劇場公開日 2024年11月22日

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「不条理劇・・・ニコラス・ケイジが禿げである必要はない。」ドリーム・シナリオ 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5不条理劇・・・ニコラス・ケイジが禿げである必要はない。

2025年3月26日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

カフカが「審判」を書いたのが1914年~1915年。
あらがうことの出来ない「不条理」と言う言葉の恐怖。
そして1941年、オーソン・ウェルズ」の「市民ケーン」
テリー・ギリアムの「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」
そしてコーエン兄弟の「バートン・フィンク」
それらの難解な名作を平易にしたような作品。
それなりに新鮮で面白かった。
どうしてもSNSで時代の寵児に祭り上げられた人間を
連想してしまう所が残念だ。

何百万人の夢の中に現れる男・ポール(ニコラス・ケイジ)
はじめは無害で愛らしい人気者が、ある日を境に、
夢の中で《暴力を振るったり》《レイプ》《殺人》などを始める。
世間は好感→嫌悪→排除(削除)
と言う流れでポールに襲いかかってくる。
ポールは初めから終わりまで一貫して《無力》で《無抵抗》で、
流されるままだ。
映画スターやアイドルなども、実態のない《人気》に踊らされ、
浮かれていると、たちまち悪評判を流されて、忘れ去られる。
ニコラス・ケイジの浮き沈みの激しい私生活や人生も加わって、
なんともピッタリな主人公の苦味・渋味・である。
先に挙げた名作に及びもつかないのは、
映像のすっきりしたデザイン、
画一的な登場人物、
スタイリッシュ映像の綺麗さと味気なさ、
特徴のない音楽、
そして何よりラスト。
やはりポールが現実や仮想世界と戦って、
とことん傷つくとか、破滅するとか、偶像化するとか、
インパクト有る不条理なラストが必要だった。
小市民ではなくて、
アウトローの悪のヒーローが良いと思う。
(かなりお行儀良いラストだった)

琥珀糖
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