「ウマ娘世界の掘り下げがなかった」劇場版「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」 わさんの映画レビュー(感想・評価)
ウマ娘世界の掘り下げがなかった
作画は素晴らしく迫力があり、良いシーンもあったが、総じて表面をなぞっているだけの印象。ウマ娘界の特異であるアグネスタキオン・マンハッタンカフェを登場させる以上、ウマ娘の世界にもっと切り込んでほしかった。
《良かったところ》
・ジャングルポケットとフジキセキの並走シーンでの、フジキセキの作画が素晴らしく、また二人の会話とフジキセキが復帰を決意しているシーンは心が温かくなった。
・作画で魅せようという制作陣の意気込みを感じた。
《残念だったところ》
・レースシーンにて、観客席のキャラが合いの手を入れるシーンが多すぎて、レースに集中できなかった。
・ジャングルポケットの過去が、フジキセキにあこがれる描写しかないため、内的な走る動機が不明瞭で感情移入できなかった。
・ゲームのアグネスタキオン・マンハッタンカフェのシナリオをプレイ済みで、ゲーム以上の掘り下げを期待していたが、なかったため残念だった。
・ルー・シマ・メイは、名前すら冒頭以外ほぼ呼ばれず、ガヤ状態だった。
・タナベトレーナーの過去・高架下にトレーニング施設を持っている理由の説明がなかった。
《個人的に映画に期待していたものの、無かった描写》
・ジャングルポケットのフリースタイルレース
『「元はフリースタイル・レースの世界で荒くれ者たちを束ねるリーダーだったが、」フジキセキの走りに衝撃を受け、公式レースの世界に飛び込んできた。』という設定が生かされていなかった。
過去のウマ娘のアニメで描かれていない、公式レース・練習以外のレースシーンを期待していた。
・アグネスタキオンとマンハッタンカフェの共有教室の掘り下げ
タキオンの実験(ほぼレースの録画を見てるだけだった)や、マンハッタンカフェの怪異。例えばマンハッタンカフェのゲーム内シナリオでは勝手に物が動きだしたり、トレーナーが異空間に連れていかれたりする。共有教室のここでしか見られない映像演出、掘り下げを期待していたが、ただの美術設定通りの背景と化していた。教室を占拠している理由の説明もなかった。
・アグネスタキオンの研究
速度の限界を研究しているのはわかるが、皐月賞でアグネスタキオンは何を理解したのか?「全力で走ったら足が壊れる自分の姿が見え」、これ以上は足の限界と察したからレースをやめ、ほかのウマ娘の速度の成長を研究する事にしたのか?ジャパンカップにてジャングルポケットが過去の己に打ち勝ったのを見て、復帰に向けて走りだしたが、アグネスタキオン自身の足の問題は解決していない。ジャングルポケットとのライバル関係と研究が混同されているように見える。
またオープニング以降、フィルムの演出が多用される割には、歴代ウマ娘の映像を研究するシーンもなく、実馬の記憶がよみがえることもなく、演出の意図がわからなかった。
・マンハッタンカフェの菊花賞
予告編映像で期待していたが、完全に脇役扱いで回想がメインであり、残念だった。