劇場公開日 2024年4月26日

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「史料的価値の高いドキュメンタリー映画だが。これは地獄の黙示録か?」マリウポリの20日間 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0史料的価値の高いドキュメンタリー映画だが。これは地獄の黙示録か?

2024年5月2日
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鑑賞方法:映画館

撮影機器の小型化、デジタル化により撮影クルーの機動力が高まったことがこの優れたドキュメンタリーの制作につながった。包囲戦の中、包囲されている側にあって20日間もの期間の記録を撮り、そのデータを全て持って脱出に成功したというのはかなり稀有な例となるのではないか。さらにこのスタッフは軍に保護されつつウクライナの軍行動を取材しているのではなく(途中から軍関係者と同行はしているが)病院などの一般施設に起居して一般人中心への取材を行っているのが特徴である。
そのため、このドキュメンタリーの史料としての価値は高い。すなわち、マリウプリで行われたことは軍同士の戦闘行為ではなく、軍による一般人の虐殺であったことを一般人からの視点に立つことにより明確に裏付けているのである。
だからロシアは、このドキュメンタリースタッフが撮影した2022年3月9日の産婦人科病院への爆撃による惨状の映像を恐れ、フェイクであると激しく非難したのである。でも、SNSに投稿される細切れの映像ではなく、この映像は十分な尺を持ち、近景・遠景をきっちりおさえた映像となっておりフェイクであると主張することには無理がある。そのこともこのドキュメンタリーは自ら証明している。
それにしてもロシアはマリウプリで何を達成しようとしていたのだろうか。市内には少なくともウクライナ側の軍事拠点はなく、市当局にも抵抗勢力的なものはなかった。ウクライナの特殊部隊は時として市内に潜入はしていたようだが(映画でも出てくる)だからといって市内全域を破壊してまわる必要はないはずである。
私には、ドネツィク州での覇権の確立を狙ったロシアが、住民の一定数を粛清することによって内外に威圧を誇示しようとしたとしか思えないのである。それが3ヶ月近く続く(映画は20日で終わったが包囲戦は5月まで続いた)マリウポリの戦いの真実であるとすれば、正義や人倫といったものはどこにいってしまったのかと言わざるを得ない。まさに今、ガザでも同じような虐殺が続いている。世界はそれを止められない。我々はやはり地獄に向かって進んでいるのだろうか?

あんちゃん