告白 コンフェッションのレビュー・感想・評価
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吹雪の山小屋を舞台にしたワンシチュエーションサスペンス
【イントロダクション】
生田斗真主演。仲間の告げた過去の殺人の“告白”を皮切りに、山小屋の中で展開される一夜の攻防を描いたサスペンス。
『カイジ』シリーズの福本伸行原作、『沈黙の艦隊』のかわぐちかいじ作画による同名漫画作品の実写化。
監督に山下敦弘。脚本に幸修司と『死刑にいたる病』(2022)の高田亮。
【ストーリー】
山岳部メンバーとして、大学時代からの付き合いである浅井(生田斗真)と留学生のジヨン(ヤン・イクチュン)。彼らは毎年、大学時代に亡くなった山岳部メンバーのさゆり(奈緒)を弔う目的で、彼女が亡くなった山を登山していた。
しかし、その日は運悪くジヨンが滑落により左足を負傷し、更には吹雪によって身動きが取れなくなってしまう。「自分を置いて行け」と言うジヨンだったが、浅井は承諾しかねる。助かる見込みがないと悟ったジヨンは、「さゆりの死は自分の手によるものである」と告白する。
吹雪の中、運良く山小屋を発根した浅井は、ジヨンを連れて避難する。救助を呼ぼうとするが、浅井はスマホを失くしており、ジヨンも持っていないと言う。
仕方なく暖を取る事にするが、浅井はジヨンが「罪を告白した事を後悔しており、自分を殺そうとしているのではないか?」と疑念を持ち始める。おまけに、ジヨンは失くしたと話していたスマホで救助を呼んでおり、疑念は一層増していく。
外は吹雪で逃げ場なし。疑念渦巻く中、浅井とジヨンの長い一夜が幕を開けた。
【感想】
漫画原作の作品だからであろうか、登場人物がモノローグを台詞で語る、ジヨンが姿を消しては突如現れる等の漫画的演出、連載漫画的な“引き”による興味の持続的な展開が目立つ。
ワンシチュエーションで展開されるサスペンスとして悪くはないのだが、この話では持って1時間が限界ではないだろうか?オチ自体も読めるし、ラストは『世にも奇妙な物語』風な後味を感じさせるだけに、余計にそう感じるのかもしれない。また、夢オチの派生系とはいえ、一夜の攻防全てが浅井の罪の意識による夢というのは肩透かしも食らう。
ラスト、目を覚ました浅井にジヨンが自首する意志を告げる際、浅井の不意の一言からジヨンが「お前の秘密は何だ?」と迫る。しかし、そこはやはり「お前がさゆりにトドメを刺した事を知っているぞ」として、実はジヨンは物陰から浅井の殺人を目撃していたという展開の方が、浅井がジヨンを滅多刺しにするラストの狂気性、「秘密を告白したお前が悪い」という台詞も引き立つと思うのだが。
生田斗真の危機迫った演技、ヤン・イクチュンの狂気を感じさせる迫力は良い。特に、ヤンが斧を手に扉を割ろうとするシーンは、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(1980)を彷彿とさせる。
元々、私がホルモンファンだからではあるが、マキシマム ザ ホルモンによる主題歌『殺意vs殺意(共犯:生田斗真)』は、楽曲のクオリティだけでなく、歌詞の内容も本作とリンクしており素晴らしい。
【総評】
ワンシチュエーションで展開されるサスペンスとしては特段目新しさもなく、オチ含めてもっと工夫が欲しかったのは間違いない。74分という上映時間も、本来ならコンパクトに感じるはずなのだが、本作においてはそれですら長いと感じさせられた。せめて、60分以内の中編映画ならば、もう少し感じ方は変わったかもしれない。
いつ襲われるか分からないという状況の静かな緊張感、そこから一転して...
ことごとく偽善が暴かれる痛快さ
「#マンホール」みたい
山下監督には異色の一本
ジョンの「告白」か、実は後ろめたさを隠していた浅井の感情に火をつけてしまった格好になったようです。
そう考えると、ジョンが浅井に告白した、そのジョンの動機も、本作では問題になりそうです。
つまり、真にジョン悔悟・自責の念から出たものなのか。
それとも、実は浅井の心中を見透かして、浅井に揺さぶりをかけるためだったのか。
確かに、負傷したジョンには、まさに生命の危機が迫ってはいたようですけれども。
臨死の刹那の悔悟の念なのか。
それとも、自分に命脈のあるうちに、浅井の本心を聞き出したかったのか。
いやいや、ジョンの負傷自体が、本当に偶発的な事故だったのか。
浅井との間にこういうシチュエーションを作り出すための作為でなかったと、どうして断定できるか。
違う違う。負傷自体は偶発的な事故としても、それをいわば「もっけの幸い」「奇貨」として、ジョンは浅井に揺さぶりをかけたのではないのか。
そう考えると、携帯電話に関するジョンの「うそ」にも、また別な意味合いが出てきそうです。
(実際は持っているのに「持っていない」とか、
実際には使用可能なのに「電池が落ちてしまった」。この、ジョンの浅井に対するうそは、本作では軽視できない、浅井に揺さぶりをかけるというジョンの隠された意図が垣間見ることができ、本作では重要だと、評論子は思います)
そもそも、ジョンは瀕死か。
立って歩きながら、携帯電話で救助隊と「(負傷者は)一人だ」と話をしていたぞ。
しかも「(遭難者は私)一人だ」とも言わんげに。
まんず、そこいらへんが明らかにされないので、観ている方は、気をもみます(評論子だけか?)。
そして、風雪に閉ざされた山小屋という密室という「物理的な制約」と、救助隊の到着までの「時間的な制約」という、ある種の限定空間=密室の中で展開される愛憎劇ということで、観ているこちらもハラハラ・ドキドキの一本でした。
原作マンガでは、ジョンの役回りも日本人だったようですけれども。
しかし、韓国人留学生という設定て、感極まったときのジョンの発話が韓国語になるというのも、ずいぶんと場を盛り上げていたように思います。
そういう状況も、興奮して、ついつい地が出たものなのか。それとも、喚(わめ)き立てて、浅井にプレッシャーをかけるジョンの作戦なのか。
本作の山下敦弘が、本作のような人の深層心理を描くような作風の作品を発表するのは、やや近いといえば別作品『マイ・バックページ』ぐらいでしょうか。
同監督といえば別作品『一秒先の彼』や同『リアリズムの宿』など、同じく人の内面を描くにしても「ほっこり系」というか、「ほのぼの系」というのか、ある種の温かみや可笑しみが感じられるような作品群というイメージがあり、あまり本作のようなイメージはなかったのですけれども。
そういう意味では、山下敦弘監督の手になる作品としては異色の部類に属するものでも、一編の心理劇としても、なかなかの佳作だったと、評論子は思います。
1時間ちょいだから見れる
ホラねー、やっぱりホラーだったでしょ❗️
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