「なりたい自分を見つけるのはいい事だけど、やった事はイケナイ事」ヒットマン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
なりたい自分を見つけるのはいい事だけど、やった事はイケナイ事
大学で心理学と哲学を教えるゲイリー。
バツイチ独身で家では2匹の猫と暮らすこの平凡な男には、意外な副業が。
地元警察の捜査に協力。と言っても、機器類など技術面のサポート。
ところがある日、殺し屋に扮する予定だった囮捜査官が問題を起こし、職務停止に。急遽、ゲイリーがその代役を務める事に。
バレたら命も危うい。が、ゲイリーは心理学を活かして相手を分析し、見事普段の自分とは違うプロの殺し屋に成り済まし、殺しの依頼人逮捕に貢献。
思わぬ才を発揮したゲイリーは囮捜査官として見た目も性格も変え変え、殺しの依頼人から証拠を引き出し、次々逮捕に導いていく。
映画として面白味ある設定だが、何と実在の人物が基というから驚き。
大学で教鞭を執りながら囮捜査官として警察の捜査に協力し、70人以上を逮捕。それにインスパイアされた“やや実話”。
主人公のキャラ設定はほぼノンフィクションだが、話自体はフィクション。
これ、もし話もノンフィクションだったら、大暴露問題作…!?
また一人、殺しの依頼。支配的な夫に悩むマディソン。
ゲイリーは“セクシーな殺し屋ロン”として接触。
殺人依頼を引き出すどころか、思い留まらせ、彼女の新しい人生を手助け。
当然の如く恋に落ちた二人。
偽の殺し屋と殺人依頼者のイケナイ関係は一線を越えてしまい、真っ当に生きてきた人生の歯車も狂わしていく…。
殺し屋のタブーは依頼人やターゲットにシンパシーを感じてしまう事。恋に落ちるなんてプロとして失格。
だけどゲイリーはプロどころか本物の殺し屋じゃない。ましてや警察の人間でもない。
だから相手に情が移ってしまうのは絶対タブー/NGではないんだけど…。立場がねぇ…。
こちらは警察に協力してる身。あちらは殺しを依頼してきた本来なら逮捕する筈だった相手。
そんな二人が密かに恋に落ちちゃったんだから、やっぱりイ・ケ・ナ・イ…。
それは分かってるんだけど、マディソンが超魅力的。
当初はか弱い薄幸の女性。解き放たれたら、アグレッシブでホット。
セクシーでキュート。あっちはこっちに好意を抱いているのだから、こっちも惚れるなと言うのが無理。
マディソンもセクシーでワイルドな“ロン”にベタ惚れ。
“君の為に”。イケナイ二人の秘密の関係は燃えに燃える。
ちょっとエッチでありつつ、お楽しみプレイもユーモアたっぷり。そしてセクシーとホットが迸る。
グレン・パウエルとアドリア・アルホナの魅力大爆発!
とりわけグレン・パウエル。
冴えない普段の大学講師。七変化の偽殺し屋。特にセクシーなロンは今旬グレンのハマり役。素…?
ヘアメイクや衣装の力もあるが、巧みに演じ分けたグレンの演技力もあってこそ。その演技力は“ダニエル・デイ=ルイス級”!(チームを組む刑事曰く)
一人何役って訳じゃないけど、様々なグレンが見れ、グレンファンにとっては一粒で何味も美味しい。
さらには監督と共にプロデュースと脚本も兼任。マルチな才も発揮。
本作でゴールデン・グローブ主演男優賞ノミネート。魅力や才も存分に見せ、現時点で代表作と言っていいだろう。
意欲的な作品や実験的な作品も多いリチャード・リンクレイターにとっても間口の広い娯楽作。
楽しんで作った感や手慣れた感ありつつ、しっかり個性も。
秘密の関係が見られてしまった。
当初偽の殺し屋に扮する予定だった囮捜査官のジャスパーに。
また職務に復帰しようとするが、上司もチームもゲイリーの才を買い、自身の問題行動もあってお払い箱状態。ゲイリーの事を良く思っていない。
そんな時、マディソンとデート中の所をばったりと。
ゲイリーはたまたま会ったと誤魔化すが、ねちっこさだけは特出しているジャスパーは怪しむ。
新たな殺しの依頼。何とその相手はマディソンの夫。妻と新しい恋人を殺して欲しいと依頼。一度面識もあって相手は動揺。ゲイリーもうやむやにして依頼は流れた事にするが、ジャスパーはまた怪しむ。
歯車狂い始めた時に、とんだ事態。
マディソンの夫が何者かに殺された。しかも保険金が掛けられていた。
真っ先にマディソンが疑われる。
ゲイリーがこの事を伝えると、マディソンは夫を殺した事をあっさり認める。何て事を…。
この告白でゲイリーも取り乱し、素性がバレる。殺し屋でもなければロンでもない。ただ警察に協力している大学講師ゲイリー。関係もぎくしゃく。
捜査はマディソンが第一容疑者に。彼女から殺人の自白を引き出す。ゲイリーが再びロンとしてその役に。ジャスパーが無線で聞き耳を立てる。
各々の運命やいかに…!?
無線である事を逆手に取って、口論してると思わせ、携帯画面に本当の事をメッセージ。疑われている事、ひと芝居して誤魔化す事。
何とか切り抜けてその夜マディソンの下を訪ねたら…、そこにジャスパーが。
チームは騙せたが、端から怪しんでいたジャスパーだけは騙せなかった。
何もかもバレ、絶体絶命。その時…
ジャスパーが突然倒れる。マディソンが用意したビールの中に睡眠薬を入れたのだ。
だが、また意識を取り戻したら…。
そこで二人が下したのは…。
“ヒットマン”なんてタイトルだとアクションを期待するが、アクション・シーンどころか銃を撃つシーンすらない。それがまたユニーク。
大学で哲学を教えるゲイリー。生徒や見る我々に問う。
なりたい自分を見つける。
普通だったらいいメッセージだが、本作はちとブラックな意味合いが。
本作はエンタメ・コメディであり、クライム・コメディであり、ラブコメであり、ブラック・コメディである。
二人はジャスパーを殺して口封じ。
疑われも罪に問われる事もなく、それから二人は結婚し、子供も産まれ、幸せな家庭を築いていた。
おいおい、殺人の罪は…? モラルに反する事もしてきたし。
子供が聞く。いつもラブラブなパパとママの出会いは…?
二人は意味深にニンマリと。
なりたい自分を見つける。
見つけたけど…。
こんな事をしてはいけない。
個性と娯楽とメッセージとブラックな笑いを巧みに織り混ぜて、リンクレイターが反面教師的に訴えている…?
近大さん
コメントへの返信を頂き有難うございます。
それは・・・『 ロン 』ですかね 😆
映画「 エブリバディ・ウォンツ・サム !!」のグレン・パウエル、サイコーでした(笑)
共感ありがとうございました。
とにかく去年はグレンパウエルの作品が3本も公開されるあたり年でしたが、アカデミーにかすりもせず、本当に残念です。
個人的には楽しめましたが、人殺しとして清濁合わせ呑んだようなエンディングは残念でした。