのか、授業で言っていたことが持論だったのか、…等々、納得材料が無いわけではないのだが、これまでの変遷の描写が丁寧だった分セリフだけの説明には唐突感があった。 エピローグでは画面に幸せの記号を敷き詰め、モノローグでもポジティブなことを語り、従来のゲイリーの暮らしとの対比も強調し、「めでたしめでたし」感をこれでもかと並べていた。それでも、大団円と言えるのかに疑問が残るラストだった。テンプレ的な幸せや『犬』達の実態、もっともらしいペルソナを皮肉ったブラックコメディと受け取ればよかったのだろうか。単に『顔』をもう一つ追加するためのエンディングなのかも知れないが。 ゲイリー・ジョンソンという人物が殺し屋に扮して囮捜査に協力していたというのは事実だそうで、このエピソードを多くのプロデューサーや俳優が映画にしようとしては断念していたらしい。ロマコメ的な切り口を入れることで今回の企画が進んだのだとか。遠慮のない脚色をした上で「実話に基づく…」という煽り文句を便利に使う作品が少なくない昨今、またラストがラストだけに、エンドロールで『ここまでは本当』という意味の説明を入れてくれた点は良かった。
心理学映画としては面白かった
グレン・パウエル、七変化+演じているうちにどっちが本当の自分か分からなくなってくるという複雑な芝居に対しては、存在感と演技がちょっと粗いかなと思ったが、「トップガン」のハングマン役が良かったので贔屓目に見て、まあいいやと思った。 グレンには、もう少し癖のある役とか、嫌な奴の役、気難しい奴の役が似合うかなー と感じるが(ハリケーン映画でもそうだった気がする) トムと演じたハングマンの役がよほど自分の中に強烈に焼き付いてしまったのかな? ルースター役のオーディションに落ちて、ハングマン役の打診があったが、グレンは最初、ハングマンの役どころが気に入らなかった。そして一度はトムからのオファーを断った(世界的な知名度があったわけではない俳優がトム・クルーズからのオファーを断れるというのは物凄い事だ。)というグレン自身も相当我の強い人に見えるんですよね。結果的にトムが脚本を変えて出演OKとなります。 それはそうと、この映画は、心理学映画としては面白いのだが ややテンポが悪いです、あとエロすぎです。 これはAVか?と思うほど男の夢を凝縮した美女との絡みシーン、これを撮るためにこの映画を作ったんじゃないかと思うほどです。 女優が出演をOKしたのが信じられない。 グレン・パウエルの筋肉美も拝めますが演技は微妙かなー 一度、スネイプ先生みたいな出で立ちで出てきた時は笑った。 授業のシーンで語られている事のほうが本筋より面白かった。 これもっとオドオドした感じの人が演じた方が良かった気がする。 だってビフォー・アフターのアフターのほうが元からのグレンのイメージに合ってるのだから、人間ここまで変わるものかと思うほど気弱そうな人がビフォーを演じてないと、驚きがない。グレンはエラが張ってるので傲岸不遜に見えるのも手伝ってるが。 今後に期待します。
現代の設定は厳しかったんじゃないかな
サクッと観られて面白かったんですよ、あぁ、こんなお仕事もあるんだ、って感じで。 ただ、スマホがツールとして重要だから「イマ」の時代設定なのでしょうが、それにしては警察の捜査技術が陳腐すぎて、さすがにそれじゃ通用しないだろ!って、ここはなんとか30年以上前の出来事で展開してほしかったなあ〜。 あと、おとり捜査部分の前半が長めな割に盛り上がらず、中だるみ気味に感じました。 それとグレン・パウエル、イケメン過ぎて全てのシチュエーションをあっさり受け入れてしまうので、葛藤が伺いしれなかったのが残念でした。 ハンサムだけど憂いを含む男になれば更に魅力アップだと思います。 でも、制作に主演にと、よく頑張りました!
グレンVSアドリア、セクシー対決コメディ
日本では昨年やっと劇場公開されたリンクレイタ―監督作『バーナデット ママは行方不明』(2019)がすごく面白くて思わぬ拾い物だったので、同じくコメディ路線の監督最新作にも期待しつつ鑑賞。 まず、往年のウディ・アレン作品を連想させるオープニングタイトルからしてゴキゲンな滑り出し。主に舞台であるニューオリンズ絡みで選曲されたサントラが耳に愉しい。 ストーリーの方は、畳み掛けてくる“グレン・パウエル七変化”がつかみとして上々。時折挿し込まれる道路標識のアップや彼が教える大学での講義内容が、本筋とリンクしているのも気が利いている。 個人的にツボったのは、不意に映し出される邦画『拳銃は俺のパスポート』のワンシーン。“ヒットマンつながり”でこんな映画まで引っぱり出してきたか!と思わず吹き出した。 がしかし……全編通してみると、やはり最後のオチでつまずいてしまってイマイチ乗れず。いや、「あの殺人を看過して幸せなどあり得ないでしょ」とか言いたいわけじゃない。社会的規範を逸脱する人間の不可解さにこそ視線を向けるのが、映画だからだ。むしろあのアイロニカルなラストこそが、この映画の面白さといえる。では何が引っかかったのか。 たとえば、上方落語に「算段の平兵衛」という大ネタがある。不慮の殺人を犯した主人公が隠蔽にとどまらず、持ち前の機転で死体をネタに荒稼ぎしてしまうという噺だ。これについて、故・桂米朝は「悪が栄えるという内容なので、後味が悪くならないように演じるのが難しい。平兵衛をどこか憎めない男とか、共感するようなところがあるように描かないと落語として成り立たない」と語っている。 で、この映画の場合、すんなり共感できなかったのは、主人公のグレン・パウエルじゃなく、彼にDV夫の殺害を依頼してくるアドリア・アルホナの方だ。 理由は、ひとことで言うとあまりにエロ過ぎること。そのため、彼女は計算ずくで主人公を誘惑しながら腹の底で何か企んでるのでは、と勘ぐってしまうのだ。 もちろん、ヒットマンの“仮面”を被ったパウエルも十分セクシーではあるのだけど。彼女にだけそう感じるのって個人的偏見だろうか? 実際、彼女は夫の保険金増額してたし、キャビンアテンダントのコスプレで大胆に彼をベッドに誘ったり、警察の事情聴取に対して肝が据わった振舞いをみせたり、と怪しい。純朴さを「装い」ながら、ホンネのところはどうなの?…といったぐあいだ。 ちなみに、エンドクレジットでは、主人公のモデルとなった実在の人物について「殺人は一切なし(劇中の該当部分は創作)」とユーモラスに表示されるので、さすがにそうだよねと妙にナットク。
「満足度98%」に釣られて…
なるほど、コメディでサスペンスでしたね。 ブラックコメディと呼びたいかな? すっかりスターの仲間入りなグレン・パウエル、教壇に立っている姿は普通のオッさん(失礼!)なのに、ロンの時は本当にセクシーって思えちゃうから不思議😆 どの変装姿も“らしく”て、七変化もっと楽しみたかったなぁ〜 始まる前になんとなく眠気があってヤバいって思ってたけど、始まってしまったら面白くて、実際“ウトッ”もなかったです。 …にしても、潜入捜査?囮捜査?って、こっわ!
標的から微妙に外れ気味のヒットマン
今年に入って日本での公開作が3本目と売れっ子のグレン・パウエルの実話ネタのコメディで、まあまあ楽しめました。大学の哲学の教授が、地元警察の囮捜査で偽物の殺し屋を演じる羽目になると言う愉快な設定です。様々な依頼人に合わせて主人公が変装するのはいいけど、依頼人のキャラと変装したキャラの関連性に乏しいので、やや空回り。そのうち、夫殺しの依頼人に一目惚れして引くに引けなくなるけど、二人がイチャつくシーンが長く、なんかダラダラと中弛み気味です。ところが、彼女を疑う警察を欺くため、主人公が盗聴器をつけたままジェスチャーとスマホで彼女に指示を出しながらの掛け合いはものすごく面白く、二人の役者さんの息の合った演技が楽しく、一番の見どころかも。とは言え、リンクレーター監督のコメディ演出はイマイチでキレがなく、面白い着想を活かしきれなかった感じです。役者では、グレン・パウエルの芸達者振りがなかなかでした。相手役でラテン系美人のアドリア・アルホナもセクシーで腹の座った感じがよかったです。
私はチョロい男なので。。
偽の殺し屋の話で実話らしい。。 そして主演が先日ツイスターズで見たばかりのグレン・パウエル。 話の展開が早くて序盤に殺し屋七変化が見れたので、どーなる事かと思ったら、魅力的な殺人依頼者が出てきて新たな展開が始まる。 この女優さん良かったですねー。 アドリア・アルホナさんというらしいです。 私はチョロい男なので、魅力的な女優さんが出てくるだけで、映画の評価はグッと上がるのです(^-^) 主演のグレン・パウエルも良かったです。 パッとしない大学教授と、色気溢れる殺し屋を演じ分けていました。 それに、いろんなキャラの偽の殺し屋役で依頼人をダマすシーンが見どころ。 激しいアクションシーン等は無い偽ヒットマン映画。 楽しく見れました。 その後いろいろとドタバタがあってのハッピーエンド。 腑に落ちない点はあったけど、楽しい映画でした。 あまり深く考えずに見るべき娯楽映画ですね。
鑑賞動機:リンクレイター監督9割、あらすじ1割。
リンクレイター監督だから観てみようと思ったのに、始まる頃にはリンクレイター監督なのを忘れていて、エンドクレジットで思い出す。 これは成長なのだろうか、としばし考えてしまう。もっとブラックにしないとうーん…。
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