劇場公開日 2024年8月16日

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「もちろん作中に溢れるスタント愛を体感してほしいけど、ドラマ部分の独自のリズムも面白い一作」フォールガイ yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 もちろん作中に溢れるスタント愛を体感してほしいけど、ドラマ部分の独自のリズムも面白い一作

2025年4月25日
PCから投稿

新鋭の映画監督、ジョディ・モレノを演じたエミリー・ブラントの、ちょっと緊張感を腰砕けにしてしまうような演技がいい雰囲気を醸し出している本作。

ライアン・ゴズリング演じるコルト・シーバースが職業とするスタントアクションが本作の重要な柱となっているのは当然なのですが、特に前半では、アクションの爽快感全開!というよりも、ちょっと諸々の動きに鈍重さを感じることも。CGやVFXの物理法則を無視したスペクタクルに目が慣れてしまったことによって、現実の人間が行うアクションの動きが緩やかに見えてしまうという、という一種の弊害も影響しているのかもしれません。

ただそうした「もっさり感」は演出の計算に入れてる節があります。アクションはスピード感よりも、そこいらにあるものを使ってみたことのないアクションを生み出す方向で描いているし、ドラマ部分でも、エミリー・ブラントのちょっと緩い演技は、いざ緊張感をみなぎらせているコルトはじめとしたスタント俳優たちの緊張感をいちいち削いでくれる…。といった様々な要素がまじりあって、本作ならではのリズムを構成しています。

肉感的なアクションに目が慣れたころに怒涛のクライマックスに突入していくんですが、そこで展開する動きは、まさにスタントの凄みと醍醐味を体験させてくれます。「スタント」という映画を構成する必須の要素、そして営々と積み上げられてきたこの身体技法に対する敬意と愛情に貫かれた作品であることを、エンディングで改めて実感させられます。

外連味があるのはいいんだけど、どうも見た目の派手さに引っ張られすぎている感のあったデビッド・リーチ監督ですが、本作ではゴズリングを起用することで、現実感や身体感をうまく作品に取り込めていると感じました!

本作を面白く鑑賞した人には、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019)との描写の違いもぜひとも確認してほしいところです。そして本作と同様、スタントに対する敬意と愛情がこもった『カンフースタントマン 龍虎武師』(2021)も!

yui
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