「見応えあるスタントの連続。映画館で見るべき傑作。」フォールガイ アラカンさんの映画レビュー(感想・評価)
見応えあるスタントの連続。映画館で見るべき傑作。
字幕版を鑑賞。1980 年代に放送されたテレビドラマを映画化したものだが、原作を知らなくても十分楽しめる娯楽作である。フォールガイとは、「身代わり」の隠語らしいが、「騙されやすい奴」という意味もある。このダブルミーニングがそのままストーリー化されたような話になっていた。監督はスタントマン出身だそうで、スタントの難しさも見せ方も知り尽くしており、落下や火だるまに始まって、カースタントから爆破、ヘリを使った空中アクションまで、見せ場の連続で非常に見応えがあった。
ストーリーは、スタントを見せるために組み立てられたような感があるが、特に目くじらを立てるほどではない。いくら超有名な映画スターでも、命令一つで人殺しをためらわずに行うような手下を何人も抱えることはできないのではないかというところが一番引っかかったところである。超一流のスタントシーンが惜しげもなく次々と披露されるので、文句を言う気にはなれない。
現在ではディープフェイクで役者の顔が入れ替えられるようになっており、VFX や CG の技術進歩で、フル CG のアクションシーンがこのまま進化すれば、体を張ったスタントはやがて必要なくなるのかも知れないが、爆破やカーアクションや体を張ったスタントは、チャップリンやロイドなどハリウッド映画発足当時から存在している必要な人材である。それにもかかわらず、アカデミー賞にスタント賞がないのは恥ずかしいことだと言わねばならない。作ろうという運動はあるらしいので、近い将来作られるかも知れないというが、アカデミー賞発足から 100 年近くも無視して来たのは黒歴史というべきである。
ライアン・ゴズリングは「ラ・ラ・ランド」「ブレードランナー 2049」「ファーストマン」などを見て来たが、今作が一番輝いていた気がする。筋骨逞しい肉体美に驚かされた。本作ではプロデューサーも兼任しているらしく、力の入れ方が半端ないと感じた。音楽のドミニク・ルイスは馴染みのない名前だったが、実に見事な曲を付けていた。今後も注目したい作曲家である。
実は、劇中で作られている映画「メタルストーム」は実在する映画で、ユニバーサル・ピクチャーズが 1983 年に発表している。砂漠の惑星「レムリア」を舞台に、平和維持警備隊員と悪の支配者との闘いを描いた SF アドベンチャーで、世界興行収入はわずか 530 万ドルと失敗に終わってしまったものである。主役が交代した方の俳優が、最初の俳優と似ても似つかないと思っていたら、何と「デューン」のジェイソン・モモアではないか。カメオ出演が好きな監督らしい。
とにかく見応えのあるスタントシーンの連続が見事である。映画館で見なければ迫力が損なわれるのは言うまでもない。緊張感が切れずに持続したところも特筆すべきである。頭を空っぽにして見られるところも良い。残虐シーンやお色気シーンはないので、お子様連れにもお勧めである。エンドロールで流されるメイキングシーンの数々も見応えがあった。
(映像5+脚本4+役者5+音楽5+演出5)×4= 96 点