「アメリカ史の闇に切り込んでほしい」ナイトスイム R41さんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ史の闇に切り込んでほしい
2024年 アメリカの作品
ホラーの名門が集まって制作したハリウッド作品
このハリウッド作品の中で、このホラーというジャンルだけに弱点があるような気がする。
キング作品を映画化したものは流石と言えるレベルだが、ホラー作家が関わっていない作品で面白かったものもあるにはあるが、少ないように思う。
つまり脚本オリジナルの作品には、若干の浅さや矛盾が残り、怖さが引き立っていない。
この作品は間違いなくホラーで、その中でも原因を調査するミステリー要素もある。
そして基本的に面白いし十分成り立っている。
ただこの場合、その原因が「水が求めている犠牲」、つまり生贄のようなもの。
その背後にある「水の意思」とはいったい何だろう?
当時の湧き水のあった場所
そもそもの「水の意思」
これは人間が勝手に埋め立てたことによる恨みのようなものだと解することができる。
ではそれに気づいて元の戻せばいいと思えるが、そうはならない。
「水」は人の意思に憑りつき、次々と生贄を欲しがる。
この部分はかつて「神」だったものが、人間の仕業によって「タタリ神」になったという神話のような下敷きがあるのだろう。
それ故、一度そう決めたタタリ神は、人間を何人も引きずり込む。
決して収めようとはしない。
日本にもそのような言い伝えがある寺社や祠などがある。
もしこのような下敷きがあるのであれば、どこかにそのモチーフを入れてほしかった。
これを見たアメリカ人たちはそんな話は知らないので、下敷きにならない。
「水の意思」は理解しても、元に戻せない理由がわからないので矛盾に感じる。
当然その下敷きがあることで、父が最後に犠牲になった意味がわかる。
周期的に収まらなくなってしまったタタリ神を収めるには、まず最初に犠牲が必要なのだ。
その後に、プールを埋め立てるのではなく、掘り起こして「泉」を掘り返す必要がある。
モチーフとこのシーンを加えることで、この作品の持つ意味が非常に濃くなる。
この場所を住宅地化したのは単なる儲けからだが、そもそも「願いの叶う泉」であるならば、必ず先住民の聖地だったはずだ。
アメリカ史の闇
侵略戦争 大量虐殺と大量略奪と奴隷化
ハリウッドはここにもう一歩踏み込まなければならない。
その、当時踏みつぶされた魂あっての「ホラー」であるべきだと思う。
決して悪くはないが、そろそろもう一歩踏み込んでほしいと願う。
