侍タイムスリッパーのレビュー・感想・評価
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本物の侍を思わせる間合い
話題になっていて、去年からのロングランだと今さら知って鑑賞。『カメ止め』みたいな映画だと聞いて。
セリフと口の動きに違和感があり、また夜にしては明るすぎない!?と初っ端から不安に思ったが、内容はとても良かった。
自身のことはほとんど話さず、記憶喪失の現代人として生きているのもちょっと無理があったような。
京都撮影所での撮影ということで、周りの役者さんもしっかり京都訛り。自分は知らなかったが、京都の役者さんも出ていたとか?
タイムスリップもので、同じタイミングでタイムスリップしたのに、少しズレた年代に飛ばされて再会するのがなんか新鮮だった。
最後の真剣のシーンは、まさに手に汗握った!
ドラマとは違って間合の長さにドキドキ。
2人の迫真の演技が素晴らしい!!
山口馬木也さんの表情がすごかったな〜。
他の役者さんの立ち回りが演技だとはっきり分かるくらいに、山口さんの演技が侍そのものだった。
緊張と緩和
単なる喜劇かと思いきや、最後にシリアスを持ってくる。少し前に蒲田行進曲を観たが、監督もこれを参考にしたらしく、展開や時代劇を取り上げたことなど似ているなと感じました。
あと役者さんの演技が皆さん素晴らしく、最後までじっくり鑑賞できました。
撮影が昭和な感じなのはあえてなのかな。
見てよかった。
睡眠不足で途中で寝るのでは心配したが全く杞憂でした。ベタな展開でも『クスッ』と笑えるオープニングでどんどんスクリーンに引き込まれる面白さでした。キャストの人間味あふれる演技も良かったですし私は何度も泣けました。時代劇を愛する熱量がハンパなかったです。
時代劇映画愛にあふれた作品
東京・池袋のシネマ・ロサでの単館上映からスタートした本作は、SNSを中心に口コミが広がり、その後、全国348館まで上映規模を拡大するという異例の快進撃。
物語は、幕末の会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)が、落雷によって現代の時代劇撮影所にタイムスリップするところから始まります。彼はその剣の腕を活かし、「斬られ役」として新たな人生を歩み始めます。この設定自体が斬新。
主演の山口馬木也は、タイムスリップした侍という難しい役柄を見事に演じ切り、その存在感と演技力はまさしく本物の侍そのものでした。
また、監督の安田淳一は、全財産を投じて製作費2,600万円を捻出し、本作を完成させ。特に、東映京都撮影所で撮影された本格的な殺陣シーンは、時代劇ファンなら涙もの。
さらに、物語の中で描かれる人間ドラマや、時代劇への深い愛情も、心を捉えました。現代と過去の文化のギャップや、主人公の成長物語など、多彩な要素が巧みに組み合わさりストーリーに深みをもたせたのも見事。ラストシーンはくすりとさせられました。笑
生涯ベスト5
話題になってるとも知らず、友人に誘われて鑑賞。
時は幕末、会津藩の侍が長州藩の侍と一騎討ちをしている時に雷に打たれて現代にタイムスリップ。
タイトルからして侍がタイムスリップしてよくあるカルチャーギャップコメディかと思っていたらタイムスリップして来た侍の適応力が半端ない。
壁のポスターから自分が守ろうとした徳川幕府が140年経っている事を知る。
現代にカルチャーギャップしているところはあまりなく、また周りも撮影所に紛れ込んだ事から記憶喪失で役に成り切っているからと、この人を受け入れる。
初めて観た時は侍が文明に馴染むの早過ぎ!って思ってたけど、体験した人がいる訳ではないので解らない。
ちょんまげと着物と刀という風貌から時代劇の斬られ役をして、褒められた事で今の時代、自分の身を立てるのは斬られ役しかないと斬られ役の集団、剣心会に入門し、斬られ役の道を歩む。
タイムスリップして来た会津藩の侍、高坂新左衛門は福島に住んでいた自分にも、この人会津出身?と思う程、完璧な会津弁を話す。
今度はその事が頭に残る。
こうして順当に斬られ役と人生を歩み、ちょんまげも切り洋服を着る新左衛門。そんな時に大物俳優から10年ぶりの時代劇復帰をし、その相手役として高坂新左衛門が抜擢される。
その訳はこの大物俳優、風見恭一郎こそ幕末で相手をしていた長州藩士だったからだ。
えっ!先にタイムスリップして来ていたの?
そう来たか⁉︎変化球。びっくりした。
一度は断る新左衛門だったが、剣心会の主将らに説得されて、大作「最後の武士」に出演する。
撮影が続き、途中の懇親会でシナリオの変更を知らされ、そこに書いてあったのは会津藩の悲惨な最後だった。ショートケーキが誰でも食べれる豊かな国を作った長州藩。しかし、会津の同胞の悲惨な末路を知って、一矢報いたい。
そして新左衛門は撮影の殺陣を真剣でやる事を提案する。
福島に住んでいた自分にとっては会津の末路を知っていたので、胸がはち切れそうだった。新左衛門の気持ちが痛い程解る。
そして真剣の試合。お互いに動かない。
そして斬り合い。真剣の時は竹光とは音が違う。
このシーンは映画史に残るシーンではないか。
そして結末は!
斬れなかった。
新左衛門の気持ちになると斬れなかった事は武士を捨てた事なんだろうか?自分の現在を肯定した事なんだろうか?
兎に角斬れなかった。
それから斬られ役の人生は続く。
最後に3人目のタイムスリッパーが!
で爆笑で終わる。
こんな面白い映画は久しぶり。
生涯ベスト5に入る映画だと思う。
映画作りへの情熱
初めて見たのは昨年10月。あっという間に10回の大台に乗ってしまった。久々に楽しく笑えて泣ける映画に当たったので飽きるともったいないから控えようと思いつつ、癖になり、今に至っているのですが、初見では馬木也さんの見事な殺陣と演技力に惹きこまれた。いかつい暗殺者の顔がタイムスリップして、塩むすびに感動し、ケーキで日の本の豊かさに感じ入り、それにしてもよく泣く男に変貌して、楽しかった。ラストの殺陣は何度見ても見事で感動した。そして今、なぜ飽きないのか考えるようになっている。
最初は主役にしか目がいかなかったのだけど、鑑賞を重ねるうちに、この映画は、切られ役や端役に至るまできちんと演技していること、映画そのものに映画を作る情熱を感じさせることに気づかされた。タイムスリップして元の世界に戻れぬ孤独を心優しい人たちに支えられて、切られ役で生きていこうとするも会津の人たちの悲劇を知ってしまい、どうすることもできない悲哀を同じくタイムスリップしてきた長州藩士にぶつけて真剣で勝負することになる。脚本も上手い、安っぽさや嘘くささがない、低予算なんてすっかり忘れてしまう。
画面も美しい。日本アカデミー賞7部門受賞もうなづける。というか、自主製作で各大手映画会社に勝負を挑んでいる構図ではないですか。この情熱たるや、すごい。監督、俳優、スタッフ、一丸となって映画作りをしている。私はその熱気にあたるべく、せっせと映画館に通っているようです。
予想外に熱い人間ドラマ
多くの映画マニアの人達が絶賛していた本作。低予算の自主製作映画で、元々は一館のみでの上映予定だったにも関わらず口コミで評判が広まり、現在は全国規模で上映されているという『カメラを止めるな』を彷彿とさせる作品です。私の住む映画過疎地の秋田県では話題になっていてもしばらく上映が無かったのですが、今月から大館市にある御成座さんにて上映がスタートしたので遅ればせながらの鑑賞です。「幕末の侍が現代の時代劇撮影所にタイムスリップする」というあらすじだけ知っている状態での鑑賞でした。
結論ですが、めちゃくちゃ面白かった!!
時代劇をテーマにした作品ですが、舞台となるのは現代ですので分かりづらさや難しい場面などはほとんどありません。幕末の歴史について中学校で習ったくらいの知識があれば十分理解できる内容だったと思います。幕末の侍が現代にタイムスリップし、現代日本で時代劇に出演し、「斬られ役」で人気となっていくというストーリーは新鮮でもあり、時代劇などについても深く考えさせられる内容でしたね。中盤以降に起こる展開も盛り上がりましたし、賛否両論分かれているらしいラストの展開も、私は肯定派です。とにかく、最寄りの映画館で上映されているなら今すぐにでも鑑賞してほしい名作映画だと思います。
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時は幕末、会津藩士の高坂新左衛門(山口馬木也)は長州藩士の暗殺のために京都の寺の前で待ち構えていた。標的である長州藩士・山形彦九郎(庄野崎謙)と刀を交えていたところ、突然雷に打たれて気を失ってしまう。新左衛門が目を覚ますとそこは、現代の時代劇撮影スタジオだった。
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侍のタイムスリップ。非常にシンプルなストーリーでありながら、この映画は非常に深く面白い作品でした。
現代にタイムスリップした新左衛門が優しい寺の住職さんに助けられて住み込みで寺の手伝いをする流れから斬られ役になるまでがスムーズで分かりやすくてよかった。テレビで見た時代劇に感動し、ひょんなことから斬られ役として参加し、時代劇製作スタッフたちの情熱や技術に対してさらに感動。有名殺陣師に弟子入りし斬られ役として大成していく。
全体的にストーリーがテンポよく進んでいくのが見ていて気持ちよかったですね。物語が向かう方向やキャラクターたちが何をするのかがきっちり画やセリフから分かるようになっていて、間延びするシーンもなく最初から最後まで楽しかったです。
分かりやすくありながら、かなり掘り下げがいのある深いストーリーですよね。新左衛門は斜陽産業である時代劇と衰退しつつあった幕末の侍を重ねて見ているんだろうな、とか。
新左衛門が時代劇の斬られ役として人気が出てきた映画中盤から、物語が一気に動き始めます。ハリウッドで活躍していた伝説の時代劇俳優の風見恭一郎(冨家ノリマサ)の主導で、一大時代劇の制作が決定し、その主演俳優として新左衛門に白羽の矢が立つという展開です。初めのうちは自分には荷が重いと感じ断ろうとした新左衛門だったが、風間から明かされた衝撃の真実と、その後の風間や師匠である殺陣師関本とのやり取りで考えを改め、主演のオファーを受けることにすると言う展開ですね。
風間から明かされた衝撃の展開は本当に驚きましたね。「まさかそんな展開があるのか!」と、映画館で感嘆の声を上げそうになりました。このシーンが、個人的に一番テンションの上がったシーンだと断言できます。
映画の撮影が始まり、一番重要なラストシーンをどうするかという時に新左衛門が提案したのは、「真剣を使っての斬り合い」という無謀なもの。助監督の山本優子(沙倉ゆうの)は必死に止めるものの、監督と風間はやる気十分。終盤の殺陣は真剣での命懸けの撮影となってしまった。
正直、他の方のレビューを確認する限り、この真剣での斬り合いというのは賛否両論あるっぽいです。私もなんでいきなり真剣での斬り合いをしようってなるのかは理解できません。ただし、理解はできなくとも私はこの真剣で斬り合いをするというラストシーンは息をのむ素晴らしいシーンだったと思います。撮影が開始されてしばらく続く睨み合っての膠着状態。これは黒澤明の椿三十郎のオマージュらしいですね。映画上映トラブルかと思うくらいに睨み合いのままピタリと静止して動かない二人のシーンでは、映画館全体が完全に無音になるほどの緊張感に包まれました。そして突然始まる激しい斬り合い。緩急が素晴らしく、圧倒される迫力でした。
映画のラストではコメディ映画らしく、ちゃんとオチつけてくれたところも結構好きです。
不満点はほぼ無い素晴らしい映画なんですが、劇中のコメディシーンでいくつか間延びしてるなと思ったシーンがあったので(落ちるとか滑るとかのシーン)、そういうシーンを短くしてくれたらもっと見やすくなったかな~という印象ですね。
本作は映画そのものもめちゃくちゃ面白いですが、裏話も含めて制作陣の情熱が感じられる作品だと思いますので、これから映画を鑑賞される方はパンフレットの購入をおススメします。時代劇の助監督役で出演していた沙倉ゆうのさんは、『侍タイムスリッパー』でも助監督として仕事していたというところとか。
本当に素晴らしい映画でした。オススメです!!!!!
孤独な魂の邂逅ですよ!
良いBLでした!
30年抱えていた孤独を分かち合えるのはかつての政敵、相見える度にちょっと涙目なのがもう(号泣
極め付けはあの挨拶(以後大号泣
抑えめな時代ギャップコメディ演出も良い。静かに怯える侍w
剣友会の先生も良かったですー!
あの胴衣は先生のお古ですよね!
師匠への暇乞い…(嗚咽
殺陣が本当にきれいでした。
緊張感はなかなかのもの
年始1本目来週木曜日までの上映
朝9時半からなので休みの日に行くしかない
評判は聞いていたので最後まで安心して観られた
内容はオーソドックスなストーリー展開で予定調和の連続
突っ込みどころは満載なのだが不思議と許せる
まぁそういうもんだからと
これが大資本の大作だったら容赦せず叩き斬るところだが
絶妙な構成でラストの緊張感はなかなかのものだった
(勝新の座頭市を思い出してしまった…)
大ラスはおまけだな
年齢柄小用が近く決壊寸前エンドロール途中で退場してしまった
細かいお楽しみはなかっただろうか
(有名な斬られ役へのリスペクトは観た)
主人公の顔いい 相手役の大物俳優もどっかで見た顔
ヒーローものとかで観たのかな
年末年始休みの終盤で平和なひとときを過ごさせてもらった
祝・大ヒット! 2024年100本目にしてラストの映画は、時代劇愛の塊のような映画でした。
一年最後の締めくくりに何を観ようかと思っていたのだが、結局、うちの奥さんが大分前に観に行って絶賛していた、話題の自主制作映画を遅まきながら視聴。
うん、すげえ面白かった!!
私財を投じて作った娯楽映画が、池袋シネマ・ロサの単館ロードショー(このあいだ観た『きみといた世界』と同じですね!)から始まって、日本全国350館を超える大規模上映にたどり着き、興収8億を超える(余裕で10億はいくでしょう)……。
こんなにめでたく、こんなにうれしい話はない。
一人の映画バカが、他の映画バカたちを巻き込んで、
とにかく一般大衆が喜ぶような楽しい映画をつくり、
それにちゃんと観客が応えて全国で大ヒットに導く。
成功確率でいえば、数パーセントのチャレンジだが、
奇跡はほんとうに起きた。ほんとうに良かった。
もちろん、誰しもが今回の異例の大ヒットを見て、あの『カメラを止めるな!』現象を思い出すだろう。
むしろ、安田淳一監督は『カメ止め』の奇跡的成功のスキームを、しっかり研究して挑んだ気配が強い。
とにかく、脚本がよく書けていることがまずは大前提。
そして、わかりやすいヒトネタに懸けたシンプルな内容。
テーマは「映画愛」にまつわる「映画づくり」の映画。
なるべく、心あるファンを「味方につける」、観た人が「応援したくなる」ような仕掛けが、ちゃんと施されている。
僕は、考えようによっては、安田監督は『カメラを止めるな!』より凄いことを成し遂げたようにも思うのだ。
『カメラを止めるな!』は、ある意味、出オチの映画だった。
とにかく、あの乾坤一擲の「ヒトネタ」だけで勝負する映画であり、
客はその「ネタ」を人からバラされる前に、慌てて映画館に足を運んだ。
『侍タイムスリッパー』は、もっと「正攻法」の映画だ。
昔の邦画のような、くすっと笑えて、やがてぐっと胸に滲みるまっとうなコメディ。
映画を支えているのは、精度の高い脚本と、
本気で挑んだ二人のベテラン俳優の名演技である。
脚本と、主演の力で、客を笑わせ、客を泣かせた。
彼らは、真正面から「メジャー公開」への狭き門をこじ開けたのだ。
一方で、この映画をむやみに賞賛するのも、僕の流儀に反する。
一見して「自主制作映画に見える」というのは、やはりクオリティの部分でクリアできていない要素がたくさんあるからだ。そこは、ちゃんとフェアに評価したほうがいい。
監督は、車まで売り払って、2500万円の私財を投じて「好きな映画をつくるための」リスクを負った。それはたしかに美談だ。
だが考えてみれば、メジャースタジオだって、5億、10億の巨額製作費を投じて大きなリスクを負っているのだ。失敗したときのダメージだって、会社が傾くだけではない。何百人という人間に被害は及ぶ。映画づくりがリスキーなのは、どこがやっても変わらない。
むしろ、いまどき島崎藤村の『破戒』や、中原中也と小林秀雄の痴話喧嘩を題材に、何億円も投じて映画をつくるほうが、よほどリスキーな気すらする(笑)。
その意味では、自主制作映画だからといってあまり判官びいきせず、『侍タイムスリッパー』を「きちんと褒める」ことがとても大事だと、僕は思う。
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まずはホンの出来が良い。
これは、間違いない。
僕はまったくの予備知識なしで足を運んだので、現代の日本から江戸にタイムスリップする『戦国自衛隊』みたいな話だとばかり思っていた(笑)。
逆なのね。一般にタイムスリップものの場合、圧倒的に「現代から過去に飛ばされる」話が多いが、一定数の「過去から現代に飛ばされてくる」話も存在する。
『テルマエ・ロマエ』とか、『帰ってきたヒトラー』とか。
海外ロマンスなんかでも、けっこうあるパターンで、中世のハイランダーとか、リージェンシーの貴族が現代のニューヨークに飛ばされてきて、カルチャーギャップでドタバタするような話を何冊か読んだことがある。
「侍がタイムスリップしてくる」話もそれなりにあって、最近だとP.A.WORKS制作のTVアニメ『クロムクロ』は、まさにタイムスリップ(実際はコールドスリープだが)してきた侍がロボットに乗って戦う話だった。
本作のキモになる「時間差」ネタも、「転生」もののアニメやラノベで何例か観た記憶がある。すなわち、自分を導いてくれる主要人物が、実は「同時期に異世界召喚されたのだが、飛ばされた時代が早く先に歳を重ねていた」というパターンだ。
要するに、『侍タイムスリッパー』のネタ自体は、そこまで珍しいものでもない。
真にうまくいったのは、このネタが「時代劇への愛を語る」ギミックとして、ドンピシャではまったという部分だ。
逆側から見れば、「すたれゆく時代劇と東映太秦スタジオの再興」をはかる意図で映画を撮ろうというときに、「タイムスリップ」ネタほどにテーマと相性の良いギミックはなかった、ということだ。
このことに気づいて、実行に移した監督は本当にえらかったと思う。
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とにかく、時代劇への愛が強い作品。
僕にとっての『侍タイムスリッパー』は、そこに尽きる。
なぜかというと、僕も時代劇が好きで好きでたまらないからだ。
僕のような関西出身の1970年代生まれというのは、昼の14時から18時の「再放送」時間帯に、どっぷりと刑事ドラマと時代劇に浸かって成長した世代である。
僕にとっては、『服部半蔵影の軍団』と『必殺シリーズ』――特に『必殺仕置屋稼業』と『暗闇仕留人』、『必殺仕業人』――が最高峰で、『破れ奉行』『長崎犯科帳』『柳生一族の陰謀』『隠し目付参上』『大江戸捜査網(1期)』『闇を斬れ』『雲霧仁左衛門(天地茂版)』など、来る日も来る日も得体のしれない時代劇を夢中になって観ていた。こうやって振り返ってみると、基本的にはダークヒーロー系ばかりを選り好んで観ていた気がする。逆にまっとうな勧善懲悪の捕物帳やお武家ものは、退屈でろくに観られなかった。
電車の行き帰りでは、昨日の市松はどれだけ恰好良かったかとか、昨日のやいとやはどれだけクールだったかとか、学友たちとそんな話ばかりしている変な中学生だった。
なにせ、『暗闇仕留人』の大吉に強い影響を受けて、いつもクルミを手でコリコリ鳴らしながら歩いていたくらいで、かなり変わったガキだったと思う(笑)。
そんな僕にとって、時代劇の衰微と太秦スタジオの斜陽が、寂しくないはずがない。
その意味で、安田監督も、本作に協力したスタジオのスタッフたちも、東映剣会のメンバーも、本作で命を燃やしてみせた山口・冨家他の俳優たちも、本作を小屋にかけると決めた劇場主たちも、等しく「時代劇を愛する仲間」であり、伝統文化を守り抜く闘士である。
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ただまあ、序盤のあまりに貧乏くさい感じとか、
一部の俳優さんの素人くさいせりふ回しとか、
全編に渡る間の悪さ(そのせいで笑えない)とか、
作中作の時代劇のコントまがいのしょぼい出来とか、
総じてセンスの悪いカメラワーク(殺陣以外)とか、
正直な感想を言えば、「脚本家・安田淳一」の精度の高さに比べると、「監督・安田淳一」は、そこまで優秀な人材ではないと思ったりもする。
映像に関して印象に残るショットが少ないし、各カットのOKラインが低すぎる。明らかに音程のぶれたせりふや、ワンテンポ遅れた発語を認めてしまっているのは、予算やスタッフの質とは関係がない、監督の技量の問題だ。
せりふのやりとりと、演技の応酬できちんと成立して「笑わせる」ことに成功している場所は、おおむね山口馬木也、冨家ノリマサ、峰蘭太郎の絡んでいるところだけだ。そこは「役者自身の技量」で成立している部分であって、監督の演出力に起因するものではないだろう。僕は、100%この監督の味方だし、100%この映画の味方だが、そこの評価はやはり譲れない。
あと、終盤の展開にどうしても無理がある点も否定できない。
「大スター」が10年ぶりに復帰する「大物監督」の撮る「大型時代劇」のはずなのに、スタッフの数も、美術も、セットも、カメラの画質も、何もかもがまるで足りていないからだ。
ビッグバジェットの映画製作をモチーフにしているのに、ローバジェットの座組しか「絵」として提供できていない。なので、後半に行くほど話の説得力が薄れていく。
だいたい、映画内で語られるような座組の大予算映画なら、ほぼ間違いなく壮大なセットが組まれて、緻密に時代考証が検討されたうえで撮影が行われるはずだ。
でも、やっていることは、相変わらずのロケーション撮影ばかり。とても大監督には見えないヤカラ風のあんちゃんがコントのようなノリで演出をして、とても大予算映画とは思えない斬られ役の人々が、前半のテレビ時代劇と変わらないしょぼいアクションを見せている。
ここは、監督の技量というよりは、それこそバジェットの問題なのであって、結局は「観客が」好意的に脳内で良い方向に膨らませて「観てあげる」ことが必要になってくるのだろうが。
終盤の殺陣で「真剣」を使うという話にしても、もう少し「持っていきよう」があったのではないか、と思う。かつて奥村雄大の真剣事件など、実際の死亡事故があったにもかかわらず、東映の撮影所で真剣使用が公的に認められる流れは、やはり個人的にはおおいに抵抗があった。
せめて監督と主演の二人だけで示し合わせて、ひそかに狂気へと突き進むような、もっと切迫した描写が欲しかったかなあと。そもそも、あれだけ善良で、現代に順応してきた新左衛門が、「真剣使用しか道がない」と思い詰める理由が、僕にはそこまでよくわからなかったし、共感もしにくかった。
そのぶん、ラストの立ち回りは、ビッグバジェットの時代劇に劣らないくらいの立派な仕上がりになっていたし、「時代劇史上、最もお客さんが真剣を使っていると錯覚してしまう殺陣をやってみたいと思う」という監督の所期の目的を、見事に達成できていたと思う。
最大のプラス要素としてはやはり、前述したとおり、山口馬木也と冨家ノリマサの好演に尽きるのではないか。
山口さんが力量のある俳優であることは、『剣客商売』の秋山大治郎役で十分わかっていたが、冨家さんのことは正直よく知らなかったので、説得力のある演技にやたら感心してしまった。僕が監督なら、たぶんもっと名のある時代劇俳優を選んだと思うので、彼を選んだ監督の慧眼には感服せざるを得ない。
あと、意外にうまくはまっていると感じたのが、音楽。
変な音響もあちこちあったのだが、つけられた音楽自体は、結構本格的だったように思う。
カメラワークや演技やカット割りの素人くささを、うまくごまかせていた一つの要因だったのではないか……と思ったのだが、なぜかパンフでもWikiでも音楽については一切言及されず、「誰が担当だったかすらまったく触れられていない」。なんで???
もしかして、名の通った有名人だが、諸般の事情で絶対名前の明かせないような作曲家がひそかに関与してたりして(笑)。
― ― ― ―
さて、本作で今年も劇場映画鑑賞100本をクリアということで(短篇映画も1本に数えるインチキカウントだが)、一応年間ベスト3を上げておく。
(新作洋画)
1 ビバ・マエストロ! 指揮者ドゥダメルの挑戦
2 PERFECT DAYS
3 コット、はじまりの夏
(洋画リヴァイヴァル/初見)
1 アンダーグラウンド
2 メサイア・オブ・デッド
3 ワイルド・ボーイ
(洋画リヴァイヴァル/再見)
1 続・夕陽のガンマン 地獄の決斗
2 レザボア・ドッグス
3 皆殺しの天使
(邦画)
1 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション 前章
2 きみの色
3 BLOODY ESCAPE 地獄の逃走劇
(次点で『侍タイムスリッパー』と『どうすればよかったか?』)
以上、よい年をお迎えください……
と書こうと思っていたが、
更新が元旦になってしまったので、
不本意ながら、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします!
真剣…
正直、期待が大きかったので途中は間延びを感じてしまいましたが、トータルでは『こういう映画は評価されるべき!』と思わせてくれました。
笑いについては、くすり&ニヤリくらいでしたし男女の関係も深掘りせずでちょうど良かったです。
何より、ラストは本当に真剣での立ち会いなのかと見紛うほど緊張感があったので、映画って凄いなぁと思いました。
つくづく映画って脚本と演技力が肝心なのであって、役者の知名度は不要なんだなぁと再認識。
海外ドラマにハマりたての頃の、新鮮に内容にだけのめり込む感覚を久しぶりに味わうことができました。
最後のセリフ
やっと見ることができました。すごく良い映画でしたんだけど
主人公が会津藩士というのに、個人的には惹かれました。
私の祖母が我が家の先祖は会津藩にいたと言っていたので。本当かどうかよくわからないですけど。
最後のその時代を精一杯生きるというセリフにやられました。
メジャーな俳優派いませんが、皆さん演技がうまくて、ストーリーに引き込まれます。
笑いもあるし、あっという間の上映時間でした。
久しぶりにスカッとした映画で楽しかったですありがとう
同じ作品を映画館で2回見たのは初
同僚に面白いらしいよと聞き
簡単なあらすじを聞いてから見ました
導入部はなんだかよくわからんって思って見ていましたが
段々とのめり込んでいましたねー
説明的ではないのにわかりやすいし
笑えるし胸を打たれるしとにかく面白かったです
見た事がある役者さんが、冨家ノリマサさんだけ(お名前は知りませんでした)だったのですが
演技はみんなめっちゃ上手いと思いました
1番頭に残っているシーンが高坂と風見が向き合って無音になるシーン
あの緊張感は呼吸すらするのが憚られる様なそんな感じでした
2回見たのは単純に面白かったのと
デラックス版が川崎でやっていたので
折角なら見たいと思ったからですね
2回目も面白かったし、追加シーンも良かったですが
通常盤?でも魅力が損なわれるとは思いません
唯一どうしてもダメだったのが
序盤のトランペットのSEが生理的に受け付けない感じでした
映画館で観たほうがいいです…!!
普段邦画はあまり観ないのですが、
あまりに良かったため久しぶりにレビューを書きたいなと思いました。
山口馬木也さん、時々見かけてかっこいい俳優さんだな、と名前は存じていましたが、ちゃんと出演作品を観たのははじめてでした。
本物の侍そのものにしか見えず、馬木也さん演じる新左衛門の辿る運命にすっかり引き込まれてしまいました。ものすごくいい役者さんですね…
峰蘭太郎さん、田村ツトムさん(心配無用ノ介は田村さん以外では考えられないぐらいハマり役です!)、他にも素敵な役者さんがたくさん出演されていましたが、全員の感想を書くととんでもない長さになるので残念ですが割愛します…
笑いは万人にわかりやすく散りばめられており、ふふっと会場からも笑い声が漏れてとても良い雰囲気でした。
泣けてしまう場面もあるのですが、
いわゆる、さあここで泣いてください!という押しつけがましさがなかったのは、素直に日本人として自然な感情からくる涙だからかな、と思いました。ラストの殺陣シーンは本当にグッときましたし、本物の闘いがそこにありました。
久しぶりに良い映画を観たなぁ…とホカホカした気持ちで劇場をあとにしました。そして自分には珍しいことですが、2回目も観に行ってしまいました笑
3回目も観に行きたい…と考えているところです。
サブスクにはいるのを待っている方もいると思いますが、ぜひ映画館で観てほしい作品です!
今の自分に問いかける良作
今日、田舎の母から、父が、ステージ4のガンとの連絡。そんな日に観た。後半から、涙が止まらなくなった、主人公の思いが、どれぐらいの物は、比べるべくも無いが、ただ、自分には、これまで何か出来たのであろうか?との、感情が溢れて止まらなくなった、自分にこれから出来ることを、出来る限りやりたくなる作品だった。
オススメです。
高評価も納得
剣客商売の若先生の印象が強い山口馬木也さんですが、さすがの所作や殺陣でした。タイムスリップものは韓流ドラマでおなじみの設定ですが、この設定は斬新。やられました。コメディ路線かと思いきや、深いストーリーで何度も泣かされました。
ショートケーキを食べて140年後の日本はこんなおいしいものが、誰でも気軽に食べられる国になったのかと涙するシーン、台本の変更部分を読んで会津の人々の苦難の歴史を知り嗚咽する場面は、特に胸に堪えました。
ラスト近くの「切られ役も時代劇もいずれなくなる」との師匠の言葉に、でも今日ではないと主人公が答えますが、これってトップガンマーベリックのオマージュ?これも、なにかの映画のセリフだったらしいですが…。印象的でした。
観ながら「福本清三さんがご存命なら、きっと出演されたはず」と、思っていたらラストにお名前がありましたね。ここもぐっときました。時代劇亡くなってほしくないな。今から継承しないと、技術や知識が途絶してしまう可能性がありますよね。最近の時代劇が、映画はまだしもドラマが薄っぺらいのは、時代劇の所作を身につけていない役者や、身分別の礼儀などを知らないスタッフが多くなってしまったのでは。歌舞伎の人がいると所作が美しすぎて、他の人が見劣りしてしまう気がするくらいです。
じわじわと上映館が増えたおかげで、観ることができました。この映画を観て良さを広めてくださった皆さんにお礼を申し上げます。とても良い映画でした。
武士版テルマエロマエ
レビュー点数が高く、低予算ながらの大ヒットという記事を見て期待して鑑賞。
ある武士(主人公:高坂新左衛門)が雷に打たれて現代にタイムスリップ。現代では時代劇の切られ役として人気を博す。ところが、武士時代の敵が現代に現れ時代劇で再び対峙することとなり…。
率直な感想から言うと、ありきたりなタイムスリップものだなという印象である。
高坂が現代にきて、文化や食に触れて、感動する様は、どこかの温泉映画で観たものそのままである。ここはかなりコメディ色強めに描かれている。これと本物の武士である緊張感漂う演技のギャップで観客のおじさまおばさまたちを虜にする。
最後の真剣のシーンまでこれだけ評価の高い映画なんだからきっと何かあるはずと集中力切らさず観ていたが、それは悪い意味で裏切られてしまった。本物の刀であれば、血の一滴や二滴を見てみたかった。どこか全体的に平和ボケ感が否めない。
私は今まで時代劇などにまったく触れてこなかったため、時代背景の知識不足があったり、セオリーが分からないため、時代劇との親和性は低い。それでもこれほどまでの過大評価は、観客の平均年齢の高さに起因することは間違いないだろう。
時代劇Blues
遅ればせながら、噂を聞き劇場に馳せ参じ候。
以前、東野英治郎という名優がインタビューでこんなことを語られていたことを思い出しました。
「街並みも変わり、今は京都でも随分と奥に行かなければ時代劇も撮り辛くなった、こうして時代劇も廃れて行くのかも知れない」というようなことを仰られていました。確かに今時春の小川も原風景を撮影出来る場所も少ない、変わりにCGは発達しましたが、それは、まだどこか嘘臭く綺麗すぎて作りもの感があります。温もりのある時代劇は確かに難しくなりましたが、想像し制作している人たちの情熱は変わらない様です。そんな想いを強く感じる娯楽映画で、時代劇の先人方が映画創世記の先人方が御覧になられたら、どんな感想をもたれるだろうと、感慨に耽りながら映画館を後にしました。
駆け回る侍タイムスリーパーが活劇のようで嵐寛寿郎のように見える一瞬があり心躍りました。そのモノクロの世界のフィルムに時代という色彩を入れたようでした。
良い作品をつくるポイントを押さえた作品でした。
地元のミュージシャンの人とこれも地元の50代の音楽クリエーターの人の2人から面白い映画だったと聞いてイオンシネマ桂川の終映日に見ることができました。
自分の考える良い作品をつくるポイントを押さえたできだと思いました。
そのポイントとは
1.自分のよく知る分野(映画制作)についての作品
侍がタイムスリップして現代にやってくるのですが着いた仕事が時代劇の切られ役。撮影現場なんてどんどん出て来てドラマ、映画に対する思いなどはそのまんまの気持ちが語られているように感じました。蒲田行進曲を初めとして映画作りがテーマとなる映画作品はいいものが多いと思います。
2.売りのポイントがある作品
この作品の見せ場はなんといってもチャンバラシーン。最初からチャンバラが出て来て、ラストの見せ場もチャンバラシーン。しかも真剣を使って演技しようということになり...。実際は勝新太郎の息子(鴈龍)さんの起こした事故などもあり決して真剣の使用はおすすめできませんがハラハラドキドキさせてくれました。
3.地元密着性が強い作品
京都の太秦の撮影所が東映作品でないにも関わらず大いに協力されたようで、作品中の京都弁も効果的で京都愛を強く感じました。映画好きの人にはいうまでもありませんがこの分野でも良い作品が目白押しですね。京都自体は観光客があふれかえっていて少し風情が減じた感はありますが...
4.やさしい人が多く出てくる作品
タイムスリップして来た主人公は作品中では頭を打ったための記憶喪失の人という扱いになっていますが主人公をやさしく介抱したり住むところや仕事を提供する面倒見のいい親切な人たち。寅さん映画じゃないですがやさしい人が多くでる作品は見ていてほっこりします。
なんだかこうして振り返ってみると低予算でも良い作品が作れるお手本のような作品ですね。
殺陣だけでなくアクションも加わればもっと良かったのに。
暫くぶりの映画館
ロサ会館が40年ぶり。でも、映画はここではたぶん見ていない。一階にかつてあった喫茶店に悪ガキ仲間でたむろしていたのだ。近くに友人の下宿があったからだ。
これは立派な現代劇。時代劇とは言えない。
時代劇が少なくなった事に温故知新を感じているのに現代劇をやる。そんな辛さがあるのかなぁ?ストレートに考えるなら、
『だから、時代劇が駄目になる。』となる。
まぁ
『滑る、落ちるは言うな』の『寅さんネタ』は要らないが、
よく練り込まれた良質の台本だと思う。また、殺陣も長回しで出来るだけ撮っているので迫力があると思う。但し、腰から上の場面が多くて足の動きが分かりづらかった。殺陣で剣が交わる迄の間がやはり迫力がある。
但し 以下
ネタバレあり
最後の間に於いて、あれだけの間を作るなら、やはり、椿三十郎にリスペクトしてもらいたかった。ちょっと残念。
そして、
最後のシーンで僕ならこんなセリフを入れる。
『峰打ちじゃ安心せぇ』
なんてどう?
追伸 会津藩の苦難は『斗南藩』に継がれ、この主人公の言う話は正に真実。そして、薩長土肥の明治維新とも言われ、その流れは妖怪の孫にまで届く事になった。さて、流れは途絶えたのだろうか?
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