「悪い奴はほくそ笑み、正しい奴は健やかなる笑顔を見せるものだろうか?」貴公子 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
悪い奴はほくそ笑み、正しい奴は健やかなる笑顔を見せるものだろうか?
2024.4.18 字幕 MOVIX京都
2023年の韓国映画
極貧のボクサーが正体不明の男に付け回される様子を描いたミステリー&アクション映画
監督&脚本はパク・フンジュン
原題は『귀공자』、英題は『The Childe』で、「裕福な出身の若者」という意味
なお、映画の主人公を「貴公子」表記している場合が多いが、彼自身は「友達(キム・ソンホ)」としか言わない
物語の舞台は、フィリピンのある村
闇ボクシングで賭けの対象になって稼いでいるマルコ(カン・テジュ)は、母(キャロライン・マクホボス)は、フィリピン人の母と韓国人の父の間に生まれた「コピノ(混血児)」だった
彼はコピノの支援学校で学び、そこの校長キム先生(イ・ギヨン)に多大なる恩義を感じていた
ある日、父の居場所がわかったと聞かされたマルコは、父を知る人物の代理人・カン弁護士(ホ・ジュンソク)とともに韓国へと渡った
その機内の中で、マルコに語りかける謎の男は、自分を「人生最後の友達だ」と紹介してくる
関わりを持ちたくないマルコは、男を無視するものの、行く先々で謎の男は姿を現すのである
映画の前半は、極貧生活の中でも母の手術代を稼ぎたいマルコを描き、バーにて出会った謎の西洋人(ジャスティン・ジョン・ハーヴェイ)から宝石強盗の話を持ちかけられる
だが、宝石店に侵入しようとした矢先にギャングに襲われ、さらに逃げる最中に女(ゴ・アラ)の運転する車に轢かれてしまう
病院に搬送され、手当を受けた彼は、わずかな示談金を受け取り、そして、父発見の知らせを聞くことになるのである
物語は、父の正体がわからないまま、命懸けの逃亡劇を繰り返すという流れになっていて、マルコを追うのが謎の男と、財閥の2代目ハン・イサ(キム・カンウ)の部下たちだった
さらにマルコを轢いた女ユンジュもマルコ争奪戦の一味であることが発覚し、他の者どもを出し抜いたユンジュは、マルコに「父の正体と韓国に連れてこられた目的」を知ることにある
それは、心臓病に扮している父(チェ・ジョンウ)が実の父親で、狙いはマルコの心臓だった
財団はハン会長の後妻であるチャン女史(ハン・ジウン)の娘・ガヨン(ジョン・ラエル)が正当な相続人とした遺書によって混乱していて、ハン・イサは父の病気を治して遺書を撤回してもらおうと考えていた
だが、その思惑を阻止するために、ガヨンはユンジュに依頼をかけていて、さらにこの一連の動きを牛耳っていたのが謎の男だったのである
謎の男は、でっち上げの腹違いの弟を探し出し、キム先生を通じてマルコを紹介してもらう
謎の男もコピノで、キム先生の教え子であり、そして病を抱えて、死ぬ前に何かしたいと考えていた
それがハン・イノを脅迫して「腹違いの弟と引き換えに1000万ドル」を手に入れて、そのお金によって「コピノの学校の再建」をしようと目論んでいた
実の父にようやく会えたマルコは、その悲しい目的を知るのだが、それらは全て「嘘」だったことがわかる
マルコは母の手術代を手にいれ、学校も再建できたのだが、素直に喜ぶこともできず、謎の男につれなく接してしまうことになった
映画は、その後も「実は」という展開になっていて、それらを含めて「貴公子とは誰だったのか?」という結末へと繋がって行く
謎の男は何かしらのプロで、それは暗殺者ということになると思うのだが、彼がどのような経緯で今の位置にいるのかなどは一切語られない
謎の男は謎のまま、ということなのだが、感覚的には「彼こそが本当の腹違いの弟である」という説は肯定も否定もされないという感じになっていたように思えた
いずれにせよ、先の見えない展開になっていて、サイコパスっぽい謎の男も魅力的なキャラに仕上がっている
アクションシーンなどはガチで大変なことになっているが、謎の男がコメディリリーフを務めているのは面白い構造になっていると思った
そのコミカルさは大体滑っているか相手にされていないかのどちらかだが、それも含めて魅力的なキャラであったというのは間違いないと感じた
続編を一応は匂わせているが、あるとすれば「謎の男の出自が想像通りだった」ならば安すぎる話になってしまうので、想像の斜め上を行く真相を期待したい