「最近、大量の迷惑メールを送りつけてくる奴らも同じ目に遭えばいいのに」ビーキーパー おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)
最近、大量の迷惑メールを送りつけてくる奴らも同じ目に遭えばいいのに
去年の1月は『ミツバチと私』という8歳の子供が性自認に苦悩するスペインが舞台の映画を鑑賞したが、今回は養蜂家のジェイソン・ステイサムが迷うことなく一直線にムカつく奴らを皆殺しにしていく話で、同じ「蜂」が題材とは思えない変貌ぶり。
本作はいわゆる「舐めてた相手が実は殺人マシーンでした」ものに、最新の社会犯罪を取り入れた感じ。
「敵の中枢が主人公の養蜂家に刺客を送りつけて余裕こくも、刺客が倒された報告を受けて慌てふためく」の繰り返し。
中盤までは敵の倒し方に新鮮なアイデアが多くて楽しく観れたが、後半はどこかで観たことがあるシーンの連続で正直イマイチだった。
この映画、まず冒頭が素晴らしいと思った。
日本の振り込め詐欺みたいなやつがアメリカにもあるんだなあと思いつつ、人助けに人生を捧げてきた善良な老婦人が全財産を奪われ、悲しい選択をするまでが丁寧に描かれることで、その後、ジェイソン・ステイサムが重罰間違いなしの犯罪行為を繰り返しても、観客が「もっとやれ!」と応援したくなるような作りになっていたと思う。
正月に財布を無くしたぐらいでずっとブルーな気分をひきずっていた人間としては、もし全財産を奪われたら辛すぎて老婦人と同じ気持ちになってしまうかもと想像してしまい、映画開始数分で犯罪への怒りが爆発しながら鑑賞。
振り込め詐欺の被害を伝えるニュースが出るたびにヤフコメで「騙される方にも問題がある」というのをよく見かけるが、そういう人には是非この場面を観てもらい、それでも同じことが言える人は凄いと思うので、ジェイソン・ステイサムにかわいがってもらえばいいと思う。
詐欺の活動拠点って、日本映画だとひっそりとしたマンションの一室なことが多い印象だが、この映画ではオシャレなビルのワンフロアで、「ジュリアナ東京、イェーイ」みたいなノリでじゃんじゃん電話で人を騙して荒稼ぎしていて、さすがアメリカと思った。
さっきまでの穏やかな老婦人の生活とは違いすぎて、凄い温度差だった。
そこで電話番をしている若者たちは、闇バイトみたいなもので集められたと思われる普通の人々で、もしかしたらやむを得ない事情で生活が苦しくて軽い気持ちで参加していたのかもしれないが、最初に老婦人の理不尽な悲劇を見せられているので、彼らがジェイソン・ステイサムに殴られようが焼かれようが「自業自得」としか思わなかった。
主人公がビーキーパー(養蜂家)ということで、蜂を使って敵を倒すところや、養蜂家ならではの戦い方を期待していたが、実際にはそういう場面はあまり無く、「蜂みたいな習性で動く男」というだけだったのは残念。
ジェイソン・ステイサムが敵のアジトに正面から堂々と乗り込もうとしたら入り口のガードマンに止められ、「怪我したくなかったら3つ数える間に帰れ」とよく聞くようなセリフを言われた後の、ジェイソン・ステイサムの返しに痺れた。
FBIが何の役にも立ってなくて、後塵を排する場面ばかり。
FBIって切れ者として描かれることが多い気がするので、本作ほど無能なのも珍しいかも。
そもそも彼らがしっかり仕事して詐欺集団を撲滅していれば悲劇は起きていないわけで、ジェイソン・ステイサムが勢い余ってFBIに暴力を振るっていたが、「まあしょうがないかな」と思ってしまった。
黒幕の正体が判明する場面の音楽が大袈裟すぎて笑ってしまった。
闇バイトを仕切っているような連中が、社会的影響力の強い権力者と繋がっていたというのは「なるほど」と思った(本当かどうかは知らないが)。
そりゃ迷惑メールみたいなものが無くならないわけだ。