「上質な作品なのだろうけど、あまり楽しめなかった」チェンソーマン レゼ篇 あ あさんの映画レビュー(感想・評価)
上質な作品なのだろうけど、あまり楽しめなかった
私は原作未読でアニメ総集編から入った者です。総集編が面白かったため本作品を鑑賞するに至った次第です。
結論から申しますと、私は本作品をあまり面白いとは思えませんでした。その理由は、心に響くシーンが特になかったからです。腹立たしい敵をスカッと倒す爽快感もなければ、思わず涙が浮かぶような感動もなく、かと言って、胸が締め付けられるような憂鬱さも特に感じられませんでした。
本作品がイマイチ私に刺さらなかった具体的な要因は、以下に示す点にあると考えています。
・レゼにあまり惹かれなかった
・天使の悪魔に物語上の必要性を感じなかった
・アキ及びデンジの感情が微妙に理解できなかった
・戦闘シーンに納得感・爽快感が足りなかった
各項目について、もう少し詳細に述べます。
☆レゼにあまり惹かれなかった
この点が、私が本作品を楽しめなかった最大の理由でしょう。
序盤のレゼがデンジを籠絡しようと「気のある女」を演じているパートでは、思わずニヤけてしまうほど可愛いと感じるシーンがちらほら有りました。しかし、その後に実はデンジの心臓を奪い取るために言い寄っていたことが判明し、「目的のためにデンジの心を弄んだ嫌な女」という印象に変わりました。そのまま戦闘に突入し、特に印象は変わらず戦闘終了。
そして終盤、彼女の壮絶な生い立ちが明かされ、嘘だったはずのデンジへの思いが、真実になっていたことが仄めかされました。確かにここは彼女のことを好きになり得るシーンでしたが、私には響きませんでした。なぜなら、彼女の悲しい過去は「デンジを騙して殺そうとした(+多くの人々の命を奪った)」ことを正当化するものではなかったからです。私の解釈では、レゼは幼少期に非人道的な人体実験の材料にされていたが、その後何らかのかたちで解放され銃の悪魔の下につき現在に至る、という経歴になっています。そのため、上記の彼女が犯した悪行はあくまで自分の意思で行った(何者かに強制されたわけではない)という解釈になり、特に彼女を許す理由にはなりませんでした。
以上の理由から、最終的なレゼの印象は「可哀想な生まれだったけど普通に自業自得で死んだ人」という具合に落ち着きました。故に本作品の締めくくりは特に印象に残りませんでした。
☆天使の悪魔に物語上の必要性を感じなかった
本作品では彼の描写にそこそこの尺が割り当てられていましたが、特に見せ場のないままエンディングを迎えました。
無気力だった彼が、アキの献身に感化されてやる気を出すようになった、という成長物語だったと思いますが、それならばもっと分かりやすい活躍をしてほしかったです。言ってしまえば、今回の彼の功績はマキマのお情けによるものでした。
結論、彼にかけた尺の割に作品の面白さにほとんど貢献していませんでした。
☆アキ及びデンジの感情が微妙に理解できなかった
・アキについて
台風の悪魔に飲まれそうだった天使の悪魔を彼が捨て身で助けた後、天使の悪魔を抱き締めながらしおらしくなっていたシーンは、「いつの間にそんな情が湧いていたの?」と困惑しました。アキの中の天使の悪魔はせいぜい「親しくないけど仲間の1人」程度の存在だと思っていましたが、この場面ではまるで「大切な一個人」として接しているようでした。
このほんの少しの解釈違いにより、没入感が削がれてしまったのです。
・デンジについて
彼は物語冒頭で「俺は俺のことが好きな女を好きになっちまう」という主旨のセリフを言っていたため、レゼの好意が嘘だと分かった時点で、彼のレゼへの好意は冷めるものかと思っていました。しかし、実際はそうならなかったです。
この点に関しては、冒頭で述べていた前提条件を覆すほどに、レゼとのひと時が彼にとって特別な時間だったのだと解釈を改めることで、ひとまず飲み込みました。しかし、そこまでピンと来ていないのが本音です。
☆戦闘シーンに納得感・爽快感が足りなかった
戦闘シーンの作画は圧巻の仕上がりで、その点は素直に素晴らしいと感じました。しかし、目まぐるしく変わる戦況には理解が追いつかない場面も多かったです(常人を置き去りにするスピード感はある意味で正しいと言えますが)。
特に不満だったのは台風の悪魔を撃破するシーン。あのシーンは見栄えこそ派手でしたが、どのタイミングでどのようにして討伐できたのか明確に理解することができませんでした。また、台風の悪魔が無抵抗であっさりやられたことや、戦闘中にレゼが一切干渉してこなかったことも気になりました。以上のことから、納得感・爽快感に欠けていたように感じました。
この後のレゼとの決着シーンは、レゼを倒し切るようなもの(=爽快感を感じさせるような場面)ではなかったため、台風の悪魔のタイミングでしっかりとスカッとさせてほしかったです。
以上の理由から、私は本作品にイマイチのめり込むことができなかったのだと分析しています。作画の躍動感や、ネズミの寓話を絡めた丁寧な心理描写などから、本作品の質の高さを何となく窺えましたが、それらは私の嗜好を満たすには不十分でした。
最後に、本作品の個人的なピークは、チェンソーマンがビームを足として使うと言い出したシーンでした。バカみたいだけどどこかイケそうな気がするのが可笑しかったです。
レゼを「悲しい過去を持つが、現在はなんらかで解放され自由意思での悪行による自業自得」と解釈されていますが、
実際のレゼは「チェンソーの心臓を奪う」任務を受けたソ連のスパイです。学校の屋上で上空を通り、最後の海で去っていく飛行機は「監視」を示唆しており、「任務に失敗したから人目のつかない場所に逃げる」という内容のセリフもあります。ターゲットであるデンジの、自分と似た境遇に気づいて本当に好きになってしまった。最後までモルモット人生だったレゼが過ごした最初で最後の青春には嘘はなかった、と気づいてあげると感じ方も少し変わってくるかと思います。
天使とアキの関係シーンに関しては、映画単体として見ると概ね同意見です。ただ原作の続きもあるため、この時系列で新バディとしての関係性や歩み、心境の変化を描く必要性があったのだと思われます。
デンジの「俺は俺のことが好きな女を好きになっちまう」は好きになるときの初期条件であって、冷める時の反対条件に必ずなるとは限りません。実際の恋愛も一度好きになってしまったら、思い出とともに好きな理由や一面も増えていくことがあるかと思います。
戦闘シーンに関して、実は原作では台風の悪魔はもっとあっさりやられるので、映画は長尺でむしろ個人的には親切に感じました。レゼが干渉しなかったのはボムと台風の性質上の相性の悪さがあったと思われます(火薬と水)。16歳ばかデンジのひらめき勝負なので、高度な頭脳戦による納得感や王道漫画の爽快展開をチェンソーマンに求めすぎるのは少し野暮かもしれません。
作品に求めるものや感じ方は自由です。丁寧な分析で素敵な感想だと思います。
終盤、レゼは「任務に失敗したから誰にも見つからない場所へ逃げる」という主旨の発言をしています。つまり「チェンソーの心臓を奪え」とレゼに命令した人間もしくは組織がいて、失敗した以上自分も命を追われる立場であるということが示唆されています。なのでレゼに対して「自業自得」と言うのは解釈違いです。
天使への感想は私も感じました。私は原作を現在進行形で追っているので天使とアキの関係性は理解している上で鑑賞しましたが、それでもこの作品を映画単体として観たときにこのシーン浮いてるな、と感じてしまいました。アニメ勢やこの映画がチェンソーマン初見の人なんかは余計にそう感じるのではないかと思ってましたが、やはりそうですよね。
あと、デンジはチョロチョロ人間なので一回好きになった女性はなかなか好きじゃなくなれません。本人も後日自分で言ってますが、チ○チ○でしか物を考えられません。なのでレゼのように可愛くて自分のことを好きっぽくて一緒にデートして裸でプールを泳いだような女性のことは何をされても基本的に嫌いになどなれません。なぜならチ○チ○が好きと言っているからです。もしストーリーを今後も追われるようであれば、ご参考までに。
映画.comは誹謗中傷のようなレビューが多いですが、しっかり考察して見られてるみたいで個人的な意見ですがちゃんと感想が考えて書かれてるので素晴らしいと思います。
根拠を持って星をつけるのは納得できます。
根拠や考察がなく、なんなら寝てて低評価をつける人がいるのでそういう人は創作者にも批評を見る人にも失礼だと思いますので。
・レゼは謎の組織に飼われている
・表組織に飼われているデンジと似た境遇
・敵対組織なので仕事はしなきゃいけない
・しかし似た者同士本気で好きになってしまい
・二つの道どちらを選ぶかデンジに聞くも断られ
・フラれてキレながら大バトル
・戦い終わって今度はデンジから駆け落ちを誘い
・レゼは一旦は1人で逃げる事を選択
・しかし逃げ切る直前に考え直してデンジの元へ走ったが…
・しかしその全てをマキマに盗聴されていて…
というのが分からないと面白さ半減してしまうかもですね。アニメ1期の情報しか得ていない状態だとそのような感想になるのも仕方ないかな、と思います。
分からなかった、理解しにくかった部分を明確に分析されてて凄いです。
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