劇場公開日 2024年6月7日

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「【”僕たちは殺人犯じゃない!”今作は、韓国司法の暴走による無実の罪を被せられた3人の少年の人生を取り戻そうと奔走する警官の姿を描いたポリティカルサスペンスである。】」罪深き少年たち NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 【”僕たちは殺人犯じゃない!”今作は、韓国司法の暴走による無実の罪を被せられた3人の少年の人生を取り戻そうと奔走する警官の姿を描いたポリティカルサスペンスである。】

2025年12月22日
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■1999年。韓国、参礼のウリスーパーマーケットで老女が死亡した強盗殺人事件が発生する。警察は”迅速”に動き、3人の少年を逮捕する。
 2000年。参礼警察署に異動して来た“狂犬”の異名を持つ敏腕刑事のファン・ジュンチョル(ソル・ギョング)のもとに、ウリスーパー事件の真犯人に関する通報が入り、彼は再捜査を始めるが、警察内で力を持つチェ(ユ・ジュンサン)等の執拗な妨害が始まり、捜査途中でファン・ジュンチョルは、地方に飛ばされるのである。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・監督が社会派のチョン・ジヨンであるので、冒頭から警察の少年達に対する違法捜査が描かれて行く。そして、ファン・ジュンチョルは、捜査資料と獄に入った三人の少年と会い、一人が文盲でありながら、供述書を書いて居たり捜査結果の矛盾に気付いて行くのである。
 だが、ファン・ジュンチョルは真相に迫りながら、地方に飛ばされるのである。

■韓国映画界が、自国の負の近代の政治的歴史を描いた映画には「ソウルの春」を始めとして傑作が多いのは周知の事実であるが、未解決事件を描いた映画も「殺人の追憶」「あいつの声」など複数製作されている。
 今作もその一本である。

・韓国は儒教の国であり、且つ組織構成のヒエラルキーがことさらに強い国である。故に組織の”秩序を乱す”今作のファン・ジュンチョルのような、”はみ出し者”は、嫌われるのであろう。それは、当然日本でもそうなのかもしれないが。

・再審の法廷で、真犯人のイ・ジェソク(ソ・イングク)が、ファン・ジュンチョルが彼の妻ヨンに近づいたことで、彼女が夫の過去の罪を疑い、姿を消していたイ・ジェソクが真実を告げるシーンは、チョン・ジヨン監督の創作である。何故ならこのウリスーパーマーケットで老女が死亡した強盗殺人事件は、実際には未可決事件だからである。
 そして、このシーンが感動を覚えつつも、少し残念に思ってしまうシーンにもなってしまっているのも事実である。
 すんなりと行き過ぎている感があるからである。

・又、刑法を学んだものとしては、法廷であそこまで違法捜査の証拠が出されて要るにもかかわらず、罪に問われないチェ次長や、オ検事(チョ・ジンウン)が罪に問われないのが腑に落ちないのであるが、再審の裁判官側が”司法の正当性”を守ろうとしたと思えば、納得が行くのだが、そのような描かれ方がされていないのだなあ。

・とは言え、ファン・ジュンチョルに対し、悪態を尽きながらも応援する妻ギョンミ(ヨム・ヘラン:この女優さんは本当に上手い。)と警官になった娘ヘミが、出世を棒に振ってでも、司法の闇を暴いた夫であり父に対する姿は、観ていて沁みるのである。

<今作は、韓国司法の暴走による無実の罪を被せられた3人の少年の人生を取り戻そうと奔走する警官の姿を描いたポリティカルサスペンスなのである。>

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