「存在しなくなったものへのレクイエム」BAUS 映画から船出した映画館 Freddie3vさんの映画レビュー(感想・評価)
存在しなくなったものへのレクイエム
描かれている年代になんか既視感があるなと記憶をたどってみたら、最近、再放送しているNHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』と年代がほぼ重なっているのに気づきました。年号が大正から昭和に切り替わるあたりから始まって、8-90年間ぐらい。当然、登場人物の代替りがあり、第一世代は戦争の影響を大きく受けた世代ということになります。これって、つまり、昭和恐慌やら戦争やら戦後の高度成長期やらをくぐり抜けてきた井の頭会館-MEG -バウスシアターの三代の映画館の物語って、朝ドラみたいなフォーマットにはなじむと思うけど、2時間前後の映画に落とし込めるのかな、と思ってたら、まずは朝ドラ風エピソードの断片の連打で畳みかけてきました。で途中で変調、時空を歪ませて幻想的な断片を見せたりして大団円となります。それぞれの断片は漫画的だったり、美しかったり、儚げであったりするけど、どれも登場人物ひとりひとりがとても愛おしく思えてきます。人は死に際して自分の一生を夢にみるというけど、三代続いた映画館が閉館にあたってみた夢はこんな愛おしい断片の積み重なりだったのかもしれないと感じました。この作品は結局のところ、説明的な散文ではなく詩みたいなものなんでしょうね。それも叙事詩ではなく抒情詩。今はもう存在しないものへの鎮魂歌。そのあたりのところをどうみるかによって意見がわかれる作品かもしれません。
いちばん気に入ってる断片をひとつ。新劇場立ち上げの日、サネオは登壇してスピーチをするのですが、そんな夫の晴れ舞台を前に客席のハマは幼い息子の隣でうつらうつら……ハマの性格やら、夫や子供との関係性やら、何か達成できたときの安堵感やら、その他諸々、シーン一発で表現していて見事だと思いました。夏帆さんの寝顔と、サザエさんの実写版を撮ったら、こうなるのかなと思わせる昭和レトロな髪型に星半分オマケです。
コメントありがとうございました。
あの寝顔と手をギュッとされた感触、鈴木慶一演じる息子は、ずっと忘れなかったんだろうなと思いました。いいシーンでしたね。夏帆さん、お母さん役が似合う歳になったことが、ちょっと感慨深いです。
共感&コメントありがとうございます。
妻夫木くんと共演した頃はまだ未熟な感じでしたが、海街三女辺りから良くなってきた印象です、あっガメラ、違国日記も良かった。
夏帆さんの、脇で変に落ち着いた存在感はもう定評でしょうが、主役で泣いたり喚いたりするのもそろそろ観たいですね。
この作品はバウスが出来る前に幕引きに向かったのが、看板と違うぞ!感だったのだと思います。
「愛を読むひと」にコメントありがとうございます。
原作は読んでいないのです。
そうですね。
本の方が映画より深い感動を感じることは多いですね。
この映画は最初に観たのは10年以上前でした。
1回目は映画初心者でしたの、本当に何も分かりませんでした。
そして何年かして観たら、やっと少し分かってきて、
戦争犯罪に関わる深い悲しみの物語でした。
今でも理解したとは言えず深い、今も余白を残しています。
ケイト・ウィンスレットが本当に演じきっていましたね。
賛否が分かれそうな作品ではあります。私はバウスシアターに行ったこともないし、吉祥寺の街に思い入れもありませんが、この作品には好感を持ちました。ポイントはキャストの好演かな