ソウルの春のレビュー・感想・評価
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韓国現代史に残る事件をうまく映画化
光州事件、朝鮮戦争等を映画化したものは元々好きであり今作も絶対間違いないとの心意気で拝見。
観客は若者少なめ、大体40後半以上のおじさんが大半をしめていました。
この作品は、韓国現代史(70〜80年代)の最低限の知識を入れておいた方が楽しめると思います(ただし、大枠のオチがそうぞうできてしまうのが難点ですが‥)
中盤の、反乱軍(ハナ会)と政府軍の攻防は圧巻ですね。展開がコロコロ変わるし、あいまいまの人間模様もテンポよく丁寧に書かれています。緊張感の合間に滑稽さもだされており、見ていて飽きませんでした。(これはどこかでみたことある‥と思えばシンゴジラでした)
ファンジョンミン、チョンウソンの役もしっかりハマっており、韓国映画が韓国現代史をうまくエンタメ化していました。
事実は勧善懲悪ならず、、、「ソウルの春(の終わり)」の一夜物語
鑑賞中、終始緊迫していた。カメラワークも役者たちの立ち回りもすごい迫力。
ソウルには行ったことないけど、友人からは「カフェがおしゃれで座ってぼーっとしているだけでも楽しい街」とも聞いていた。その落差に呆然。こんな一夜の歴史があったのか。70年代という近過去に。韓国の歴代大統領はことごとく不栄誉な最期を迎えている印象がある。しかし逆の立場であるイ・テシンの不名誉さというか悔しさは憤死モノだと思っていたらプログラムには「父親は憤死、ソウル大学の息子は自殺」と書かれていた。ラストクライマックスシーンの突撃(なんでだかいつの間にか反乱軍に警護する側が突撃する羽目に、、、)の際、奥さん気遣いのマフラーが彼のうなじに巻かれていた。
自国に軍を持つと言うことは、その刃が自国に向く可能性もあると言うのは考えてみれば当たり前のことだ。「成功すれば革命、失敗すれば反逆罪」。他人事でも過去の出来事でもない。
果たしてどちらが民主主義国なのか?
「シルミド」でも思ったが、近現代史で長く軍事政権下で隠蔽されてきた負の歴史を映画化して、あの時、何があったのかを明らかに出来る韓国は、今の日本よりは表現の自由度が高く、遥かに民主主義国家の体を成していると、改めて思わされた作品。
それでいて、ハリウッド作品並みに、エンターテインメント性を持たせ、観客を惹きつける技術にも、日本は敵わない。
対して、森達也監督の「福田村事件」制作に、大手が何処も手を挙げず、クラウドファンディングで資金を調達しなければならなかった日本は、果たして表現の自由は守られているのか?と思わざるを得ない。
タイトルは終わりだった
隣国の文化についてここ数年昭和の感覚を修正しながら生きているオヤジです。で、映画について、日本に来るのは選り優りなのかも知れず、そのうち高評価のものだけを見てるからか、毎回完成度に感心する。自国の前政権を現政権が完全否定する環境半ながら、事件を客観的に適度にエンタメ化している。物語への家族の介入を最小限に抑えたところも良かった。名前が変えてあったので後半まで気づかなかったが、あいつらは全斗煥と盧泰愚のことだったのね。
そしてタイトル「ソウルの春」が、春が来るのではなく春が終わると言う結末には、史実だから気づいているべきなのだろうが、素直に驚かされた。
ファン・ジョンミンの高笑いが耳にこびりつく
ホントに息つく暇がなかった。
クーデターを仕掛けたハナ会側が、一時、絶対絶命のピンチに陥り、大混乱に陥る。反クーデター側の精鋭部隊が、先にソウルに到達するという情報を入手したからなのだが、このときのチョン・ドゥファンの開き直りというか、腹の括り方が運を自分に引き付けてしまう男のそれで、国を乗っ取ってしまうだけのことはある。
この作品で描かれるチョン・ドゥファンは、ヴィランとして惹きつけてやまない魅力に溢れている。『南山の部長たち』では、小悪党として描かれていたが、この作品では、自分の弱さを見せる人たらしでもあり、いざというときの腹の据わり方が尋常でなく、敵も味方も圧倒してしまう。
ファン・ジョンミンの高笑いが耳にこびりつく。そんな作品でございます。
権力に群がる人々
1979年韓国大統領暗殺後のクーデター。
権力に群がる人々の醜さと自国を守ろうと
する人々の気高さが秀逸に描き
国の暗闇を真正面から作り上げている。
『人間は強い者に導かれたいと願っている』
残酷な言葉だ。
ファン・ジョンミンは嫌な役どころだったが
良い演技をするなぁ。
自国でこんな過去があった史実を
忘れては行けない気持ちが若者を奮い起たせて
動員数に結びついたのだろう。
全斗煥
遂に出た。完璧なまでの役作り。陽キャラで上下関係構わず空気を飲み込んでいく。日本でいえば秀吉か?野心がコントロール網を次々と破っていく。一方で、体制は無理解と保身により綻ぶ。刻々と変わる情勢の変化をよく伝える手際の良さ。最後の対峙でみせる緊張と緩和。それは事実か?笑いはしたが。
便所で高笑いして小便する。実に悪い男だ。
春の終わり
韓国の近現代史をエンタメとして見せてくれるから勉強になる。
権力を求め新たな独裁者になろうとする男とそれを食い止めようとする男。
正義を貫こうとするものが倒れていくやるせなさ。上の指示に逆らえない軍という体質が歯止めを効かせなくなっている。
まさかの結末に怒りを覚えた。
正義は勝つ!!
話は、政権を奪取しようとする男と首都防衛の責任者がお互い権力・知力を尽くして戦うというものです。
韓国の歴史を全く知らないので、正義は勝つ!と、首都防衛司令官を心の中で応援して、あっという間の2時間半でした。
ギリギリまでどちらが勝つかわからないレベルだったのは、映画ならではのアレンジなのでしょうが、その攻防戦は文句なしに面白かったです。
民間の車を渋滞させて戦車を通さないようにするなんて平和かつ秀逸な作戦で、ヨシ!これで流れはこちらに来たんじゃないか?!と思ったり、無能な上層部が足を何度も掬ってきて呆れ果てたり。
でも、敵も、先輩たちは右往左往するだけの無能ばかり。ハナという結社の団結力(電話架けまくりなのは笑えましたね)と保安司令官の胆力と恫喝力がなかったら、どうなっていたことか。
保安司令官のクーデターへの持ち込み方が、頭の悪い不良の高校生みたいな計画性の浅い内容な上、成功した時には一番の親友とイタズラっ子のように笑いあったり、勝利確定後にハイタッチする様には邪気がなくて、本当はただ子供のままの魅力的な奴なのではと勘違いしたくなる瞬間を見せつつ、首都防衛司令官の敗北をトイレで1人馬鹿笑いして満喫する様は悪人そのものだったりと、味わい深いキャラでした。
とは言え、最後の最後まで、正義のイケメン側に何かドンデン返しがあるのではないかと思ってました。
そう、でも、たいてい史実物はツマラナイ結果なのです。
正義は勝たない………
嘘だろ……韓国……
この点で、☆0.5マイナスです。
ラストがイヤすぎます。
でも、こんな暗黒時代に突入した韓国が、どうやって今に至れたのか、ちょっと歴史読んでみるかという気にはなりました。
それと、まぁこんなことを言っても仕方ありませんが、アメリカが国防長官を追い返さず1日だけ保護していれば、歴史は変わったんだなとも思いました。
韓国でこんな事が起こってたんですね。
大統領暗殺後のクーデターを描いてるのですが、私は全く知りませんでした。
史実を元にしてるのですが、何処までが本当の事なのでしょうか?
たった45年前の話だけど、韓国の歴史を知るには良い映画です。
※ チョン・ドゥグァンが漫才のななまがりの人に見えて仕方なかったです…
ファン・ジョンミンの卑劣さと酷薄さ愛敬と情けなさ
1979年の粛軍クーデターに基づいた、刻一刻と状況が変わる手に汗握る政治スリラー。
地位と面子の保全にのみ汲々とする軍人たち(結局は彼らの怯懦が国を滅ぼす)を背景に、「権力を奪取する」VS「国を守る」という明確な意思を持った人間たちが対峙する。
この対比を際立たせるおじさんたちの熱演、とりわけファン・ジョンミンの卑劣さと愛敬と情けなさが入り混じった怪演が素晴らしい。
ただし、このタイトルで民衆が不在なのは気になった。
色々な点で共通の要素を持つ『日本のいちばん長い日』が『肉弾』とセットで観られるべき映画だとしたら、『ソウルの〜』は『タクシー運転手』とセットで観られるべき映画なんだろう。
『南山の部長たち』→『ソウルの春』→『タクシー運転手』→『1987』という第六共和国建国史を、濃いキャラクターが活躍し最後は民衆が圧政を覆すぶち上がるエンターテイメントに仕立て上げる、韓国映画界の自省力とクリエイティブ能力に圧倒される。
緊迫の124分
124分、緊迫感が途切れること無く続く。
テンポよく一気に見てしまう。
反乱軍vs鎮圧軍の2極対立構造で見せ、俳優が個性的で一目で誰か分かって混乱が少なく、複雑な状況を説明するのに地図を出したり俯瞰で捉えたりと、複雑になりがちな内容をわかりやすく見せる工夫があり、最後まで迷子になることなくついていけた。
多少のフィクションはあるのだろうが、こんな甘い計画のクーデターが成功するわけないと思っていたら、あれよあれよという間に反乱軍が首都を制圧してしまった。
政府や軍の高官の無能っぷりに呆れる
反乱軍を余裕で鎮圧できる場面がいくつもあったのに、都度鎮圧側の高官たちの判断ミス(事なかれ主義、無責任、腰抜け)でせっかくの機会を逃し続けて、よもやのクーデター成功、ひとり獅子奮迅のイ・テシンの無念さいかばかりか。チョン・ドゥグァンを排除しようとした一派が拷問されるところで、「タクシー運転手」で描かれたような光州事件につながっていくのだ、と暗澹たる気持ちになった。
朴大統領の暗殺から、民主化に向かえるかと思えた「ソウルの春」が潰えて、新たな暗黒時代の始まりになってしまった。
イ・テシンを心から応援していたので、見終えてやりきれないもやもやが残ったが、史実なので仕方ない。
非常事態での争いは、エゲつない方が勝つのだとつくづく思った。
ハナ会の組織力をフルに活用、ルール無用狡猾さむき出しの強引な爆走が故に、チョン・ドゥグァンは勝った。
また、リーダーのカリスマ性は、すごく大事なのだとも思う。
強烈な唯我独尊、自らを恃み先輩もコケにする高慢さとキレッキレの頭脳。
窮地に陥るたびに、おたおたするどころか不敵に笑い、次の手を繰り出すチョン・ドゥグァンは、手探りで進まざるを得ない人々には正直頼もしい。清廉潔白な人ではできないような発想で切り抜けどんな手を使っても勝ち抜きそうに見える。ふてぶてしさ憎々しさが逆に効果的で、この人についていけば大丈夫と思わせるところがある。
この嫌なやつをファン・ジョンミンが演じきってスゴい。
チョン・ウソンのイ・テシンにもカリスマ性がある。
ブレないところ、ひとりでも立ち向かう不屈の意思、信念と頭脳と人間性に惹かれて着いていきたいと思わせるものが大いにあって、高官たちが腰抜けじゃなければ勝ってたのになあ
チョン・ウソンとファン・ジョンミンの、演技が圧倒的。
このふたりががっつり組んだところが、映画の見応えを特上にしていると思う。
生きて守れ、死して忠誠。
息つく暇もない緊迫の2時間半。
実話を元に、硬派な、大人の作品を、トップスターたちの競演で、エンタメとして作り、それが大ヒットする。
韓国映画ってさすがだなと思う。
作り手もすごいし、面白い作品、良い作品はヒットするって観客を信じているんだと思うし、観客もしっかり応えている。
ファン・ジョンミンはいつもながら野卑な感じの人たらしで怖いし、チョン・ウソンは生真面目な悲劇の主人公。
ほかの作品では気弱な脇役などでよく見る俳優さんたちも軍人を演じると見違えるほどに格好いい。
みんな軍隊経験があるから様になるんだろうな。
ファン・ジョンミン演じた男が、実際に大統領になるんだからなぁ。日本人の我々はよく出来たエンタメとして観ているけど、韓国の人たちの思いって複雑だろうなぁ。
「光州518」「1987」「工作」「KCIA」等の韓国現代史を描いた作品にまたひとつ傑作が加わった。
韓国一般国民の視点から描かれた現代史「国際市場で逢いましょう」を観てから韓国映画を観る目が変わりました。
ええええ!?
韓国映画の新たな展開が見えた気がする。
物語は実話なのである程度は分かってはいるつもりだったが、ラストがこんな裏切られ方したのは久しぶりだろう。
前半は良く説明されていて分かりやすかったが、中盤は部隊編成など予習しないと全く分からないと思う。しかし迫力はある映像の連続だが、慣れてくると同じ映像の連続で飽きる。
そしてラスト!衝撃としか言えないラストでビックリ通り越して口を開けたまま。
そんな終わり方して映画って良いんだっけ?。
韓国映画の新境地を観た。
重厚な韓国の1番長い日的な作品
スリリングで素晴らしい作品でした。実際に起きた大統領暗殺事件後の「粛軍クーデター」「12.12軍事反乱」を映画化。クーデターを起こす反乱軍の首謀者の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(後の大統領)を悪として描き、首都警備司令官イ・テシンを高潔な正義の軍人として描く。わずか45年前の出来事なのに日本ではあまりにも知られていない韓国の黒歴史。クーデター成功後はチョンと仲間達で大統領など政権や軍内の要職をたらい回しにし汚職疑惑にまみれた韓国。日本の明治維新はクーデターでは無く維新ですがその後、政権をとった薩長同盟を中心とした人達の中にも伊藤博文、井上馨などチョン司令官的な人たちもいました。
隣国韓国の歴史ひいてはアジアの歴史を学ばねば。
極東とのヨーロッパ目線(イギリス目線)で世界史を学んできたけれど、ヨーロッパ・アメリカしか知らない。
隣国の歴史を紐解けば、仲良くなるきっかけが見つかるかも!
大変興味深くは観たのですが‥
(完全ネタバレですので必ず鑑賞後にお読み下さい!)
結論から言うと、今作を非常に興味深くは観ました。
この映画『ソウルの春』は、1979年12月12日に韓国で起きた粛軍クーデター(12.12軍事反乱)を題材に描いた物語です。
1979年10月26日に、当時の事実上の独裁政権(民主主義選挙の現在と違い、統一主体国民会議による代議員選挙で野党候補のいない単独で選ばれた大統領制)を執っていた朴正煕 大統領が、KCIA部長・金載圭 氏(後に絞首刑)に暗殺されます。
その後に(おそらく史実通りに映画の設定でも統一主体国民会議の代議員により)チェ・ハンギュ(モデル:崔圭夏(チェ・ギュハ)大統領/役:チョン・ドンファンさん)が大統領に選ばれます。
そして、朴正煕 大統領の暗殺を契機に国民から民主化の要求が高まり、映画の中でのチェ・ハンギュ大統領のモデルとなった崔圭夏(チェ・ギュハ)大統領も民主化にこの時、舵を切ろうとしていました。
そんな中で、チョン・ドゥグァン保安司令官(モデル:全斗煥(チョン・ドゥファン)後の第11・12代大統領/役:ファン・ジョンミンさん)が、チョン・サンホ陸軍参謀総長(モデル:鄭昇和(チョン・スンファ)氏/役:イ・ソンミンさん)と対立します。
チョン・ドゥグァン保安司令官は、チョン・サンホ陸軍参謀総長に大統領暗殺の共犯容疑をかけ逮捕します。
これが映画でも描かれた粛軍クーデター(12.12軍事反乱)の始まりです。
チョン・ドゥグァン保安司令官は、自身が中心となり形成した軍隊の中の秘密組織「ハナ会」のメンバーを駆使して、クーデターを成し得て行きます。
そしてチェ・ハンギュ大統領は、チョチョン・ドゥグァン保安司令官が求めたン・サンホ陸軍参謀総長の逮捕の承認を当初は認めませんでしたが、結局は(映画の最後にも描かれたように)事後承認的に認めることになります。
当時は、暗殺された朴正煕 大統領の半ば独裁政権だった流れの中にあり、クーデターを後に成功させたチョン・ドゥグァン保安司令官のいる軍部にチェ・ハンギュ大統領が反旗を翻すことはほぼ不可能で、チェ・ハンギュ大統領によるチョン・サンホ陸軍参謀総長の逮捕の事後承認も致し方ない面もあったでしょう。
この粛軍クーデター(12.12軍事反乱)で今作の中でヒーロー的に登場するのが、イ・テシン首都警備司令官(モデル:張泰玩(チャン・テワン)氏/役:チョン・ウソンさん)です。
イ・テシン首都警備司令官は全く道理に合わないチョン・ドゥグァン保安司令官のクーデーターを批判し、クーデターの阻止に邁進します。
そして映画では、イ・テシン首都警備司令官を”善”、クーデターを起こしたチョン・ドゥグァン保安司令官や「ハナ会」のメンバーや毅然とした態度をとれない軍部上層部を”悪”として、善悪を明確に分けて描いている印象を受けました。
一方で、それぞれの熱演を含めて面白さも感じながら、私的には、この善悪を明確に分けて描く描き方に多少の引っ掛かりは感じました。
もちろん、クーデターを起こしたチョン・ドゥグァン保安司令官のモデルとなった全斗煥(チョン・ドゥファン)保安司令官は、この後、光州事件で、国民の民主化運動に銃を向けて民間人を射殺などし、150人以上の民間人死者を出した責任もあり、民衆を圧迫し弾圧した当時の振る舞いからしても、私的にも”悪”だと思われます。
しかしながら、イ・テシン首都警備司令官や(チョン・ドゥグァン保安司令官に逮捕された)チョン・サンホ陸軍参謀総長は、軍隊の影響が色濃い独裁的政権が継続していた当時、特にそれらを改めて民主主義の国にすると言う主張は見られず、あくまでチョン・ドゥグァン保安司令官の暴走を軍隊の規範の中で止めようとしたという職業上当たり前の行動をしていただけに思われ、”善”との持ち上げ描写はやや演出過剰には感じました。
個人的には、第2空輸特戦旅団(史実は第1空輸特戦旅団)が行ったり来たりするなどの滑稽さや、「ハナ会」などのクーデター側とそれを阻止しようとする首都警備司令部側の対立や、軍部上層部や、盗聴などを交えながらの描写も興味深く面白さはありました。
しかしながら、この映画の善悪がきっぱりと分かれた描写は、果たして本当の歴史の姿を描いていたのかは疑いはあるなとは思われました。
また映画では、チョン・ドゥグァン保安司令官や「ハナ会」のメンバーたちが軍部の中で異端的な描写もされていましたが、軍部の影響が色濃い独裁的な政権が当時、続いていた中で、チョン・ドゥグァン保安司令官の(現在からしても全く間違った考えですが)さらに独裁的政権を継続させようとする考えの方が、当時の軍部の中では主流だったのでは?との疑念は持ちました。
今回の点数はその感想も加味しました。
ところでこの映画では明確に描かれなかった背景にある、韓国の軍部が独裁政権的な政治体制を作れた要因に、【緊急措置権(国家緊急権)】があったことが歴史的に分かります。
当時の韓国は、【緊急措置権(国家緊急権)】を利用して、大統領選における民主選挙を止め、メディアなどを統制し、半ば誘導する形での国民投票による憲法改正で、政権がコントロールできる形(統一主体国民会議による代議員選挙で野党候補のいない独裁者の単独候補で選ばれた大統領制の)大統領選出の方法や(議会の1/3の議員を大統領が推薦し選ぶことで)議会のコントロールをすることを可能にしました。
韓国は元々、民主主義による大統領選であったのに、暗殺される前の朴正煕 大統領が【緊急措置権(国家緊急権)】を利用して民主選挙による大統領選の権利を国民から奪いました。
日本人からすれば、当時の韓国は【緊急措置権(国家緊急権)】の乱用により独裁的政権が誕生し、今回の映画で描かれた事柄も起こっている危険性も、日本で今後「緊急事態条項」の議論をする時によくよく考えておく必要があると、今作からも思われました。
最後は
正直「えっ?こんな結末⁈」でしたが、これがきっと現実で、ドラマティックな終わり方ばかりではないのでしょう?
それ以外は終始緊迫感があって引き込まれました!
どこまでが実話なのかが気になります。。
改めて平和な日本に万歳‼︎
”悪役”全斗煥が最高
1979年に起きた朴正煕大統領暗殺直後の動乱のソウルを描いた作品でした。朴正煕が暗殺されたことは知っていましたが、その後の韓国政治がどうなったのかは殆ど知らず、特に後に大統領になる全斗煥(一般的に日本語ではチョン・ドゥファンと表記されていますが、本作ではチョン・ドゥグァンとなってましたね)がクーデターを起こしたことは初めて知りました。そんな”悪者”全斗煥の野望を潰そうと立ち上がったのがイ・テシン。彼は大統領暗殺により揺れ動く首都・ソウルの治安を維持する役目を負うことになり、獅子奮迅の活躍をしますが、結果は歴史が示す通り全斗煥に敗北することになります。そう、本作のポイントは、史実を基にしているが故に、結果が分かっていることなのですが、それでもスリル満点であり、非常に楽しめました。大河ドラマに例えるなら、関ヶ原で徳川方が勝つことが分かっていても、面白いドラマは面白いというのと同じことなのでしょう。
そしてその面白さの源泉になっていたのは、何と言っても全斗煥とイ・テシンを演じたファン・ジョンミンとチョン・ウソンの熱演。特にヒールを演じたファン・ジョンミンは、プロフィールの写真を見る限りオデコは普通なのに、禿げ上がった全斗煥ソックリの容貌で登場しており、またふてぶてしく狡猾な態度は、本当に腹立たしく思えました。彼の風貌や演技があったればこそ、悲劇のヒーローであるイ・テシンに感情移入できて泣ける作品になっていた訳で、MVPは文句なくファン・ジョンミンだと感じたところです。
「キングメーカー 大統領を作った男」、「KCIA 南山の部長たち」、「タクシー運転手 約束は海を越えて」など、韓国建国以降のともすれば黒歴史とも言うべき題材を次々にエンタメ的にも面白い映画にする韓国映画界を、日本映画界も少しは見習って欲しいものと思わずにいられませんでした。
そんな訳で、本作の評価は★4.5とします。
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