「我々の背に胸に常に、天下の大将軍と『キングダム』はいる」キングダム 大将軍の帰還 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
我々の背に胸に常に、天下の大将軍と『キングダム』はいる
前作『~運命の炎』のED後、いつもならある次作予告映像が無く、ヒヤッとしたもんだ。
来年公開じゃないの!? 次、数年空くの!? あのラストで!? そんなご無体な!
ちゃんと今年も公開。安心安心。
だって、あのラスト。続きが気になって仕方ない。
本当に近年最も楽しみとなった邦画シリーズ。いや、洋邦併せてのシリーズとしても。
信が初めて隊長となり、率いた“飛信隊”の初陣の大活躍直後、宴の席に現れた謎の男。武神、龐煖。
高台で戦局を窺っていた河了貂の前にも現れた謎の男。李牧。
彼らは何者か…?
これまで戦を第三者の立場から威圧をかけていた王騎。遂に戦場に繰り出し、秘められた過去も明かされる。“大将軍の帰還”とは…?
何やら今回で“最終章”とか“一区切り”の噂。どう締め括られるのか…?
期待値はシリーズMAX。それを見届ける時が来た。
改めて、これほどのペースとクオリティーとスケールとエンタメを魅せてくれる佐藤信介監督を始めとするスタッフ/山﨑賢人を始めとするキャストの皆々様に感謝と敬服と労いを。
皆さんの背には常に待ち望んでいるファンが居ます!
飛信隊の窮地。突如現れた一人の男に次々仲間が倒されていく。
本当に人なのか…? 龐煖の圧倒的な力。吉川晃司の存在感。
信と羌かいの同時攻撃も返り討ち。信は強烈な一撃で倒れてしまう。
その信を守る為に、仲間が盾になる。ここ、ジ~ンとしたなぁ…。
あわや!…の所へ、両軍の援軍が駆け付け、交戦。
飛信隊は信を守りながら逃げるが、万極が追う。追い詰められるも、散り散りに逃げる。信は尾到に託され…。が、尾到も深手を負っていた。
逃げ切り、少し休む。信も意識を取り戻す。
ボロボロの二人。出会った頃の思い出話。
あの頃は、まさかこんな闘いやこんな場所、こんな経験をするなんて夢だった。
だけど、夢じゃない。本当に俺たちはやった。
バカにしていた“天下の大将軍”も夢じゃない。なれよ、絶対に。
そう言い遺して、一度目は騙されたが、二度目は…。
戦は武勲を挙げるだけじゃない。辛い別れも。また一人、大事な仲間が…。
信は散った飛信隊と合流。一番悲しいのは兄・尾平だが、称えて笑ってやってくれ、と。
序盤の最大のハイライトは、三浦貴大が泣かせる。
そう、いつまでも悲しんではいられない。
王騎本軍と合流。百人隊の2/3の仲間を失ったが、この悲しみと死んでいった仲間の無念はこれからの闘いで勝って打ち消す。
自ら鼓舞する信と飛信隊。王騎にも活力みなぎる。
本当の闘いはこれから。秦軍と趙軍の本決戦…!
開戦はまず拮抗。が、蒙武一派が敵の誘いに乗ってしまい、拮抗は崩れた。
趙荘の包囲網に落ちた蒙武。助ける為に、王騎が進軍。
騰。ハッ。
今回王騎の参戦が話題だが、彼もまた。ずっと王騎の傍らに控えていた副官・騰もその力を見せ付ける。
王騎にも劣らぬ実力。騰、強ェ~! 要潤、カッケェ~!
大合戦の中、遂に相対す。王騎と龐煖。
いつも冷静沈着で穏やかでユーモアすら滲ませる王騎が怒りを露にする。その緊張感走る凄み!
今回最大の見せ場、王騎対龐煖。大将軍対武神。武の道を極めた両者の闘いは、熾烈。もはや常人に非ず。
激しくぶつかり合う大矛と因縁。
二人の因縁とは…? 関わるもう一人、摎とは…?
秦の王都・咸陽にて、昌文君が嬴政に明かす…。
かつての秦の六大将軍の一人、摎。
戦いの神に愛されたかの如く、その強さは六大将軍の中でも随一。
どれほどの猛々しい漢…? 否。摎は女だった。
そして、王騎の妻になる筈だった…。
初参加。ワンダーウーマンの如き新木優子。
その出生は複雑。知っているのは王騎や昌文君ら一部のみ。何故なら詳細を昭王から禁じられた。
嬴政の曾祖父に当たる昭王。摎は昭王の実娘。が、身分の低い生みの母が権力争いから守る為、密かに逃がす。託されたのが、王騎の父。
王騎家で召し使いとして育てられた摎。王騎とはその時から。
やがて王騎は将軍へ。摎も鍛練を積み、武勲を重ね、将軍に名を連ねるまでに。
何故摎は女でありながら将軍に…? 子供の頃交わした他愛ない約束。
将軍になって城を百個取ったらあなたの妻にして下さい。
その一途な想いが摎の強さの源。とは言っても子供の頃の昔の話。とっくに忘れているだろう。が…
お互い将軍になって忙しい身の中、久し振りに会う。その時…
後一つですね。
忘れてはいなかった。後一つ、百個目の城。それが、馬陽…。そこで摎は龐煖に…。
復讐に怒り狂った王騎に龐煖は討たれた筈だったが…、生き延びていた。
武神と恐れられた龐煖がこの時負った心の傷は深かった。宿敵を討伐する為に。
龐煖にも闘う理由がある。
趙軍にも。
秦軍にも。
信にも。
嬴政にも。
羌かいにも。
王騎にも。
戦争は多くの命を失わせる。残酷で、愚か。
が、人の数だけのドラマがある。絶対に負けられない理由がある。
不条理だが、それが胸熱くする。
王騎の秘められた過去が、悲恋とは意外な気も。
王騎も血と情を持った一人の人間なのだ。
怒り、憎しみ、悲しみ、熱き思い、情愛、人としての深み…。その姿に、しびれる。
王騎と龐煖、互角の闘い続いていたが、王騎が押し始める。
王騎の強さの源は…? 大矛に込められた仲間や死んでいった者たちの思い。摎の想い…。
決着が着こうとしたその時、何処からか地響き。
新たな趙軍。援軍…? いや、これこそ趙の真の主力軍。
この軍は一体…? 咸陽を訪れた楊端和が衝撃を告げる…。
北の果ての地で楊端和率いる山の民と対する筈だった北の大軍がすでに討たれていた。十万を越える屍の凄惨な光景がそこに広がっていた。
それを討ったのが、その趙軍。ひた隠され、誰もその存在を知らなかった。
もし、この大軍が参戦したら…? 戦局は一気に覆る。
それは的中した。予め予期していた王騎だが、それよりももっと早く。
優劣拮抗していた秦軍と趙軍だが、大軍の参戦で趙軍が圧倒的優勢に。
龐煖が趙の真の総大将と思われたが、もう一人脅威がいた。
穏やかな口調や飄々とした性格ながら、王騎を上回る天才/化け物と評される。李牧。
王騎の策も尽きた。
秦軍、絶体絶命。
しかし、この窮地だからこそ。
策が尽きたのならば、力技で強行突破するのみ。
ここからが、王騎軍の真の強さ。
決して諦めない。生きて脱する。
皆さんの後ろには、常にこの王騎が居ます!
その言葉に、信ら皆に再び力がみなぎる。
だが、“その時”が近付いていた。李牧の命で、一部の将が暗躍。
李牧の目的は、秦軍の壊滅ではなく、王騎を倒す事だった…。
激しい闘い続く中、趙の矢が王騎を狙う。
飛信隊の名に懸けて。敵の矢より早く信は飛び射ろうとするが…
届かなかった。
敵の矢と龐煖の大矛が王騎の身体を貫いた。
王騎が…。絶対無敵の大将軍が…。
信らでなくとも信じられない光景。
致命傷。もはや王騎の命は助からない。いつ尽きてもおかしくない。勝敗も喫した。
しかしそれでも、王騎は諦めない。屈しない。
信が王騎の馬に王騎を乗せ、駆る。
意識も朦朧の中、王騎は信にアドバイス。
戦局の中に、活路を見出だす。それこそが、将軍の見る光景。
信にも見えた。
戦線を離脱。生き延びた秦軍も続く。
深追いはしない李牧。趙軍も多くが死んだ。これ以上の味方の犠牲は出したくない。
指揮する者の残酷さと背負う苦しみ…。李牧も極悪人ではないような…?
多くの命を失った秦軍だが、それ以上の損失が…。
騰も長年支えてきた殿の元に合流。
あれほどの致命傷を負ったのに、馬に乗り、普段と変わらぬ立ち振舞い。
大将軍は最期の時も大将軍。
自分の死後、後を追う事を禁ずる。皆は生きなさい。
騰に託す。
蒙武に託す。
信に託す。
軍を、秦を、誇りを、矛を、熱き思いを、全てを。
王騎、逝く。
そこに悲壮さは無かった。光輝く陽光に照らされ、勇ましく荘厳であった。
出立前、王騎は嬴政にある事を話していた。
秦王…いや、“真王”としての在り方。手中に収めた国の民を虐げるのではなく、自国の民のように愛せ。
曾祖父、昭王からの伝達。王騎はそれを託されていた。支えたい新たな王に。
大沢たかおが全身全霊で魅せた体現。
その姿を瞼に、その思いを胸に、忘れはしない。
王騎。天下の大将軍!
王騎の死で負けムード漂うが、馬陽は守られた。趙軍の侵攻を防いだ。
俺たちは負けてはいない。胸を張って還ろう。王騎将軍と共に。
信が高らかに皆を鼓舞する。その姿は…。
サブタイトルの意味がここで明らかになるが、私はもう一つあると思った。
王騎は逝った。還ったのだ。愛した女性の元に。
大将軍の帰還。
見る前囁かれていた実写映画版はこれで終わり…?
ではないようだ。あくまで“王騎編”の最終章。いったんの区切り。
原作コミックもまだ遥かに続く。まだまだ語られる闘いがある。そしてその先に、天下の大将軍へ!
聞く所によると、近々第5作~第7作まとめての撮影が始まるという。
これまでの流れからすると…
1作目の後3年空けて第2作~今回までを一気に撮影して、連続公開。とすると次は3年後、2027年から連続公開か…? 10作まで想定しているらしく、あくまで予想だが2034年まで続く壮大な“王国(キングダム)プロジェクト”に…?
続報を待ちたい。
何はともあれ、今は…
この迫力。この興奮。この熱量。この感動。
『キングダム』という映画に、浸っていたい。