津島 福島は語る・第二章のレビュー・感想・評価
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50年、100年先にも必ず残る作品
声を荒げるわけでもなく、誰を責めるわけでもなく、住民一人一人の言葉で心の内が語られていく。
その合間に映される桃源郷のような豊かな自然、かつての写真の底抜けの笑顔、笑顔、笑顔。
ナレーションの音声もなく、監督の目線で一緒に話を聴いてるかのように進む。
これだけの郷土愛。生きる人々のあたたかさ。歴史や文化や伝統を大切にし、地域全体が家族のように結びついている。そんな人々が、お別れの挨拶もできぬまま、散り散りに避難を余儀なくされ、役人から「100年は帰れない」と言い渡される。
どれだけの絶望と悲しみ、怒りだろうか。
こんな思いを抱えている方々の心の内を聴かせていただくことの稀有さ、大切さに涙しました。正に、土井監督の人間性に触れたからこそ引き出されたものですね。監督は、ご自身は黒子で皆さんの言葉の力が強いからだ、とおっしゃってましたが。
また、監督は、50年、100年先にも必ず残る作品だとおっしゃってました。
利害があり、TVではなかなか放映は難しいかと思いますが、経済至上主義とは次元が違う、人としてもっと根源的で大切なものを問うている作品です。
残すべき、伝えていくべきものですね。
どうか、たくさんの方に届きますように。
今、観るべき映画
共同体とは、人の繋がりとは、あの東日本大震災がもたらした分断と破壊を改めて強く意識させられる。
そして、現在に至っても尚、国は東電は責任をとろうとせず、隠蔽と誤魔化しが蔓延しており、過去の清算や救済、原因の追及が終わらない中で、この国の癌とも言える原発を再稼働へ舵をきっている。
いまだ、原発事故の災害と被災は全く終わっていない。
この映画で、特に注目に値するのが、映画のタイトルにある津島地区の住民。東京23区の面積の津島地区には1400名が居住していたが、東日本大震災の原発事故で大量の放射能が降り注ぎ、居住困難区域に指定された。大きな家族とも言える強い繋がりを持った住民たちは散り散りになってしまう。
津島地区の住民は、損害賠償の金銭よりも元に住んでいた津島の土地を元に戻すことを最優先にし、津島に戻りたい一心で津島原発訴訟を起こした。金銭でなく、故郷を元に戻せという訴訟が大きな特徴であり注目するところ。
その震災事故後の経過と思いと現在の状況を一人一人のインタビューを通して可視化していく。そして、どうして津島地区が、そういうコミュニティに至ったのか説き明かされる。
日本人、一人一人が原発事故がもたらした分断と哀しみ、傷に対してどう向き合っていくのか、どうすればいいのかを考えさせられる映画。震災事故は、どこに責任があり、誰が責任をとるべきかは明らかである筈なのに、ひたすら曖昧にしていくことで被災者の傷は残り続け深く沈殿していく。風化していく恐れもある中、いま一度、再検証再確認の必要性も問いたくなる映画でもある。
今、観るべき映画であることに変わりはない。
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