「予想外の結末に、共感も、納得もできない」六人の嘘つきな大学生 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)
予想外の結末に、共感も、納得もできない
登場人物たちが在籍しているのが、実在の大学で、しかも、東京六大学のうち、東京大学が一橋大学に置き換わっていたのは、何か意味があるのだろうか?
確かに、それだけで、6人の大学生が優秀であることは分かるし、それぞれのキャンパスの位置が重要な意味を持つというシーンもあるのだが、それほどリアルな話でもないのに、ここだけが生々しい設定であることに、どこか違和感を覚えてしまった。
物語としては、「就職」という同じ目的のために親交を深めた者たちが、互いに疑心暗鬼に陥り、不協和音を響かせていく様子は、それなりに面白い。
冒頭の「お願い」のくだりがあったので、赤楚衛二が怪しいと思われた時点で、黒幕は浜辺美波に違いないと確信し、8年後に「やっぱりそうか」と思っていたら、別の人物が真犯人だったという流れになって、そうしたミスリードも中々に楽しめた。
ただ、赤楚衛二が、あの場で自分が犯人だと告白した理由はよく分からないし、その後、皆に復讐しようとして、過去の所業の裏付けを取ろうとしたという心情も理解に苦しむ。そんなことをするくらいなら、はじめから嘘の告白などしなければ良かったのではないだろうか?
真犯人の動機が、自分が内定を貰うためではなく、人事部の無能さを証明するためだったというところにも、取って付けたような唐突感を覚えざるを得ない。そんな理由のために、あんなに手の込んだことをするとは、とても思えないし、その挙げ句に採用された人物は、8年後に相当な業績を残しているようなので、結果的に、人事部(会社)を助けただけだったのではないだろうか?
さらに、6人全員に後ろめたい過去があるということも、1人の人間が、それらを短期間で探り出せたということも、ご都合主義としか言いようがない。
確かに驚きの結末ではあったが、ただ、観客の予想を裏切る真犯人を明らかにしたかっただけのようにも思えてしまい、共感することも、納得することもできなかった。
6人の若手俳優の演技合戦は、確かに見どころにはなっているものの、赤楚衛二のオーバーな演技は「ミスリード」のために致し方なかったとしても、終盤の佐野勇斗の取り乱し方は、明らかに過剰で、思わず引いてしまった。
ありがとうございます。
いくら、不毛な言い争いに嫌気が差し、自分が疑われていることに絶望したのだとしても、犯人になりすますことはないだろうと思っていましたが、原作を読むと、そこのところが理解できるのですね。
でも、やはり、映画を観ただけでも分かるようにしてもらいたかったと思ってしまいます。
波多野が嘘の自白をしたのは、状況を覆せない諦めと、嶌を内定させるためだったのですが…
映画だけだと分かりづらいですよね。
原作では波多野視点で描かれていて、この時“犯人”にも気付いています。
それを嶌だと誤認させる描写も秀逸だったので、原作は是非お奨めしたいです。