劇場公開日 2024年9月13日

「草野みたいな性格の映画通に酷評されている印象」スオミの話をしよう おきらくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5草野みたいな性格の映画通に酷評されている印象

2024年10月1日
iPhoneアプリから投稿

酷評の嵐だったので観る予定は無かったのに、どうしても観なければいけない事情が発生。
歯医者を嫌がる子供の気分で劇場に足を運び、期待値ゼロで鑑賞。

冒頭から役者の大袈裟な演技にげんなり。
ずっとハイテンションで動き回り、セリフは説明過多。
舞台の演出ならこれでアリなのかもしれないが、映画でこの演出はしんどい。

そういうわけで映画が始まってからしばらくは冷めた目で見ていたが、物語が進むにつれてストーリーは悪くないように思えてしまった。

貧困家庭で育った女性が安定した生活を手に入れるため、自我を捨てて男の望む女性像を演じ続ける人生。
映画自体はコミカルな雰囲気なのに、何とも言えない切なさが漂う。

スオミが結婚する男たちはイケメンだったり社会的地位が高かったりしていて、世の中の多くの女性が結婚相手に選びたくなるであろうステータスの持ち主たち。
スオミもこの人と結ばれれば幸せになれるはずと信じて(たぶん勢いで)結婚。
ところがその後、結婚前は気にしていなかった夫の負の面が強く現れるようになり、一緒にいても辛いだけの夫婦生活に突入。
そして、離婚。

これってスオミに限らず、世界中どこにでもありそうな話に感じた。

本性最悪な男と付き合いたい女性はいないと思う。
ところが、付き合う前から男の本性を見抜くことは難しい。
そんな女性に向けて、この映画は「こんな男とは付き合うな!」と教えてくれている気がした。

具体的に言えば、
①生徒に手を出す教師
②マルチまがいの商売をしている実業家
③検挙した異性に手を出す警察官
④人妻に手を出すイケメン
⑤ファンに手を出す有名人

こういう人たちはどんなに印象が良くても安易に付き合うのは危険、と個人的にも思う。
モテない人間の歪んだ考えかもしれないが…

パワハラ全開の芸術家・寒川を見ていて、今世間を賑わしている兵庫県知事のことを連想せずにはいられなかった。
この映画の登場人物たちは寒川から恫喝されても臆することなく、むしろ寒川のことを軽くあしらっていて、そこはこの映画の素晴らしいと思ったところ。
でも現実世界で兵庫県知事にそんな態度を取ったら、「なんだお前その態度は!!」みたいなウザいことになるんだろうな…

最後のミュージカルと居酒屋のエピソードは完全に蛇足。

この映画は(西島秀俊演じる)草野みたいな性格の映画通に酷評されている印象だが、舞台やテレビドラマが好きな人には楽しめそうな内容に感じた。

おきらく