「今そこにある危機」戦雲(いくさふむ) ワーチェンさんの映画レビュー(感想・評価)
今そこにある危機
三上智恵監督の共犯者になるために朝からポレポレ東中野に行って来た。
共犯者とはドキュメンタリー映画をすすんで観る人間は造った側と共犯関係にあるとの監督の言葉をお借りした。
この映画の元と言える監督の著書「戦雲」単行本は先に読んでいたが、映像で見る石垣島、宮古島、与那国島の軍事要塞化には暗澹たる気持ちにされた。
「また戦雲が湧き出してくるよ、恐ろしくて眠れない」石垣島の山里節子さんの歌から始まる映画は、宮古島に造られていく弾薬庫を備えた保良訓練場、石垣島に造られるミサイル基地、与那国島に運びこまれる地対空誘導PAC3と止められない、僕らはよく知らない事実を突きつけてくる。
三上監督は、そんな中でも与那国島のハーリーという船レースの勇猛さと楽しさ、そこに参加する笑顔の自衛隊員と島人の交流やカジキに足を射ぬかれ仇を取ることに執念を燃やす元気で明るい川田のおじい等南の島らしい生活も写し出していく。
宮古島の楚南有香子さんが弾薬庫の前で訴える「多少の犠牲は仕方がないさというときの多少の中に私たちが入っているよね?」という言葉が忘れられない。
「国を守る」とは何なんだろう、そこに僕らは入っているのか?「台湾有事の危険は沖縄に押し付けておけばいいのだろう」いやいや、「沖縄が要塞化されているのすら知らない」でいいのだろうか?
安倍政権が成立させた安全保障関連法で集団的自衛権が容認され戦争をしない出来ない国から戦争が出来る国になりアメリカの戦争は日本の戦争になった。さらに岸田政権で敵基地攻撃能力を保有し戦争をする国になってしまった。台湾有事は日本の有事という政治家がいる時代、沖縄の問題は僕らの問題なのだ、国を守る時に僕らは守られない。
間違いなく、今そこにある危機だけど、戦争になっても「へそ天で寝ている猫のように」ナマケモノになっていよう。