「物足りない部分はありつつも熱いスポ根を感じられた。みんなに見てほしい」劇場版「ウマ娘 プリティーダービー 新時代の扉」 てんこ〜さんの映画レビュー(感想・評価)
物足りない部分はありつつも熱いスポ根を感じられた。みんなに見てほしい
良い所悪い所を交互に書いていきます
● レース作画や音響のインパクトは抜群。通常の靴の音に混ざる蹄鉄の音。画面を駆け抜けていく際の風切り音。各演出シーンに合わせた壮大な音響演出。どれをとってもシリーズ最大のクオリティと感じた、映画に適したものばかり。
✖ ウイニングライブの説明が足りてない、SNSの映画感想を見ててもそれを強く感じる。今回の映画の場合は、映画最初のフジ先輩のレース後にフジ先輩のウイニングライブを1カットでもいいから挟んでほしかった。
● タキオンの描写が秀逸。序盤の狂気の科学者から中盤の一線を退いた引退ウマ娘、プランBに舵を切ってこのまま私の代わりに!!……私の代わりに?? と心に疑念が浮かび、少しずつ疑念と【●●●】は膨れ上がり、最後のポッケの「先行くぜ」の一言で【本当は自分で走りたい!】が爆発するのが神ってた
✖ カフェの描写が希薄。オトモダチや超常現象などのバックボーンの説明がほとんど無かった為、初見の人は「この子急にお友達とか何言ってるんだろう」とか思いそう。また菊花賞のシーンが少なめだったこともあってカフェ推しには不完全燃焼に感じる事もあった。全員のレース描いてたら尺足りないからポッケとタキオンにスポット絞るのはわかるのだが、なら予告で4人主人公と感じるような宣伝はやめてほしかった。
● ポッケに合わせてフジ先輩にスポットを当てたのは大正解。ポッケを突き動かすキーパーソンとして最適だった。最初にトゥインクルシリーズで走る理由、ダービーで一着を取る理由、もう一度壁に立ち向かう理由、いろんな形で、史実に大いに繋がりのあるフジ先輩を起用したのは秀逸
✖ フジ先輩の説明を作中でもう少しして欲しかった。自分は元ネタを知っているからわかるが、初見の人には「フジ先輩はタキオンと同じ『4戦4勝』『ケガで引退』」というのが伝わり切らなかったと思う。そこをもう少し細かく描くだけでも物語に深みが増すだろう
● 『最強を目指す』というどシンプルな理由がポッケに適していて分かりやすかったと思う。最強の為にタキオンやオペラオーを超えようとするのもわかりやすい
✖ ただやはりポッケももう少しバックボーンの描写が欲しかった。フリースタイルレースの時にとにかく一番になりまくっていたとか、フリースタイルレースの描写が1カットも無かったのは惜しい
● フジ先輩とトレーナーの関係が尊い。レースへの想い、後悔、感謝、葛藤、信頼、いろんな感情が会話でうまく表現できていた。フジ先輩が改めて「トレーナーさん」と呼んだ時はうるっと来た
✖ 各キャラの強さに対する理由の描写が足りていないと感じる。練習も凝った練習をしておらず、レース中も戦略や駆け引きといった描写があまり無かった為「なんか知らんけど強い」「なんか知らんけど最強」みたいに感じてしまった。またタキオンが最後復帰していたが、それまでに「アグネスタキオン、リハビリ順調!回復の兆し!」等の描写が無かった為、「なんだ故障とか言って結局走れるんじゃないか」と軽く見えてしまった人もいた模様。1カットでもいいからプランAに戻るために奮起した描写または演出は欲しかったかも
● 演出がシリーズ随一。特にポッケの心象描写が秀逸で、『タキオンを超える事が出来ない』という思いから過去の心象描写が全部タキオンに上書きされていくのは戦慄した。夏祭りでちょっとした音に反応してしまうのも、心象表現に合わせた良い演出だったと思う。またレース中の壁を超える演出も映画ならではの圧巻のクオリティで強く惹かれた
✖ プリズムの説明がない。演出には多用されたが、なんで持ってるのかとか一切触れなかった。史実ネタでもないはず。ポッケの性格を考えるとそういうアクセサリを意味もなく持つタイプとは思えない
思うことは多々あれど映画製作の方針としては何ら間違っていない。願うなら2作目が作られる事を祈る。
初見の人も是非見てほしい!ついてけない部分もあるだろうが、熱血!走る!の2点でも楽しめるぞ!