「高校演劇を映画化する意義と難しさを体現した一作」水深ゼロメートルから yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
高校演劇を映画化する意義と難しさを体現した一作
高校演劇の映画化といえば、最近も城定秀夫監督の『アルプススタンドのはしの方』(2020)という映画があったなー、と思っていたら、両作とも高校演劇の映画化プロジェクトとして作られたとのこと。
『アルプススタンド~』は、高校野球の試合会場なのに試合は敢えて見せない、という演劇的な作劇法を効果的に取り入れていましたが、一方本作は実際に学校にあるプールの広さ、そこに堆積する砂の物量感を物語上表現できなければならないので、特に美術面で相当苦労したことがうかがえます。
原作の演劇作品で脚本を手掛けた中田夢花が、本作でも脚本を担当している点が、本作の大きな特徴となっています。劇場公開作の脚本家としてはまだ経歴が浅いはずですが、それでもあえて抜擢したことは、高校演劇と映画をつなぐ回路をより広くする上で大きな意義があります。
中田は演劇では省略できたプールや砂が実際に映し出されることを想定して脚本を書く作業の苦労をインタビューで語っており、確かに作中でも、演劇的演出と映画としての表現がかみ合っているとは言えない場面もなくはなかったのですが、それでもこれだけの水準の脚本を仕上げたこと自体がまずは驚異的。
高校演劇は毎年優れた作品、人材が登場しているので、今後も映画化を積極的に推し進めてほしいところ!
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