「とりあえず映画の形になってから公開してほしいと思った」THIS MAN Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
とりあえず映画の形になってから公開してほしいと思った
2024.6.10 MOVIX京都
2024年の日本映画(89分、PG12)
インターネットミーム「THIS MAN」を題材にしたホラー映画
監督&脚本は天野友二朗
「THIS MAN」とは、2009年頃から起こったインターネットミームの一つで、2000人を超える世界中の人々の夢に繰り返し登場されたとされる謎の人物のこと
物語の舞台は、日本のどこかの地方都市
幸福絶頂を迎えていた華(出口亜梨沙)と、その恋人・義男(木ノ本嶺浩)は、そのまま結婚を果たし、郊外の戸建てに住むようになった
二人には愛(桑原のえ)という可愛い女の子が誕生し、3人で幸せな暮らしを満喫していた
一方その頃、日本の各地にて連続不審死事件が勃発し、刑事の天辻(校條拳太朗)と井沢(津田寛治)は犯人の行方を追っていた
被害者・冝保愛(北原帆夏)を調べていると、彼女の他にも多くの被害者が精神科に通っていることがわかった
そこで二人は冝保愛のかかりつけ医(入江崇史)から話を聞くことになった
精神科医は、被害者の誰しもが奇妙な男を夢で見たと言い、それは徐々に多くなっていると言う
夢で見たら殺されるのかと言う仮説が立つものの、井沢は非科学的だと一笑し、天辻は集合意識の観点からあり得ると考えていた
映画は、華が友人の愛実(小原徳子)と咲(茜屋日海夏)と会って、その奇妙な男の話題になるところから動き出す
愛実は台所に突然現れたと言い、咲はベッドの中に男がいたと言う
そして、それから間も無くして、愛実はピーラーで自分自身を削って自殺し、咲は見知らぬ男に襲われて殺されてしまう
そして、とうとう華も「ある男」の夢を見てしまうのである
映画は、インターネットミームとして有名な「THIS MAN」をネタ元として、呪術によって殺人と連鎖が起こったと言うテイストで描かれていく
そして、事態を重く見た政府は、「夢で男を見た人の安楽死を許可する」と言う法案を通し、国民は「選択」を迫られることになると言う結末へと向かう
そんな中、友人から聞いた呪術師を頼ることになった華は、雲水(渡辺哲)の協力を経て、「呪いを誰かに移すこと」に成功する
だが、その呪いは娘の愛に移ってしまい、非業の死を遂げてしまうのである
いわゆるワンアイデアの低予算系ホラームービーで、時代を考えると20年ぐらい前ということになる
時代背景はそこまで強調していないものの、空気感はかなり古めに思えた
物語性は普通で、本作ゆえのオリジナル要素とか展開などはないものの、演出の面で残念なところが多かった
華の友人関連だと、「友人の被害」が先に描かれ、のちに華との関係性がわかるようになるのだが、その順序がおかしいので「誰? この人たち」が続いてしまう
子どもが生まれる前などに会うなどして、華の交友関係を整理すれば良いと思うのだが、冒頭の「この頭がお花畑そうな二人は何?」というところからして、すっと入ってこない演出が多かったように思えた
日本だと呪術、海外だと悪魔に落ち着くのだと思うが、わずか数人の呪術師が祈って退散できる程度というのは安っぽい印象を受ける
これならば、刑事の仮説である「集合意識」というものを利用して、全国各地の呪術師の力を結集して倒すぐらいの規模は欲しかった
あまりにもチープすぎるので残念なのだが、事件の規模と対策や対応などのバランスが取れていないので、そこは一工夫でスケール感を出せたのではないだろうか
いずれにせよ、物語の作り込みが甘く、謎演出(編集)が多く、すんなりと話が入って来ないのは難点だった
元ネタのインターネットミームは海外で流行ったもので、日本では馴染みがないのだが、いっそのこと起点をアメリカにして、それが上陸したっぽいスケールを作り出しても良かっただろう
そして、世界各地のスピリチュアルな専門家が集合意識で繋がって、それを利用していた黒幕を消滅させるというものでも良かっただろう
ともかく、ネタを見事に活かしきれていないので、ネタ映画を見たいマニア以外にはオススメしようのない映画だったように思う