「キャラの名前がわかりにくい作品なので、ちょいとググってから鑑賞した方がスムーズに理解できるだろう」トランスフュージョン Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラの名前がわかりにくい作品なので、ちょいとググってから鑑賞した方がスムーズに理解できるだろう
2024.5.15 字幕 T・JOY京都
2023年のオーストラリア映画(105分、PG12)
妻の事故死によって軍人としてのキャリアを失った男の顛末を描くヒューマンドラマ
監督&脚本はマット・ネイブル
原題の『Transfusion』は「輸血」という意味
物語の舞台は、オーストラリアのシドニー
かつてイラク戦争にて特殊部隊として貢献していたライアン・ローガン(サム・ワーシントン)は、最愛の妻・ジュスティーヌ(フィービー・トンキン)の死によって生活が激変していた
車に同乗していた息子ビリー(ギルバート・ブラッドマン、青年期:エドワード・カーモディ)は生き残るものの、ビリーと妻は特殊な血液型をしていて、輸血は一人分しかなかった
苦渋の選択を迫られたローガンは、息子を生かすことを選び、その選択が後々に彼と息子を苦しめていたのである
冒頭は、イラク戦争にてアルカイダの兵士と交戦するライアンが描かれ、彼には戦友のジョニー(マット・ネイブル)がいた
だが、彼もいつの間にか除隊になっていて、今では裏稼業のようなものに手を染めていた
ある日、ジョニーと再会したライアンは、そこでジョニーからの裏稼業の誘いを受ける
一度は拒むものの、ビリーの学費滞納などの金銭関係でトラブルを抱えていたライアンはやむを得ずに彼の申し出を受けることになった
だが、そこからライアンは戦争時の体験が忘れられず、金銭的に苦労していたこともあって、ジョニーとの裏稼業を推し進めていくことになったのである
映画の設定は見たことのあるもので、その顛末や苦悩なども、そこまで特異なものではない
監督が脇役で出演しているが、妙に目立たせることもなく、バランス感覚は良かったと思う
だが、シナリオ上の欠陥なのか、主人公の名前が中盤まで出てこず、主人公の名前はなんなんだろうなあと思って見ることになった
学校の学費滞納の件でようやく「ローガンさん」と呼ばれていたが、それ以降も「ローガン呼び」はあっても、ライアンと呼ばれることは最後までなかったように思えた
物語性はさほどなく、妻の事故死によって息子の養育問題が出て、そのために除隊した経緯があった
スナイパーである彼には一般的な就業は不可能に近く、薬の営業などをするものの、まともにはできない
そして、ジョニーとの仕事にて、自分の特性が活きることがわかると、この道に進んだ方が良いのではと思い始めてしまうのである
映画のタイトルの意味を調べることもなく鑑賞していたので、どういう意味があるんだろうと思っていた
前半で「黄金の血」と意味深に呼ばれていたが、輸血に関することもそれ以上でもない感じになっていた
一応は、流産して脳に損傷が残った妻と、外傷以外に異常のない息子のどちらかを選べという過去があったのだが、それすらもうまく描かれていない
なので、ライアンの葛藤よりも、ズブズブにハマっていく裏稼業の方がメインになっていて、彼の苦悩というのは非常にわかりにくい作りになっていたのではないだろうか
いずれにせよ、シドニーを舞台にしただけで、同じ設定のアメリカ映画はたくさんあるように思う
シドニーと言われなければ、アメリカのどこかの都市なのかなと思ってしまうところもあって、あまり真新しさを感じないと思った
思った以上にキャラが多いのだが、本当に重要人物のキャラの名前が出てこない映画で、ビリーを気にかけていた弁護士(ジェレミー・リンドセイ・タイラー、役名:ジム・ウッズ)の息子(マックス・ドゥフィールド、役名:ブラッド)の名前も最後までわからない
このあたりのシナリオの不親切さというものが際立っていたので、キャラの見分けのために顔をしっかりと覚える必要があるし、その顔に固有名詞を貼り付けられないので記憶するのも大変だったりする
なので、もう少し「初出の段階」で、名前を呼び合って、それを認知させた方が、進行上はスムーズだったのではないだろうか