「【”茶香服をする僕を見ていた美しき人”哀しくも美しきピアニストを演じた松下奈緒さん自身が奏でられた美しきピアノ曲の演奏シーン及び、緑豊かな茶畑と青き空に乾いた心が癒され、潤うデトックス効果ある作品。】」風の奏の君へ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”茶香服をする僕を見ていた美しき人”哀しくも美しきピアニストを演じた松下奈緒さん自身が奏でられた美しきピアノ曲の演奏シーン及び、緑豊かな茶畑と青き空に乾いた心が癒され、潤うデトックス効果ある作品。】
ー 今作は、岡山県美作の緑あふれる茶畑や、哀しくも美しき真紅のドレスを纏い自身でピアノを奏でるヒロイン、リカを演じた松下奈緒さんの姿や、茶葉屋に生まれたために類稀なる茶の味を見極める舌を持った兄弟、山村隆太演じるジュンヤと杉野遥亮演じるケイヤの物語である。
そして、シンプルなストーリー故に、ストレートに三人の恋愛模様が心に響く作品でもある。-
◆感想
・冒頭、リカが白いドレスに白い帽子を被って橋上で、川と美作の山並みを見ているシーン。風が吹き帽子が飛ばされ振り返るリカの表情にまずは軽くヤラレル。
松下奈緒さんを映画で拝見するのは初めてであったが、実に美しい方である。
・ストーリー展開はシンプルで、東京に住むリカが元恋人ジュンヤのいる美作を訪れ、ジュンヤの弟で高校生のケイヤがその姿に見惚れる時から始まる。
そして、2年が過ぎ、再びリカがピアノリサイタルツアーで訪れるが、不治の病に侵された彼女は演奏後に倒れてしまう。
ー ご存じのように、松下さんはピアニストでもあるので、劇中ピアノを弾く全身の姿が映される。
多くの映画では、ピアノを弾く指と演奏者を演じる俳優を映すショットは交互に描かれるが、今作は松下さん自身がピアノを奏でる姿が観られるのも、僥倖である。そして、エンドロールで流れるクレジットを見ていると、劇中奏でられたピアノ曲が松下さん自身が作曲された事が分かるのである。天は二物を与えるのだなあ、と思ったモノである。-
■リカに恋心を抱くケイヤが、彼女の心を知りながら茶香服を披露し、見事に5種の茶の産地を言い当てるシーンから、町おこしのために市の主催で茶香服を行うシーンへの繋がりの中で、ケイヤを演じる杉野遥亮のリカへの恋心と、彼女に対しつれない態度を取るジュンヤとの関係性が巧く描かれている。
そして、ケイヤやその友人達がリカのピアノリサイタルを彼らの母校で行うシーンで、真紅のドレスを纏い自身でピアノを奏でるリカを演じる松下奈緒さん及び彼女が作曲した曲の美しさに癒されるのである。
更に、その演奏途中で約束したはずの兄ジュンヤが会場に来ない事に気付き、家に走って戻るケイヤが兄を詰問するシーンで、ジュンヤが”俺は、逃げたんや。”と涙ながらに告げ、引きずられるようにピアノリサイタル会場に来て、リカの演奏する姿を見て泣き崩れるシーンは実に沁みた。
ジュンヤがリカが不治の病である事を知っていた事が分かるシーンだからである。
<ラスト、ジュンヤが茶葉屋で仕事をする背後には、茶畑の中で白いドレスを着たリカの写真が飾られている。そしてケイヤは友人達に見送られながら、美作を旅立つのである。
ジュンヤとケイヤの両親が急逝した中、二人と茶葉屋を守って来た祖母を演じられた池上季実子さんの矍鑠とした御姿を拝見できたことも僥倖であった。
今作は、哀しくも爽やかな余韻を残す美しい物語だと思います。>