「いらっしゃいませ。ここはふしぎな駄菓子屋、銭天堂。幸になるか不幸になるかはお客様の心次第でござんす」映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
いらっしゃいませ。ここはふしぎな駄菓子屋、銭天堂。幸になるか不幸になるかはお客様の心次第でござんす
通り過ぎてしまいそうな裏路地の先に、ひっそりとある駄菓子屋。
そこにはある噂が…。
店のお菓子を食べると呪われ…。
…え? 違う?
中田秀夫監督だけど、ホラー要素は一切ナシ。
アニメ化もされているベストセラー児童書を実写映画化した良質ファンタジー。
いや本当に。中田さん、Jホラーの名手なんて言われながら近年の駄作ホラー群なんかよりずっと良かったぞ。
その駄菓子屋に行けるのは謎めいた店主・紅子曰く、“幸運のお客様”だけ。
お客様がそれぞれ持つ望みや願い。
テストでいい点取りたい。
クラスの人気者になりたい。
モテモテになりたい。
センスを良くしたい。
画が上手くなりたい。etc
お客様にぴったりのお菓子を紅子が選んでくれる。
代金はワンコイン。お客様がお持ちの○○年の○○円で。
そう。そこは、願いを叶えてくれるふしぎな駄菓子屋“銭天堂”。
ちょい訂正。またまた紅子曰く、幸運になるか不幸になるかはお客様次第。
銭天堂のお菓子を食べて幸運になったお客様はたくさん。
その一方、不幸になったお客様も。
ふしぎなお菓子を貰ってそれだけで喜んじゃダメ。しっかり説明を読み、用途を間違えない事。でないと…
特に、別店から勧誘されちゃ絶対ダメ!
銭天堂のライバル店“たたりめ堂”。
聞くからに怪しい店名、見るからに怪しい店主・よどみ。
ここでもお菓子を提供してくれる。しかも代金は後払い。
でも、そのお菓子というのが…。これまた怪しそう。
が、銭天堂のお菓子で失敗したお客様は藁にもすがる。
たたりめ堂のお菓子を食べて、今度こそ…。
否。さらに不幸に…。
よどみがお代を頂戴しに来る。お代は、客の悪意。妬み、苦しみ、嫌悪…。
銭天堂が幸にも不幸にもなるなら、たたりめ堂は絶望させて悪意を摂取。
軽い気持ちで食べちゃダメ。気を付けないと。
それでもふしぎなお菓子を食べたいお客様は後を絶たず。
学校でも噂で持ちきり。銭天堂は本当にある。銭天堂のお菓子を食べてラッキーになった。etc
新米教師・等々力のクラスでも。
眉唾と思っていたが、生徒たちだけじゃなく、密かに想いを寄せている大学の後輩でファッション雑誌勤めの陽子や美大を目指す妹・まどかにも銭天堂のお菓子と、たたりめ堂のお菓子…。
等々力の身近でも、ふしぎな駄菓子屋の幸か不幸が…。
昔馴染みの駄菓子屋を題材にした日本ならではのファンタジー世界観が愉しい。
おかしなお菓子がいっぱい。ネーミングセンスもナイス。ドラえもんの道具みたい。
まさしくそうなのだ。ドラえもんの道具も最初は便利だが、調子に乗ると…。
そこに付け入るよどみのお菓子。ちょいダークな感じは『笑ゥせぇるすまん』っぽい。もっとアダルト&ホラーにすれば昔少年ジャンプで連載されていた『アウターゾーン』か。(ふとそんな事を思い、見ながらミザリィ誰が演じられるだろう?…なんて思ったり)
願いが叶えられたお客様のコインは金色の招き猫に。キュート! お菓子作りにせっせせっせ。幸運は幸運へ。
願いを叶えられなかったお客様のコインは“不幸虫”に。よどみがそれを捕まえ、不幸の味たっぷりのお菓子に。不幸は不幸へ。
人の数だけ願望がある。それはこの世から人が居なくなるまで尽きる事はないだろう。
願望や欲は決して悪い事ではない。幸に転じるか不幸に転じるかは人それぞれ次第。
別に紅子は人を試している訳ではない。きっかけを与えるだけ。
劇中でも結果は各々だが、特筆だったのは等々力の妹・まどか。
友人より画が上手かったが、いつしか友人の方が画が上手くなり、小馬鹿にしてくる友人を妬むように。
そんなまどかが望んだお菓子(願い)は…
これこそ本当に幸になるか不幸になるかの決断。
幸になるかは人の心。綺麗な心。
しっかり教訓が込められている。
美人さんの天海祐希が特殊メイクを施して、ふくよか体型の年齢不詳の店主に。
それもユニークだが、今回の一番の儲け役はよどみに扮した上白石萌音。ピュアな役が多い彼女の珍しい悪役もまた乙!
しゃがれ声の大橋和也やちとオーバー演技の伊原六花は気になったが、子供たちはナチュラル。舞台は現代なのに、雄太役がメチャ昭和少年風でウケた。
原作はまだまだキャラやエピソードを取り揃えてあるとか。
こりゃあもう!
次の開店を楽しみにしているでござんすよ。