「設定が説明不足で入り込めない」パレード ゆりちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
設定が説明不足で入り込めない
知人が出演していたので観ました。役者さんは豪華だし、映像も世界観も美しいし、後から考えるところも多い。しかしせっかくの長さの作品なのに、肝心の、この世に未練を残して知らずにとどまっているこの場の設定が説明不足で、いくら見続けても疑問が次から次と湧いてきて、映画に浸れなかった。
まず最初に、彼らはなぜ運転も出来るのか?なぜのんびり飲み食いできるのか?そのガソリン代は?彼らは買い物をするのか?その品は何処から?その代金は?そもそも物を食べる必要があるのか?こんな世界があるなら、今すぐ死んだほうが楽じゃんと思ってしまった。
例えば、長澤まさみ演じる彼女が、ここに来て、あんなボロい部屋にいて、寒さも暑さも感じない、服も汚れない、飲食物はどこからともなく手に入るし味も感じるけど空腹も排泄もない…「あぁ私は生きてないんだな」と感じるとか、ガソリンメーターは0を振り切ってもいくらでも走るとか、そんな設定なら死を実感するけど、その辺が不説明で、最初から最後まで疑問が尽きなくてモヤモヤする(生死の境界をさまよっているナナが酒の味を感じない、ということが、後からそうだったのかと思えるように描かれていればよかったのに…)惜しい惜しい。
同様に、この映画のタイトルでもあるパレードが、せっかくの美しさなのに、目的が曖昧で残念。そもそもこのパレードの目的は何なのか?会いたい人に会うためならば、相手も死んでいなければならない。会いたい人の消息を知るためならば、情報交換の場がちゃんとあるべきだ(東日本大震災の時の、伝言の壁のような)。パレードの目的とその行き着く先がしっかり描かれていればいいのに、ただの百鬼夜行のようでモヤモヤする。あれだけ沢山の人(死者?)が集まるなら、他のコミュニティ?とのやりとりもあってもいい。上司と主人公の関係も、どこまでの親密さだったのかよくわからない。
実際、パレードと関係なく、登場人物はほとんど実際の生者と出会って、今いる世界と現世で、やりたいことをやって成仏していく。あんな純真そうな女性がヤクザと付き合っていた訳も、気になって話に入り込めない。一人ひとりの話をを書き残そうとしている登場人物がいるのに、一人ひとりの物語にモヤモヤが残るからどうしようもない。後半その点に目をつぶって見ていくと、なかなか良い終わり方だとは思う。でも繰り返し言うように、初期設定が曖昧で話に浸れない。
聞けば、この企画はもう亡くなった方が作られたような。制作された方々は自分たちでは、その設定がわかっているのかもしれないが、初見の私には説明不足で疑問と不満ばかりが残った。残念。
全体に脚本を見直して、もう一回作り直したら、「フィールド・オブ・ドリームズ」のような、世界に通用するような素晴らしい良作になる気がする、と思う。