「なるほど、これは確かに…」スオミの話をしよう romiさんの映画レビュー(感想・評価)
なるほど、これは確かに…
三谷幸喜作品はこれまであまり触れたことがなく(子供のころ古畑任三郎はよく見てたけども)、新作映画と聞いても特に観に行くつもりはなかったのですが、
あまりにも低評価レビューばかり流れてくるので、「こんな豪華キャストで番宣しまくりの大作映画で星平均2.8って何?見たことないが?しかもあの三谷幸喜なのに??」と逆に気になってきて、とうとう行ってきました。
私は地方住まいということもあり観るのは映画やドラマばかりで、舞台はほとんど観劇したことがありません(東京や大阪など都会の文化というイメージ)。なので、各所のレビューで、舞台を映画にしただけみたいなものを見てもいまいちピンときてませんでした。
でも、いざ映画が始まったらなるほどと。色々なカットはありますが、基本的に物語の舞台は現夫の豪邸のみ。スオミがいなくなった家に過去の夫たちや他の人達がやって来たり出ていったり。ところどころ挟まる回想で他の舞台も出るものの、基本はずーっと家のリビングに主要人物全員がいて、会話劇が繰り広げられる。カメラはほぼ固定で、ひとりがアップになることもない。常に複数人の表情や動作が見えている。
なるほど演劇的ってこういう意味か、舞台って確かにこんな感じのイメージだな〜私にとっては新鮮だし斬新だし面白いな、レビューで色々言われてたからハードル下がってたのもあるかもだけど、普通に楽しいし観てよかったな〜やっぱり百聞は一見にしかず、、
なんて中盤までは思っていました。
ところが後半、だんだんつらくなってきた…
キャラクターはみんな最後までよかったんですよ。夫たちは皆いろいろ難あり男だけど可愛げがあって、スオミも食えない女だけどやはり魅力的。
エンケンさんって昔からですが本当にヤクザみたいなコワモテなのに、情けない男って感じのコミカルな演技がほんとお上手。コミカルといえば西島さん、クールで堅物って感じのキャラがぴったりハマるイメージがあったけど、こんなコミカルな演技できるんだ!という発見。楽しかった。
脚本もやはり三谷幸喜さんということでしっかり練られているし面白い。引き込まれるしテンポもいいし、見ていて飽きない。
…と思っていたんですが。
私が最初にうーん…となったのは、セスナのシーン。なんだか急に酔っぱらいおじさんたちがワチャワチャはしゃいでる姿を見せつけられているような気持ちに…。上昇気流のくだりなど最たるもので、まだコントとかコロコロコミックで見たら面白いと思えるのかもしれないけど、実写映画でやられるとまあキツい。
ここで一気に気持ちが冷めてしまったからか、豪邸に戻ってからも、挟まれるギャグや演出が、全く面白いと思えなくなってしまったんですよね。前半は小ネタもそれなりに面白く感じていたのに。なぜだろう? 前半とは質が変わった(作り手側の問題な)のか、セスナシーンのせいで気の持ちようが変わってしまった(受け手側の問題な)のか?
古畑のセルフカバーっぽいところや、ぐるぐる回るところなど、学生が作った内輪ノリ演劇を見ているような、あるいは笑いのツボが違う昭和のコントを見ているような、「それ面白いと思ったのかもだけどすべってますよ…」という気持ちに。
最終的な感想は、豪華な演技派俳優陣を脇に添えた長澤まさみコスプレ展覧会、みたいなもので落ち着いてしまいました。長澤まさみの無駄遣い…と(大変失礼ながら)正直なところ思ってしまいました。コンフィデンスマンと似ている構造のはずなのに何がこんなに違うんだろう。
よく分からない。
確かに舞台なら面白かったのかもしれない、という気もする。(映画館の大スクリーンではなく、役者と観客の距離が近い小劇場みたいなところで同じ脚本を見ていたら、一体感も良い仕事をして楽しく笑えたのかもしれない。)
あとは、年配の客はけっこう笑っていた感じがしたので、三谷さんの笑いが時代(あるいは中年以下の年代)に合わなくなっているのかもしれない。
どなたかの分析を見てみたい。
『男たちを手玉に取って風のように軽やかに生きていく女性』のストーリーなんでしょうが、冷静になって考えると、どこかで誰かに殺されても文句言えない悪女みたいにも思えてきた。長澤まさみが演じたから愛嬌あってどこか憎めない小悪魔系美女に見えたけど。
長澤まさみのファッションはとても可愛くて素敵で女性として憧れました。