劇場公開日 2024年8月23日

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「史実に沿った内容だけど、政治・軍事サスペンスとして無類に面白い仕上がりの一作」ソウルの春 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5史実に沿った内容だけど、政治・軍事サスペンスとして無類に面白い仕上がりの一作

2025年3月29日
PCから投稿

表題の「ソウルの春」とは、1979年に韓国で起きた朴大統領暗殺事件ののちに生じた民主化に向けた動きを指し示しています。一般的にはその運動の進展を、市民側の民主化を要求する運動とそれを弾圧する政府側、という構図で捉える向きも多かったのですが、国軍内も決して一枚岩ではありませんでした。この混乱に乗じてクーデターを起こそうとする勢力と、それを阻止しようとする勢力に分かれ、激しい内紛が生じました。本作はその国軍内の内紛が頂点に達した、ソウルにおけるほぼ一晩の動向を描いています。

もちろん韓国の人々や韓国近現代史に詳しい人であれば、この内紛がどのような帰結を辿ったのかは周知のことですが、それでも物語の吸引力は一切弱まらないだろうと断言できるほど、クーデターを策謀する側とそれを阻止しようとする側の攻守は目まぐるしく入れ替わります。

最も主要な登場人物が仮名であることも、驚愕の結末の後で「あの登場人物が実はあの人だったのか!」とさらに驚かされるというサプライズにつながっています。

時系列で言えば本作の直前、朴大統領暗殺事件を題材とした『KCIA 南山の部長たち』(2021)、そして本作でわずかに言及のある光州事件を扱った『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017)は本作との関連作としても、やっぱり無類に面白い韓国映画としてもおすすめです!

yui
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