「後の世に託す思いは一つ」キングダム 大将軍の帰還 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
後の世に託す思いは一つ
毎回「キングダム」シリーズのレビューには「できる限りバカデカい大画面で観て来いよ!」と書いている。だから自分も、今回バカデカいScreenXで観て来た。
迫力がスゴイとか、臨場感がスゴイとかじゃなく、映画に覆い被せられ、飲み込まれるような体感で観る「キングダム」。
戦場の真っ只中にいるような、地鳴りすら感じる映像体験は早々ない。面白かった~!!
原作未読のまま観続けて第4弾。いつもはバーンと来てドーン!だの、語彙力よりインパクトに重きを置いた勢い9割のレビューを書いているのだが、さすがに最終章なので真面目に物語のことを書こうと思う。
熱血バカ・信と、カリスマ・嬴政の二人が軸となる中華時代劇であることに間違いはないが、第1作目から第4作目まで、必ずストーリーの主幹になるキャラクターがいて、彼や彼女を掘り下げることでアクションの中に一貫したドラマ性を持たせていた。
そして今作「大将軍の帰還」の真の主役はタイトル通り王騎である。
「キングダム」では長く続く戦乱時代に生きる人々の闘う理由として、「死んでいった者たちの思いを背負う」という気持ちが繰り返し示される。信の漂への思い、嬴政の紫夏への思いのように。
そして王騎には特別な人の思いと同時に、将軍として今までの戦闘で死んでいった将兵全ての思い、という巨大な過去からのバトンが頑強な双肩に乗っていることを真摯に描くエピソードだった。
そして、今まで背負ってきた思いを託すべく、信や嬴政を導く父のような母のような役割をずっと担ってきたように感じられたのである。
それぞれに伝えるべきことを伝え、見せるべき姿を見せ、矛とともに思いを託して果てる姿は涙なしでは見られない。
謎めいた大将軍・しかもインパクト抜群のキャラデザという難役を演じきった大沢たかおは本当に素晴らしい。激しい怒りも、血の滾りも感じさせながら、それでも高潔に大将軍らしく振る舞い、矛対矛のアクションも迫力満点。しかも美麗。
大沢たかおが王騎を演じきってくれたからこそ、「キングダム」という傑作シリーズが誕生したと言っても過言では無いだろう。
そして「キングダム」が抉じ開けた新たな日本映画の可能性、きっかけさえあれば歴史アクション大作を観てもらえるという可能性は、それを受け継ぐ次の作品へとその魂を託しているのだと思う。
大事なことなので最後にも言っておく。
「できる限りのバカデカい大画面で観て来いよ!」