「映画を作った事がない人達が作ったような映画」劇場版「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」 DEFENDERさんの映画レビュー(感想・評価)
映画を作った事がない人達が作ったような映画
一言で言ってしまえば、映画としてはイマイチ。
シンプルに一言、面白かったか?と聞かれたら、面白くないわけじゃないけど、う〜ん……という感じ。及第点にも達しない。
個人的に思ったのは、せっかくダンツフレームというキャラクターを作ったんだったら、語り部として使えば良かったんじゃないかと。
トレセン学園ってこんな所、ウマ娘ってこんな感じ、アグネスタキオンはこうゆう子、マンハッタンカフェっていう子はこんな子、ポッケちゃんはこんな子、かくいう私は、生まれは○○、育ちは△△、今はこんな目標の為に頑張ってます!っていう導入にしてしまって、以降、事ある毎にダンツフレームに語らせればもう少し上手くまとまったのでは?と思う。
結局、主要キャラクターを4人も5人も出す割に、比重がジャングルポケットに偏り過ぎてるから、マンハッタンカフェもアグネスタキオンもヤバさの方が際立って、イマイチ見えてこない。バケ学に傾倒してるのは分かる。ただそれだけ。バケ学に傾倒してる理由が分からないから、ただ客観的に、頭ヤバそうなウマ娘だなぁ、にしかならない。
そうゆう職業ならば当たり前なのだが、ウマ娘という学園の一生徒であろう者が、なぜか一室を占拠してバケ学に傾倒しているのだから、何かあるに違いないと思うのだが………さて?
演出の過剰さばかりが際立って、イマイチ学園群像劇的なそれぞれのキャラクターの魅力が分かりづらくなってると思う。
競馬のレースというのは、長くても所詮4分もかからず終わってしまうわけで、そのレースに至る過程や、レースにかける想い、レース中の刹那、レース後歩むそれぞれの道程など、映画で描くべきものはレースそのものでは無いはず。
むしろ、レースそのものなんて、本当に山場として1つか2つあれば充分だろうと思う。
それをわざわざレースをボリューム強く描くなど、俺からすれば、わざとらしくベッドシーンを最初から最後まで描くようなもので、そんな事をする映画なんてピンク映画しかないわけだ。
男と女がキスしてベッドに倒れこめば、その後何が起こるかなんて誰だって分かる。
わざわざ描くなら、そこに殺人鬼でも現れるからだろう。
ならば、わざわざレースを描くのなら、そのレース中に何らかのドラマがあるという事かと言えば、それがない。
過剰な演出で走るわ走る。そしてレースが終わって誰が勝ったのか。
分かる事はある。
レースでキャラクターを描きたかったんだろう。
アグネスタキオンとジャングルポケットの関係を描く上では皐月賞は必須だったんだろう。
いわば、レースありきなんだ、この映画は。
皐月賞、日本ダービー、ジャパンカップ、他にもレースが次から次へと展開するが、それはいわば総集編みたいな展開で、結局ドラマに関してはほぼジャングルポケットのみだから、結局ダンツフレームの存在すら勿体ないのである。
コミカルな描写はアニメだしまぁまぁ、序盤としても必要だろう。
けれど、アグネスデジタルってどうゆうウマ娘なの?
アドマイヤベガってどうゆうウマ娘なの?今何を呟いてたの?
あの子はカレンチャンと仲がいいの?
あの電車に乗ってるウマ娘って何だったの?スイープトウショウって誰?
意味も分からずやたらいろんなウマ娘が出てきても、その他大勢であって、意味が分からないのである。故に必要ないといえば、ない。
つまり、大勢のウマ娘が登場するのは序盤だけでいいのである。
合宿中は、必要な、描きたいところを濃密に、その他大勢のモブにピントなんか合わせずボカせばいい、フォーカスは主役にだけ合わせれば良いのである。
この映画は、
「13話構成のTVアニメ屋さんが、作った事のない映画を、色々詰め込んで、やりたい事を思いっきりやってみました」
みたいな映画に思えてしょうがないのである。
故に映画としては………なのである。