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本編は3つの作品のオムニバス形式。
2つ目の「相続霊」について
大きな映像的な仕掛けはないため、役者、涼邑芹の演技が問われる脚本になっていたが、
抜群の演技で大変没入できた。
脚本について、最後のオチは解釈の余地を持たせたものだった。
1人で鑑賞したため、1人で解釈していたら一番”ゾッと”したので誰かにシェアしたく投稿。
最後のシーンは、莉央が病院服で自宅に帰るシーン。
ここで大きな疑問が起きる。
他の2作と違って、莉央だけ「霊に殺されなかった」。
なぜ、襲われなかったのか?
構成を振り返る
①玄関に居座る占い師にとまどう莉央
②スマホで妹/彼氏から着信。腕には傷が。ただし身に覚えがない
③異変を感じて、何かを知ってそうな占い師に頼るべく玄関を開ける
④スマホで妹/彼氏から着信 だんだん様子がおかしい。 ただし占い師には見えていない様子
⑤記憶のフラッシュバック。霊登場、ゆったりと気を失う
⑥病院服で自宅に帰宅
②③のシーン
(1)腕に注射痕があったこと
(2)霊感をもった占い師に
1回目は、履き物が右左で違う姿を見たこと、
2回目は、パジャマ姿のまま歩いているのを見たこと
3回目今回、取り憑かれていることをみて慌ててついてきたこと
を告げられる
このことから、【莉央が精神病を患っていて投薬中であること】が推察される。
人間は、辛い記憶は忘れようとする動物だ。
②で記憶を失っていたことも繋がってくる。
④⑤のシーン
(1)昔、妹に彼氏を奪われたこと
(2)現彼氏がストーカー化して、逃げ回っていたこと
(3)両親が亡くなって遺産相続のタイミングだった
(4)莉央は警察に捕まっていない
ことがわかる。
こららを組み合わせると、
【ストーカー化した彼氏に恨みがある妹を殺させて遺産を相続するとともに、罪を彼氏になすりつけた】ことが推察される。
彼氏が妹を殺して捕まったから、莉央は「無罪」で街中を歩けるわけだ。
ストーカー化した彼氏が、映像作品中に莉央を殺しにこないのも合点がつく。
(きっと刑務所で捕まっているのだろう)
ただ、大きな疑問が出てくる。
⑥のシーンだ。
なぜ莉央は襲われなかったのか?(再掲)
これはメタ要素だが
他2作では
(1)しっかり登場人物は霊に殺される
(2)霊は全員見える(カメラにもうつる)存在
であった。
ここでおそらくヒントになってくるのが占い師の存在。
(2)に対して、占い師には全く「見えていない」。
最初に、「霊感がある」ことを占い師は自称しているが、
④⑤のシーンでまったく「霊を見ていない」(悲鳴とかあげてない)
また、亡くなった彼氏/妹の電話の声も「聞こえていない」
それはなぜか。
相続霊は現実世界に存在していないのではないか?
「相続霊は現実世界にはいない、莉央の精神世界で生み出した霊」
なのではないか━━━━━
自分にとっての負債(ストーカー彼氏、鬱陶しかった妹)を処理して
大きな財産を手に入れることができたが、
同時にドフトエフスキーの罪と罰のような
「罪の意識」を相続してしまったのではないか━━━━
つまり、「相続霊」=「罪の意識」なのではないか━━━
この仮説であれば諸々合点がつく。
・占い師が、電話している姿/霊に襲われた姿を認識できないこと
・倒れた後に霊が莉央を物理的に殺せないこと
・そして、最後に「病院服」で再度帰宅すること━━━
⑤の最後のシーンは、力尽きたように倒れて目を瞑るシーンだ。
おそらく、きっと目が覚めた次の日、
精神病院に出かけるのだろう。
ただ、彼氏を操って妹を殺したことは決して人には打ち明けられない。
そして、殺人現場の「自宅」に帰ってくると毎回フラッシュバックしてしまう。
玄関の鍵を閉めると同時に、何度も「罪の意識」に呪われ
気づいたら倒れて力尽きたように気を失う━━━
そんな、「罪の意識の終わらない呪い」を描いた作品なのでは?と思いました。
そして、
人間誰しも(大小あるが)何かしら、
過去に「忘れ去りたい罪」を犯してきたはず。
上記のような解釈をしてしまうと、
鑑賞者自身の中の「忘れ去りたい相続霊」に気づいてしまって、
鑑賞者自身が呪われるエンディングになっていることに気づき、
一番ゾッとしました。
(この考察を最後まで読んでいただいた方、
あなたに「相続霊」を「相続」してしまい申し訳ありません。)