「夢で逢えたら」ドリーム・シナリオ レントさんの映画レビュー(感想・評価)
夢で逢えたら
しがない大学教授ポールの身に起こる不可思議な現象。なぜだか世界中の人々が見る夢にポールが現れる。彼と知り合いの人だけではなく彼と会ったことがない人の夢にも現れるという。
ポールが自分に起きている現象を知ると、今まで人々の夢の中で何もしなかった彼が突然行動を起こし始める。
彼の講義で私語をしていたり受講態度が悪かった生徒の夢の中では彼らに襲い掛かり、若くて魅力的な女性の夢の中では性的な行為に及んだり。彼が他人の夢に入り込めることを自覚したとたん彼の中に眠る願望がそのまま行動を起こしたかのようだ。
コミック寄生獣の岩明均の短編作品で主人公が眠ると夢で他人の意識とつながるというテレパシストの話があったけど本作もちょうどそんな感じ。
世界中の人々の意識の中に同時に入り込めるというのはある意味インターネットに似ている。世界中の人々が彼を知り、そのことの不思議さに始めこそ楽しんで好感を抱いていたが、彼が夢で危害を加えだした途端彼を忌み嫌うようになり、挙句には彼に攻撃するものまで現れる。彼が公の場所にいれば、誰かから必ずクレームをつけられ暴力まで振るわれる。これもいまのネット上でよく見られる光景。バズって注目されてる間は皆から面白がられるが、下手なことをして炎上したとたん周りからは誹謗中傷を浴びまくる。
ポールは娘の発表会からも締め出され、社会から抹殺されそうになる。家族への危害が及ぶことを避けるため別居を余儀なくされるポール。
このような超常現象がなぜ彼の身に起きたのか。彼が持つテレパシー能力なのか。この事件をきっかけにして他人の夢に入り込める通信システムが開発され、世界的ブームとなる。
ポールはそのシステムを使い自由に逢えなくなってしまった妻と夢の中で逢おうとする。
今まで目立たずに生きてきた彼が突然世間から注目され、これを機会に出版の夢を実現しようとする。しかし有名になれたのもつかの間、その弊害によりどん底に突き落とされる。
シマウマの縞模様は群れの中に入れば捕食者からは狙われにくくなる、群れから出れば途端にその姿は目立ち、捕食者に狙われる。しかしその目立つ姿は異性を引き寄せ求愛活動にも適する。ポールは世間の人々に注目されなくてもいい、愛する妻にだけ自分を見ていてもらえればそれで良かった。
彼は自由に逢えなくなってしまった妻と今も夢で逢い続ける。
異常な状況に巻き込まれてただ戸惑うニコラス・ケイジの役どころが可笑しいのと、少女の夢の中で彼が突然迫ってくるシーン(サスペリアパート2の気持ち悪い人形のオマージュ)には爆笑させられた。
ほんとニコラスケイジは理不尽な状況に追い詰められて困惑し破滅していく役どころを演じさせたらピカイチだと思う。
自分には何の非もないのに社会から抹殺されてゆく様は現代社会で今なお起きてるネットリンチを彷彿させた。