「クセが強めですが…」箱男 ネコと映画と人生とさんの映画レビュー(感想・評価)
クセが強めですが…
私は《原作未読》で本作を鑑賞しましたが『すごく面白い作品だな』と感じました。…が、おそらく本作は「傑作・駄作」「0点・100点」「面白い・退屈」「好き・嫌い」がハッキリ分かれる作品かと思われます。 個人的には「面白い」と思いましたし「好き」な作風ではありましたが、興行面での成功は厳しそうな気がします。(個人的には『ヒット祈願』してます)
【ストーリー(脚本) & 演出】
原作の『箱男』と言うタイトルは知っていましたが、まさか「約50年も前に出版されていた」とは知りませんでした。
50年前の原作を現代に映画化しながらも「古臭さ」や「違和感」と言うモノを感じさせず、50年前の日本の様でもあり 現代の日本の何処かの様でもある《なんとも不思議》なストーリーと世界観が描かれていたと思います。
ストーリーの内容としては「楽しいとは言えない」けれども「面白くはある」と言った所でしょうか。色々と理解しようとして『難解な世界観』『難解な登場人物の思考』に振り回される方は、いっその事 考えるのをやめて「ただ作品世界の中で起きる出来事・登場人物の行動を覗き見る」事に集中した方が楽しめると思います。いわゆる《考えるな!感じろ!》と言うやつです。
レビュー冒頭でも書きましたが「評価が分かれる作品」だと思われますので、予告編を観るなどして「本作が自分に合いそうか?合わなそうか?」は事前に確認して尚且つ その上で《あまり期待せずに観に行った方が良いかも》知れません。
脚本評価★★★★★
演出評価★★★★★
(個人的にはどちらの評価も☆5評価ですが、『万人受け』は期待しないで下さい)
【キャスティング(配役) & 演技】
[わたし/永瀬正敏]
「主演としての永瀬さん」を観るのは (個人的には)かなり久しぶりでしたが、箱男である『わたし』の妄執や狂気が感じられる素晴らしい演技でした。
[ニセ医者/浅野忠信]
当代の箱男である『わたし(永瀬正敏)』が 鑑賞前に想像していたよりも[世俗的な人間]であったのに対して、浅野忠信さん演じる『ニセ医者』は 人間としての底が知れない[怪人物]だと感じました。まさに《怪演》という言葉に相応しい演技でした。
[軍医/佐藤浩市]
自分の死期が間近に迫っている事を悟っており『本物の医者』でもあるのだが、病院の事は『ニセ医者』に任せ 本人は「自分の望む死に方を実現する」事だけを考え、静かに[自身の破滅(死)]へと向かう老人を演じておられました。
物語における存在意義や役としての掴み所が何とも難しい役を好演しておられました。
[戸山葉子/白本彩奈]
オーディションで選ばれた方だそうですが、この役にピッタリな《見た目の雰囲気》と《演技のトーン》であったと感じました。3人のベテラン俳優と同じ画面に居ても 霞む事のない存在感がありました。
[ワッペン乞食/渋川清彦]
出演シーンは「物語冒頭のみ」でしたが、インパクトのあるキャラクターを これまたインパクトのある演技で魅せてくれたと感じました。
配役評価★★★★★
演技評価★★★★★
【映像 & 音楽】
[映像・ロケーション・美術]等の 観客の視覚に訴えるモノ全てが「作品の世界や 物語のテイストに合っていた」し、映像面だけでなく音楽面の[劇判(BGM)・音響効果]等も素晴らしく、それらが「より一層 作品世界への没入感を高めてくれた」と感じました。
映像評価★★★★★
音楽評価★★★★★
【総合評価】
公開初週の土曜日の真昼間に鑑賞したにも関わらず、鑑賞してスグに「真夜中に映画鑑賞している様な」或いは「暗闇の中から作品世界の登場人物達を覗き見している様な」、何とも不思議な感覚にさせてくれた《雰囲気のある作品》でした。現時点では[今年一番の作品]と言っても良いかと考えております。
…が、ここまで「ベタ褒め」してきましたが、正直この評価は《完全に個人の趣味全開》の評価だと自覚しております。
『作品の世界観』や『物語の性質』はシュールでありアブノーマルでもあり、「極端な事を言えば」観衆の方それぞれが《自分自身の中に[何かしらの]その様な部分を感じていても 普段は決して直視はしない部分》を見せつけられる作品なのかも知れないなぁ と。
[クセが強め]で合う•合わないはありそうなので、サービスデーやレイトショーでの鑑賞の方が良いかも知れませんね。