「惨劇に意味を持たせるために」マリウポリの20日間 humさんの映画レビュー(感想・評価)
惨劇に意味を持たせるために
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そこに映るのは権力に美化され破壊された、人間による人間の地獄の惨状。
怒りを超える何かが、目に、首に、肩に、拳に圧をかける。
一方で次々に流れる涙のように足の先から力が抜け落ちていく。
ネットも遮断される中、同国出身ジャーナリストが命がけで記録したのは事実を世界に伝えるためだ。
極限状態での問いかけに、怯える人々は生きる為に自分が信じたい言葉を振りしぼるように放ち、閉ざされた命は最期の姿でその罪の愚かさを訴えた。
しかし、発信された映像をフェイクだと反論しどこまでも遮る彼らがいる。
いったい人間の心をどこに置いてきたのだろうか。
さもなければ自分が生きられくなるのか?
〝マリウポリはまるで死にゆく人間のようだ。〟
その言葉が示すように戦争は全てを荒さませた。
変わり果てた祖国を嫌と言うほどみつめた彼は言う。
「全てを止めたいが、その力は僕にはない。」
「この異常な破壊の連鎖を止めるためにパパは何をした?…将来娘に聞かれた時、それに対する答えを持っていたい。」と。
陥落したマリウポリの人々はその後どう生きているのだろうか。
そしてリーダーの大義に反対する者は何を思う?
情報は減った。
今はイスラエルの負の連鎖が報道されている。
まだ戦いたい人間たちがいる。
なぜ戦う。なぜ。
気にとめない限り忘れてしまえる遠い国の悲話では済ませてはいけない。
絶望の狂気は他人事ではなく、何より私たちは「同じ」人間なのだ。
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Mさんのコメント
2024年10月26日
今も上映されているのですか?
11/8にBlu-rayが出ます。予約しているので、来たらもう一度見直そうと思っています。
ちょうど同時期に「人間の境界」を見て、この映画と並んで、いろいろ考えさせられました。