「堂々の第一部完」キングダム 大将軍の帰還 よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
堂々の第一部完
ラストシーンでハリウッドの大作映画を見終わった後のような感覚を覚えた。大将軍の矛を受け取り、悲しみを乗り越え前に進んでいくその姿にこれからのこの実写シリーズの無限の広がりを感じた。
大沢さんはインタビューで第1作目の時に制作陣が「馬陽の戦いまでやるのが夢だ」と言っていたとおっしゃっていた。その夢が叶えられたのはいうまでもないことだが、制作陣のその熱量がとても伝わってくる作品だった。1も2も3もすごい。ただ、今作はその時以上の熱量が作品に込められていたように思う。そしてそれが今作を前作までを超える神作に昇華させている要因ではないだろうか。
そしてそれを何千倍にもよくしている役者陣の演技。特に印象に残るのは王騎と李牧。
李牧はひたすらにかっこいい。本当にかっこいい。かっこいい、それしか言えない。落ち着き払った中に滲む強者感、そして主人公と敵対する関係にあり、王騎を殺すという立場にありながら戦は嫌だと言って彼には彼の信念があり、物語があることを匂わせる演技。小栗旬という役者がこれまで積み重ねてきた全てのものが発揮されているような、そんな役だった。
王騎は大沢たかおさんの神品とも言える名演が光る。将軍としての威風堂々たる姿と強者を前にして猛将の血が滾る具合、その全てがかっこいい。更にその両肩にこれまで死んできた数万の仲間たち、自分が殺してきた数十万の兵士たちの影が見えるかのような姿は主人公が憧れるに足る六大将軍の風格が現れて素晴らしい。王騎に関してはこれまでの3作品で積み重ねてきた主人公が憧れる大将軍というキャラ付けが結実していたように思う。
龐煖はそのラスボス感がすごい。刃衛のようでその時とはまた違う、ひたすら武を極める不気味な強者の風が見えた。
新木優子さんの摎は王騎の前で普段の武将から幼馴染の女の子に戻る部分が最高に上手い。
信は仲間の死に取り乱していた童が王騎の矛を受け取り全軍の士気を上げるまでに成長するその過程が山崎賢人さんの熱量の高さと共に伝わってきた。
他には岡山天音さんの尾平。弟の死を知った後の演技は筆舌に尽くし難いほどの名演。
その他にも綺羅星のような数々の役者たちの演技合戦が楽しめて、それはこれまでの4作でキングダムが積み重ねてきたもののまさに集大成といえるものであり、それがこの作品に厚みをもたらしていたように感じる。
脚本もよくできてる。これまでの3作品で描かれてきた将軍とはなんたるかというものに今作で最後のピースを嵌めて完成させていた。そのピースを序盤の夜襲からの一連の流れで描いて、最後にもう一度王騎を返さんとする信らの姿で補強するのも素晴らしい。
加えて監督がYoutubeにアップされてるインタビューで語っていらっしゃった“馬”の使い方。確かに上手かった。戦場を駆け回るその疾走感はこれまでのどんな時代劇でもなかった感覚で戦争というもののスケールのデカさを表現するのに一役買っていた。このキングダムでは個人同士のドラマもさることながらしっかりと戦争が描かれているという点でもポイントが高いと個人的に思う。
邦画史に確実に深くその名前を刻んだキングダムシリーズ。これで第一部が完結したということで次は第二部ですね。続編待ってます(圧)