「ソウルの春は来なかった」ソウルの春 アベちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
ソウルの春は来なかった
2023年度韓国では観客動員1位の作品と言うことなので、韓国通の妻と観に行った。鑑賞後私が「正義が負け、結局ソウルに春はこなった。気分が悪い映画だなぁ」と言ったら、妻は「韓国の歴史の通り何だから仕方がない。そういう国だったのよ」と答え、その後の光州事件や「タクシー運転手」などの映画や色んな韓国ドラマについて講釈をしてくれた。
民主主義が万能だとは言わないが、どう考えても軍事政権下では国民は自由で豊かにはなれない。最近ではミャンマーが軍事政権になった時、私は絶望した(少し仕事で関わったこともあるので)。
この映画の主人公全斗煥は朴大統領暗殺事件後、合同捜査本部長となり捜査を指揮し、対立していた参謀総長の鄭昇和を逮捕し、ハナ会メンバーと共に粛軍クーデターを実行し、当時の大統領や国防長官までも恫喝し味方につけ政権の実権を掌握した。
それが史実なのだからどうにもならない話なのだが、もしこの粛軍クーデターが別の結果になっていたら、韓国の民主化は早まり「ソウルの春」は訪れていたかもしれないし、その後大統領になった全斗煥による粛清(社会悪を一掃する名目で数万人を逮捕し強制労働させたりの悪行)で命を落とす人々もいなかったはずである。
結局、全斗煥は不正蓄財や光州事件の罪で逮捕されたりの晩年で、死去しても国葬は行われず、国立墓地への埋葬も見送られた。これは、同期の同志であった次の大統領の盧泰愚が民主化運動弾圧に対し反省の意を示したのに対し、全斗煥は最後まで反省の意を示さなかった影響が強いとのことである。映画の中で「クーデターも成功すれば革命になる」と吠え立てた人間が反省などする訳はないと思う。
それにしても韓国映画流石です。そして、ファン・ジョンミンはやはり凄い役者です。これは紛れもなく彼の代表作となっていくでしょう。