「戦争は爆発でなく静寂から始まる」マリウポリの20日間 ジョンスペさんの映画レビュー(感想・評価)
戦争は爆発でなく静寂から始まる
絶対ここにはいたくないというのが素直な気持ち。本作中の爆発や光線、銃撃音にひとつでも触れれば死んでしまうわけで、作り物ではない緊張感がひたすら続く。「戦争始まっちゃった」と不安げに呟く子ども。必死に救命措置を施すも動かなくなる市民。わが子を失い号泣する親たち。生ゴミのように共同墓穴に投下される大量の遺体。95分間の映像はきわめて扇情的だが、これが現実とは…。産声を上げない新生児を叩いて起こすところは唯一ほっとする場面だったけど、その後、あの赤ん坊や母親はどうなったのだろうか。
病院の医師がこの惨劇を伝えてくれと積極的に撮影を許可するのは、彼の国ではプレスが信頼されているということなのだろう。ロシアの侵攻から2年余り、わが国での報道は縮小し、関心も薄れていたというのが正直なところ(自分自身、都市名はずっとマウリポリだと思っていた。すんません)。勝とうが負けようが街が破壊され人が死ぬことに変わりがない以上、戦争を起こさないためには、この悲惨な映像は脳裏に叩き込んでおく必要があるのだろう。
コメントする