「The film of Masami, by Masami, for Masami」スオミの話をしよう ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)
The film of Masami, by Masami, for Masami
「みんな大好きよー!」
大富豪の詩人・寒川(演:坂東彌十郎)の妻・スオミ(演:長澤まさみ)が突如失踪する。スオミはバツ4であり、彼女の行方を追うために集まった4人の元夫(演:①遠藤憲一②松坂桃李③小林隆④西島秀俊)と関係者(演:瀬戸康史、戸塚純貴)。しかし5人の夫達の口から語られるスオミという人物はそれぞれまるで異なるものだった。このスオミという女、果たして何者か?そしてどこに消えたのか?
三谷幸喜監督・脚本最新作。今回は東京サンシャインボーイズを主とした「三谷組」+「鎌倉殿の13人」のカラーが濃い。というか「鎌倉殿〜」での出会いに味をしめて本作が製作されたとさえ感じる。そして新しいスパイスとして西島秀俊、松坂桃李、戸塚純貴を迎えた。
長澤まさみの長澤まさみによる長澤まさみのための映画(The film of Masami, by Masami, for Masami)で、とにかく長澤まさみに色々させたいから映画を1本作っちゃいましたという三谷幸喜の欲望を前面に押し出した作品。「さすがにふざけすぎでは?」と少し引いてしまう場面もあったが、まあまあ楽しめたし何より長澤まさみがかわいい。昔はそんなに好きではなかったが知らない間に綺麗になった。そして終盤の髪の毛を使った演技は素晴らしい。
僕は三谷作品は基本的に好きだし、「古畑任三郎」に至っては大ファンであるが、こと映画に関しては「作・三谷幸喜」に一抹の不安をおぼえる。というのも、三谷幸喜自身が言うように「大脱走」(1963)のようなスター勢揃いで何かやるのが傾向として強く、そうすると2〜3時間という映画の限られた枠では不完全燃焼に終わりやすいからだ。また、自身の創作の根本が喜劇であるため、真剣なシーンで笑いに走ってしまい話の腰を折る場面がしばしば見受けられた。だから常々三谷作品を観るときは「どうか三谷幸喜がスケベ心を出さずに最後まで書き上げていますように」と祈るような気持ちになったものだ。
今回は所謂「羅生門スタイル」のコメディになるわけだが、これまでの羅生門スタイルはひとつの出来事に対して複数人が証言するもので、事実そのものは動かない。しかしこちらでは1人の人物像について複数人が証言するため、矛盾していながら誰も嘘をついていないという状況があり得る。これに笑いの要素が加えられたため話が脱線しがちで、「もう15分削ってくれれば...」という気持ちはあるにはあったが、でも長澤まさみが綺麗だから大目に見よう。まあもう少しシリアスでもよかったかな、面白かったけど。
ヘールーシンキヘルシンキ!ヘルシンキイイイイイイイ!