「被害者遺族の違和感を置き去りにしたために、設定に無理が生じているように見えるのが残念」罪深き少年たち Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
被害者遺族の違和感を置き去りにしたために、設定に無理が生じているように見えるのが残念
2024.6.20 字幕 アップリンク京都
2022年の韓国映画(124分、G)
1999年に実際に起きた「サムレ・ナラスーパー強盗事件」を基に描かれる犯罪映画
監督はチョン・ジヨン
脚本はチョン・サンヒョプ
原題は『소년들』、英題は『The Boys』で「少年たち」という意味
物語の舞台は、全羅北道完州郡のサムレ(参礼)
映画は、1999年の事件発生の一幕を描き、2000年にファン・ジュンチョル(ソル・ギョング)が当地の刑事課に配属される様子が描かれて始まる
事件はスピード解決し、それによってチョ・ウソン(ユ・ジュンサン)一派が昇進したと告げられる
だが、その一年後に「真犯人を知っている」というタレコミによって事件が動いていく
通報者のイ・スイル(イ・ジョンヒョル)は、友人ヒョンス(ペ・ヨラム)が犯行に加わっていることを知っていた
ジョンチョルは少年たちが収監されている少年院に出向き、事の真意を問いただすと、暴力的な尋問にて自供させられ、調書も捏造されていたことがわかる
そこでヒョンスたちを警察に招き、そこで自白をさせるものの、ウソンと当時の検事だったオ・ジェヒョン(チョ・ジンウン)らの狡猾な体質尋問によって無に帰してしまう
それから16年後、様々な島流しを受けたジュンチョルは地元に戻り、定年までの2年間をそこで過ごすことになったのである
映画は、2000年と2016年を行ったり来たりする内容で、犯人とされた少年たちを被害者の娘ユン・ミスク(チン・ギョン)が保護している中で、再審請求をしようと動いている様子が描かれていく
だが、16年もの時が経ち、犯人たちは時効を迎えていること、少年たちが対質尋問にて2度目の自供を行ったことで、ジュンチョルはそれを覆すのは難しいと考えていた
それでも、少年たちが今でも人殺し呼ばわりされていること、昇進したウソンらの横暴さを見かねて、狂犬は噛みついてしまうのである
16年前の事件を冤罪だと認めされるのはかなり難しく、たまたまジュンチョルが自宅に持っていた資料とか、遺族が撮影した犯行再現のビデオなどがあったことが決め手となっている
とは言え、あの少年たちと青年たちの体格差、声などを考えると、被害者側の供述の方にも手が加えられていた可能性がある
当時の裁判にて、犯人たちと被害者遺族は会っていると思うが、その段階でミスクは犯人像に違和感を覚えていたはずである
当初は混乱し、手の甲の写真だけを見せられて犯人だと断定したが、面通しをしていないとか、していてもその違和感を無視されたという経緯があるので、そこもきちんと描いていれば、ミスクがその後に彼らを保護していた経緯というものが明確になったように思う
被害者遺族が贖罪の意味を込めて殺人犯を保護しているという経緯は無視できぬものであり、それが引っ掛かりとなっていたので、ウソンたちのもう一つの「嘘」というものをしっかりと暴露する必要があったように思えた
いずれにせよ、韓国の警察捜査の闇にスポットライトを当てていて、実際にこのような誤認逮捕および冤罪事件を起こしているのは事実だったりする
裁判でそれが覆っても、人事考課に影響がなかったとか、処分がなかったという方が気持ちが悪い側面がある
そのあたりはサラっと字幕で紹介されるだけだが、そっちの方が事件全体としては気になってしまうので、そこもきちんと描いた方が良かったのかなと感じた