「内容が内容だけに、笑えない”コメディ”作品でした」ヒットマン 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
内容が内容だけに、笑えない”コメディ”作品でした
本職の大学教員の傍ら、偽の殺し屋として警察のおとり捜査に協力していた主人公・ゲイリー・ジョンソン(グレン・パウエル)と、おとり捜査中に彼が惚れてしまったマディソン・マスターズ(アドリア・アルホナ)のお話でした。一応”コメディ”に属する作品だというのがコンセンサスのようですが、実話を”ざっくり”基にした話であるとチラシにも書いてあったので、ストーリーのディテール、特に物語の肝となる殺人の部分は創作だったにしても、実際に民間人がおとり捜査をしていたというのだから、この点どんなホラーよりも怖い真実という気がしないでもありませんでした。
その辺りの話はちょっと脇において作品の内容ですが、普段は冴えない大学教員のゲイリーが、捜査対象だったマディソンに出会って感情移入してしまったことで物語はラブストーリー要素が色濃くなって行きました。ただ本来捜査対象だったマディソンと良い仲になってしまったことで、”ざっくり”言えばゲイリーの立場は捜査する側からされる側に入れ替わることに。それも、個人的な恋愛感情で公職が好色によって歪められて行ってしまう感じで、ちょっとお話として同意し難い内容になってしまったのが残念でした。
結果的に、マディソンは自らの夫を保険金殺人してしまうは、それを知ったゲイリーの前任のおとり捜査官であるジャスパーを2人で殺めてしまうなど、もはや内容的にはコメディではない方向に。確かにマディソンの夫はDV野郎だったみたいだし、ジャスパーにしても保険金殺人をネタにマディソンを強請るような悪徳警官なので、(映画的な意味で)殺されてもいいっちゃ良いのかも知れませんが、こんなことをしたゲイリーとマディソンが、その後1児を設けて幸せに暮らしてエンディングを迎えるというのは、どうにも合点が行かない展開でした。
そんな合点の行かない内容を離れて、出演者の話を。「恋するプリテンダー」、「ツイスターズ」に続いて、本作で日本公開の主演作が3本目となるグレン・パウエルの演技は、まあ満足できるものでした。ただ、前述の通りストーリーがストーリーなだけに、イマイチカッコ良さが感じられなかったのが残念でした。マディソンを演じたアドリア・アルホナは初見でしたが、中々魅力的な演技ではありました。ただこれまたストーリーがストーリーなだけに、その魅力が十二分に発揮されていたかと言うとちょっと疑問だったかなと思うところでした。そういう意味では、如何にも悪徳警官らしい悪徳警官を演じたオースティン・アメリオが、一番しっくりくる感じだったのは皮肉でした。
そんな訳で、本作の評価は★2とします。