「競走馬を擬人化したゲームとそのメディアミックスとしてのアニメーション映画」劇場版「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」 クロイワツクツクさんの映画レビュー(感想・評価)
競走馬を擬人化したゲームとそのメディアミックスとしてのアニメーション映画
ゲームより先に放映されたアニメの1,2期は評判が良かった。2期は、私もよく知っている競走馬が多くて、やはり、多少の違和感というか、現実として知っている競走馬が脳裏にちらついてしまうのは仕方なかった。同世代の人よりはアニメ等のオタクコンテンツに触れてきている分、擬人化アニメ作品なども抵抗も少ない方ではあるのだが。
アニメ3期は評判が芳しくなく、それを受けての劇場版。本作の2001年のダービーを争った世代には、あまり思い入れもないし、前評判としてもそれほど盛り上がってもおらず、見るかどうか正直悩んだが、休日に特に予定もなかったので、物は試しに、と観てみた。
映像の印象はテレビアニメと違って、その場所の空気感というか、温度や湿度が感じられるような雰囲気がまずよかった。湿気の多い夏の雰囲気とか、私の好みの映像だった。
レースシーンなどの表現は、臨場感がこれまでのウマ娘アニメ作品より増していて、劇場で見ないともったいない出来と言っていいだろう。
ストーリーは主役のジャングルポケットを中心にして、前半はライバルとなるアグネスタキオンとのレースでの挫折、後半はそれからの立ち直りに、新たな強敵としてのテイエムオペラオーとのレースが主体になる。いわゆる、スポ根もののノリと、ストーリーだ。
個人的には、マンハッタンカフェが勝利した菊花賞のレースも、もう少し尺をとって見せてもらいたかった。前半のアグネスタキオンとの勝負が、一種異様な雰囲気を醸し出していて、後半のオペラオーとのレースはそれを超えるほどではなかったように思うので、後半はやや尻すぼみな印象をもった。
最後に、ライブを行って終わったところは、ああ、そういえば、こういうコンテンツだったな、と我に返ったようなところもあった。ウマ娘というコンテンツに触れてこなかった人には、このシーンが異様というか、唐突に感じる人が多いようだ。インド映画の様、というのは言いえて妙か。
上映館の多さなどから、興行的には期待されていたようだが、それに見合うほどの成績ではないものの、馬を美少女に擬人化したゲームコンテンツのアニメ映画作品、という、興味のない人からは敬遠されるだろうタイトルとしては、そこそこヒットしたように思う。ネット上ではやたらとネガティブキャンペーンを張っている人も多いようだが、課金のあるアプリゲームに、元は馬券という金のかかった競馬の競走馬の擬人化という、金が絡んだネガティブ要素も持っている故に、非難を受けがちなのかもしれない。
最初の期待値が低かったので、想像以上に楽しめた映画だった。人に勧められるかと言えば、少々微妙でもあるが、”ウマ娘”という存在を受け入れられるか否かで評価は変わるだろう。