「韓国のエンタメとして振り切った内容になっているが、人類初と言い出さないだけリアルなのかもしれません」THE MOON Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国のエンタメとして振り切った内容になっているが、人類初と言い出さないだけリアルなのかもしれません
2024.7.9 字幕 T・JOY京都
2023年の韓国映画(129分、G)
宇宙に取り残された宇宙飛行士を助けるために奮闘する宇宙センターを描くヒューマンドラマ
監督&脚本はキム・ヨンファ
原題は『더문』、英題は『The Moon』でともに「月」という意味
物語の舞台は、2020年頃のナロ宇宙センター
そこではナレ号の打ち上げ計画が推進されていたが、最終的には失敗に終わり、3名の宇宙飛行士が犠牲になってしまった
プロジェクトの責任者ジェグク(ソル・ギョング)は一線を離れ、後輩のミンギョ(パク・ビョンウン)に託すことになった
さらに、プロジェクトに関わっていた同志ファン・ギテ(イ・ソンミン)は事故の責任を感じ、自殺してしまう
その後、ソベク山の天文台に転職したジェグクは、インターンのハンビョル(ホン・スンヒ)とともに何気ない日常を繰り返していた
それから数十年後の2029年、ナロ宇宙エンターでは、ミンギョ主導のもと、ウリ号による月面着陸計画が進行していた
各国から反対され、韓国単独によるチャレンジとなっていたが、なんとか月の軌道に乗せることに成功する
月に向かうために選出されたのは、サンウォン船長(キム・レウォン)、クルーのユンジョン(イ・イギョン)、そして軍隊経験者でファン・ギテの息子ソヌ(ド・ギョンス)だった
計画は予定通りに進められるものの、太陽フレアの影響を受けて母船が損傷し、その修復のために船外に出たユンジョンとサンウィンは更なるアクシデントによって帰らぬ人となってしまう
母船の修復もままならず、新人飛行士のソヌだけが取り残される格好になり、ナロ宇宙センターは頭を抱えることになった
そこで、ナレ号の責任者だったジェグクが呼ばれることになり、対策を講じることになったのである
元々、各国から反対されていたプロジェクトでもあり、NASAも協力に否定的で、宇宙ステーション「ルナ・ゲートウェイ」も単独で動くことはできない
だが、ジェグクの元妻でNASAの統括責任者のユン・ムニョン(キム・ヒエ)は何とかして彼を助けたいと思う
そこで、月の裏側の情報を秘密裏にジェグクに託すことになるのだが、これがNASAの規律違反となり、権限を剥奪されてしまう
その後も、ムニョンは管制室に籠城する形でジェグクの支援に入り、最終的には「ルナ・ゲートウェイ」のクルーに判断を委ねることになったのである
映画は、ほぼファンタジーの世界になっているが、意外とリアルな部分もあったりする
帰れないのなら降りるという特攻もさることながら、与えられたもので生還を目指そうとするシーンは胸熱展開になっている
過去の事件がジェグクとソヌを仲違いさせているのだが、その事件にはさらに奥深い真相があった
それらが暴露されることはジェグクの科学者としてのキャリアを終わらせることになるのだが、それでも同胞を救いたいという願いを叶えるために奮闘していく
ラストはムニョンの行動は讃えられて昇進するという無茶な展開になり、ジェグクの方は天文台に引き籠るのだが、その辺りも韓国っぽいなあと思ってしまった
いずれにせよ、結構リアルな作りになっていて、物語上のご都合感は凄いものの、臨場感あふれる映像体験になっていた
この映像でドキュメンタリーを作ると某映画になってしまいそうだが、それを差し置いても、宇宙映画としてはよくできていると思う
実際には起こり得ないことの連続だが、エンタメなので、これぐらい振り切ってくれた方が良いのではないだろうか