「コメディ映画としてはかなり推せる良作。今週おすすめ。」ラブリセット 30日後、離婚します yukispicaさんの映画レビュー(感想・評価)
コメディ映画としてはかなり推せる良作。今週おすすめ。
今年124本目(合計1,216本目/今月(2024年3月度)42本目)。
(前の作品 「成功したオタク」→この作品「ラブリセット 30日後、離婚します」→次の作品「ゴーストバスターズ フローズンサマー」)
韓国にも協議離婚というのがありますが、そのときに日本と異なり「熟慮期間」というのがあり、その熟慮期間の間に起きたトラブルを描く、一種の「コメディ映画」に分類されます(なお、この点、日本とのかかわりについて後述。採点参照のこと)。
韓国で「実際に」存在する制度をテーマにしたものとはいえコメディ映画の要素は強く、映画館でみたときも95%埋まりで笑いが絶えなかった映画です。
結局のところ、この映画はコメディ映画には属するので深い理解を要求するという点は一部にありますが、あまり何も考えずに見ることができるという点でおすすめといったところです(大阪市で韓国映画といえばシネマートですがそうではなく、シネマートの韓国映画は何らか深い知識を要求する映画が多いものの、この映画は余り多くの知識は要求されない)。
他の方も触れている通り、日本でもこの熟慮期間というのはあっても良いのではないのかなぁ、と思った一人です。
採点に関しては以下まで考慮しました。
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(減点0.3/主人公の一人が弁護士であるのに一部の発言が変)
もっとも、記憶喪失ものなので、「一部の発言が変」といってもどこまで突っ込むのか微妙な点はあるものの、日韓の民法で共通の総則にある心裡留保、錯誤(共通錯誤)が問題になる映画で、そこまで主人公が突っ込まなかったのは展開を優先したものと思います。
また、「時間ずらし」描写が多いため、受験時代に「法典」で勉強をしているシーンがありますが、これは日本でいえば「コンパクト六法」や「模範六法」などに代表される「六法」の類のことです(日本でも「ナポレオン法典」といった語で一部残りますが)。
ここは字幕上配慮が欲しかったかなというところです。
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(減点なし/参考/日本と、この「熟慮期間」との関連)
韓国にはこの制度が存在しますが、日本には適法に在住する在日韓国人の方も大勢います。しかし彼ら彼女らは適法に在住する前提で、一般の取引ほかは日本民法の適用を受ける一方で、身分法(民法の中でも家族法と呼ばれる分野。婚姻離婚、相続ほかのこと)は韓国民法の適用も受けます。つまり、この制度の影響を受けます(韓国に限らない。これら身分行為は一般に外国人の母国の規定と滞在国(ここでは、日本)の規定を見て、より「厳しい」ほうの適用を受ける)。
ここで日本でこの問題が適用されるのは、夫婦の一人が韓国人だとして、もう一方が「もう一方も韓国人」「日本人」「これら以外の外国人」とで処理が全然違います。あまりにも違いすぎるので、これらを扱う行政書士事務所ほかでも「この形態しか扱っていません」というところが多いです(「これら以外の外国人」の類型ではその他国の法律まで参照する必要があって専門性が高すぎる)。
ところで日本でそうした当事者が離婚を申し出る場合でも、韓国の家裁に実際に行くのではなく、総領事館に出頭する(かつ、映画内でも描かれるように90日後の再確認)で代用されますが、この「審判」(というより、聞き取り)は裁判に準じるものですから韓国語でのみです。ここには行政書士も弁護士も通訳者も入れません。ですが、「一方が日本人」「一方が外国人(韓国人でも日本人でもない)」だと、「日常会話はできるが、裁判になるとそこまでの会話力がない」方がそこそこ出ます。
そうした事情があるので、その「一方の当事者」が総領事館に来ないといったことがあります。日本×韓国人のカップルの場合でも、「日本での離婚届」は協議離婚なら届け出をするだけですが、この「総領事館での聞き取り調査」自体を知らない方も多いし、かりにいても、裁判に準じるこうした場所での韓国語でのやり取りに対応できないという実際上の状況が起きますが、そうすると「重婚状態が生じる」といった問題が発生して、「ある程度」問題となっている部分があります(もちろん、日本では総領事館がこれらを扱うものの、そうした事情は知っているので、事情を説明すれば「当事者と連絡が取れない」ことの客観的証明を出せば考慮してもらえることが大半)。
実は日本でもこの問題は実際に起きるので、韓国映画の韓国の制度を扱っている映画なのだろうと思うと、実は違ったりするわけです。
※ 上述した通り、この「熟慮審判」は当事者以外誰も入れないので(弁護士も行政書士も入れない)、弁護士も行政書士も「文章の作成」しかできません(せいぜい、指定日に備えて今のうちに韓国語教室に通ったらどうですか?くらいしか言いようがなかったりする。もちろん、文章の作成はこれらの職業はできますが、総領事館に出すという程度の韓国語のレベルがあることは前提になるので、できる方がかなり限られる)。