侍タイムスリッパーのレビュー・感想・評価
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おすすめ
山口さん素敵でした。
作品は全体通して面白く、笑いどころも1ヶ所ありました。
年配のお客さんは何ヵ所かの場面で笑っていらして、映画館で観て良かったなあと思いました。助監督役の方の声が可愛らしくとても印象が強くて、次はどの作品で会えるのか楽しみです。
チャンバラ万歳!
昔の人が現代に来たら、、というあるある話。
主人公の反応が見事。とにかく絶妙なのだ。面白おかしいだけじゃない。
賊軍となった会津が受けた残酷な過去を知る事になり、、、。
芝居のチャンバラとリアルの使い分け。
いや、実はどちらもチャンバラなんだけど。
最後のシーン、ものすごい迫力で息をのみました。
あまり知らない役者さん(ごめんなさい、私が知らないだけかも)で
しかも迫真の演技だったので本当にリアルでした。
監督の情熱が太秦を動かした!
カメ止め的位置付けという文字を見かけて、それならばと一切の事前情報を入れずに鑑賞してきた。
低予算のインディーズ作品と考えれば異例の秀逸な作品。
まず脚本が素晴らしい。時代劇を愛する強い想いに、幕末を生きた勤王と佐幕の志士2人の魂を打つような深い想いを重ね合わせたところが見事である。
幕末も時代劇も現代の若者にとっては歴史教科書の1頁以上の意味をもたないかもしれない。
しかし、時代劇という形で「幕末の志」を後世に残す事に高坂と山形、2人の侍は命を賭ける価値を見いだす。
それはまさしく「時代劇の魂」を残したい!という想いと重なり、長年太秦を支えてきた人々の心を捉えたのだ。
監督は当初、敬愛する伝説の斬られ役福本清三氏(ラストサムライではトムクルーズとも共演。だから決め台詞がNot todayなんだろうと思います。)に主演をお願い出来ないか?と考え脚本を送っていた。福本さんは実はすでに肺癌闘病中だったが脚本が面白い!と考え、時代劇関係者、太秦関係者各方面に話をしてくれた。「なんとかならへんかな?安田(監督)さんに使わせたってええんちゃう?」と。
主演、山口馬木也もそんな縁で脚本に触れた1人。福本氏亡きあと安田監督は膨大な人数のオーディションを行っていたそうだが、そんな事はまったく知らない山口は「この役を是非演らせて欲しい」と監督に声をかける。そして見事に主演を射止めてしまったわけだ。
監督の方もまさか山口ほどの実力者が自ら立候補してくれるなど考えもしていなかったであろう。
冨家ノリマサ、ランタン(峰蘭太郎)、福田善晴、紅萬子、井上肇という実力派超ベテラン勢が脇を固めてくれる。(知らない役者さんばかり、と思われた方、もし平成時代にTVドラマをよくご覧になっていたなら絶対見かけてます。特に時代劇では。ハンバーグステーキ食べる時に付け合わせのブロッコリーを意識していなかっただけ)
殺陣は東映剣会(つるぎかい)トップクラスの清家一斗。「父(清家三彦氏)をこの作品で超える!」という情熱で参加。
カツラ、メイク、衣装、照明も時代劇を知り尽くした最高のスタッフが力を貸してくれた。
いくら撮影所の使用許可が降りても、彼らの愛情溢れる全面的なバックアップがなかったら、監督1人でこのクオリティを生み出す事は不可能だっただろう。(着物の選び方ひとつだってそう)
作風の印象は、テルマエロマエからコミカル・コメディの部分を大きく削り、じんわり涙ぐむような温かさのシーンを比較的多めに盛り込んだ感じ。(コミカルなシーンも多いんだけど、笑わせる事自体が主眼ではない)
会津藩の悲劇を知った高坂の慟哭には胸を抉られる。
設定が細かいなー、と思ったのはスマホが登場しない事。ガラケー主流だった1990年代後半くらいの設定なんですね。地上波でまだ新作時代劇放送やってるわけですから。
という事は、里見浩太朗、、、じゃなかった風見恭一郎が斬られ役の下積みからスタートした時期は1960年代ってわけですよ!ほら、時代の感覚ぴったりでしょ?納得したでしょ(笑)
田村ツトムくんの心配無用ノ介は、萬屋錦之介でも高橋英樹でも松平健でもなくて、蒲田行進曲の「銀ちゃ〜ん」かと思いましたwww
あと驚いたのが、本作でも本当に助監督との二足の草鞋を履いた沙倉ゆうのちゃんが45歳という事ですね。見えないわー。銀幕の中では30歳でもイケると思ったわー。お見事。
本作を観て改めて感じたのは、実力があっても主役の話が回ってくるのは幸運な一握りだけなのだな、という事。
そして
若い頃から主役を張る一部の役者さん達は、演技のアーティスト(表現者)なのかもしれない。
それに対して、脇を固める実力派は演技の「職人」なのかもしれない。
(冨家さんなんて、ほんと里見さんぽく見えました)
そんな「職人」さん達が熱い想いを込めた本作。
コツコツ真面目にやっていれば、見る人は見ていてくれる。
関係者全員に共通するそんな想いが、現実となったのでしょう。
応援したくなる一作でした。
良い作品を世に生み出してくれてありがとう!
これぞ映画。観るべし!
文句なしに楽しめる映画。映画の良し悪しは制作費と関係ない、ということがよく分かります。お子様も楽しめますが時代背景を理解できたほうがいいので小学5〜6年生以上かな。
ストーリーにはカタルシスがあり主人公・敵役の悲哀もよく描かれているところに、抜群のタイミングでオヤジギャグ演出が入り観客をクスっとさせてくれます。この作品の笑いは言語や文化を超えた映画のプロトコルに則っているため海外で上映されても同様に笑い転げてもらえると思います。北野作品が思い浮かびました。なお、お話は「タイトルである程度想像つくよなw」と舐めて掛かって観ていると「うわーそう来たか」という嬉しい展開に私は「すいません!舐めてました」と心のなかでごめんなさいでした。エンディングも爆笑。本当によく出来た脚本・演出だと思います。
やっと本日観ることが出来ました。口コミで評判が伝わり上映館が尻上がりに増えているようですのでますます多くの方々に観てもらいたいですね。
なお、劇中で助監督を演じるヒロイン沙倉ゆうのさんは本作品の助監督でもあります。劇中劇というか劇外劇というかw。エンドロールで気づいて後で確認しました。他にもいろいろ仕掛けがあって何度でも見返して楽しめそうです。
侍と時代劇
幕末の侍が現代にタイムスリップして時代劇の斬られ役を演じる映画。
昔の時代劇ファンなので、マイナーだけど久しぶりに面白い時代劇(厳密に言うと現代劇だが)が上映されていると聞いて見に行った。
確かに、主役(山口馬木也)と殺陣師(峰蘭太郎)しか知らなかったが、他の演者も、舞台俳優なのか、とても演技が上手く、脚本演出もよく出来ていて、本当に久しぶりに笑ったり泣いたりした。
時代劇衰退期の斬られ役の悲哀という太秦ライムライトのようなテイストがありつつ、本物のサムライを絡ませた、古いようで新しい映画だった。
低予算で豪華俳優がいなくてもいい映画が出来る、そのお手本のような作品だった。
笑いあり涙ありの極上のB級映画!
低予算ながらもドンドン上映館数を増やしている話題作ということで視聴
部屋住みの無役の侍が現代にタイムスリップ!
という展開は、ありがちまでは言わないものの、ドラマや漫画で数パターンは数作品見たことがあるかと思います。
割と侍から遠い職業になる作品も多い中で、時代劇の切られ役は親和性が高いだけにパンチ力が弱そうだなと思ってました。
ただ、主人公の俳優さんの演技が良いこともあり、近いからこそ差がハッキリすると言うか、時代劇の中で一人だけ紛れ込んだ侍感が凄く良かったですし、ストーリーもネタバレになるので言いませんが、メッセージ性もありながら笑いと感動のある素晴らしいものでした。
出演者の人数やカメラワークなど、B級感はありますが素晴らしい作品でした。
迫力に感動
笑いの時間もありながら、迫力満点以上の凄みのある殺陣は今まで見た中で一番だと思います。後日職場でおすすめしまくりました!
俳優さんに詳しくなくて、どうしても主役を誰だったか思い出せないままエンドロールを見て「剣客商売の大治郎さんだ!」とわかりとても嬉しかった。あの頃の誠実な人柄のまま年を重ねたんだなと。
青春時代が重なる特別な一本
この作品を私は他のお客さんとは違う特別な思いを持って鑑賞しました。それは、私が歴史マニアで幕末の会津藩に特別な感情を持っていて、時代劇が大好きで伝説の斬られ役福本清三の大ファンであり、そして何よりも三十数年前に大学生として太秦に下宿して映画村に入り浸っていた人間だからであります。青春時代の太秦の情景を思い出させてくれる素晴らしい作品でありました。
幕末の京都、会津藩士高坂新左衛門と村田某は長州藩士山形彦九郎と戦ううちに雷に打たれ、新左衛門は見知らぬ街で目覚めます。見た目は京の街のようだが何かが違う…そう、そこは現代の東映太秦撮影所!
ここから物語はスタートするのですが、街並みを見た瞬間に、ああ、あの路地か!と気がつく私。そして長屋の路地を向こうに行けば…そう、見知った商家が並ぶ通りが。映画村の構造をよく知っている人間にはくすりとしてしまう瞬間です。
撮影隊と一悶着あった後に鉄の梁に強かに頭をぶつけて昏倒する新左衛門。助監督の優子によって病院に運ばれるのですが、これがきっかけで記憶喪失になったと周りに思われた設定は見事!タイムスリップという荒唐無稽を説明しなくても済みますからね。そして病室の窓からビルが並ぶ現代の街並みを見て驚愕した新左衛門は病院を抜け出し、街のポスターで徳川幕府が滅んで140年も経ったことを知ってしまいます。
この部分でネットでは侍が街を歩いていたらみんながビックリして警察が飛んでくるだろう!とツッコミがありましたが、心配ご無用。京都太秦周辺ではチョンマゲ姿の人間が普通に街を歩いてます。撮影の合間に大部屋俳優達が時代劇の扮装のまま食事を取りに外出しますから。見かけても、なんや撮影かいな?なんて思う程度です。僕なんて一度王将の奥の席で食事を取っていたら、自分以外全員チョンマゲ姿のお客で満員になって、タイムスリップしたのかと思った経験がありました。(笑)
脱線したので話を戻します。幕府が滅んで140年、絶望した新左衛門は斬り合いをした寺の門前で自害しようとしたのですが、それも果たせず翌朝住職に助けられます。そして寺男として生活をする内に、偶然門前で時代劇の撮影に斬られ役として参加することになり、自分の新たな人生の目標を見つけるのです。そして助監督の優子の計らいで殺陣師関本の弟子となり斬られ役俳優の生活を始めます。
ここまでの脚本が実に自然で無理が無く、実際侍が現代にタイムスリップしたらこうなるんだろうなという説得力があるのが良いですね。そして主役の山口馬木也(敬称略)の演技が素晴らしい!私は剣客商売第4部からの彼のファンですが、メソッド法を身につけて完全に役になりきっていて、本当に武士が現代にタイムスリップしてしまったと思わせてしまうのです。
さて、ここから彼の斬られ役人生が始まるのですが、時代劇ファンにとって嬉しいのが福本清三イズムが溢れていること。福本清三は5万回斬られた男として伝説になった俳優で、惜しくも2021年に亡くなりましたが、元々この作品に参加する予定だったとか。その意志を継いだのが同じく斬られ役&殺陣師&東映剣会会長としてレジェンドである峰蘭太郎。彼が師匠として新左衛門を指導していきます。
そしてここからの時代劇の演出が愛に溢れているのです!新左衛門が斬られてのけぞる様は、まさに福本反り!!海老反りになって顔半分カメラに苦悩の顔を見せるのですが、福本ファンなら絶対反応してしまいます。その他にもあのシーンこのシーン、あれはあの作品のオマージュだとかこの作品のオマージュだよなとニヤリとすることが何度も。クライマックスの殺陣で30秒ほど動かずにらみ合うシーンは椿三十郎じゃん!と声を出してツッコみたくなってしまいました。こんなに時代劇と斬られ役俳優に対する愛が溢れている作品は見たことがありません。
この作品は3つのフェーズで構成されていて、最初はタイムスリップして主人公が現代とのギャップに戸惑いながら徐々に慣れていくフェーズ、次は時代劇の斬られ役として成長していくフェーズ、そして最後は大作の準主役に抜擢されて真剣での殺陣に挑むフェーズです。抜擢される際に撮影所所長がぽつりと呟く台詞、「いつか誰かが見ていてくれる」は福本清三が口にした名言でしたね。
ネタバレになるので詳しいことは言えませんが、真剣による立合を決心する理由は、書き換えた脚本によって会津藩が明治維新後に酷い苦しみを味わったことを知ったからでした。他の方のレビューでは真剣による立合を決心した理由が理解できないと言うのが有りましたが、これは会津藩の歴史を詳しく知らないからです。会津藩は戊辰戦争で徳川宗家の身代わりに朝敵とされ、新政府軍と戦って国を焦土にされた上に多くの人間を殺され、さらに一藩流罪とされて米が一俵も取れない下北半島に数年流されて塗炭の苦しみを味わい多くの人間を亡くしたのです。例えて言えば現代ならイスラエルに土地を奪われ虐げられているパレスチナみたいなものでしょう。それを知った新左衛門が斬られ役俳優から会津藩士に戻ってしまうのは至極当然というか。
そして、現代で真剣による立合はコンプライアンス上あり得ないという意見もちらほら。確かにそうなんですが、それを否定してしまうと物語の肝が演出できなくなるので許しましょう!さすがに殺陣に使うのは問題ですが、リハーサルで真剣を単独で振るうのは現在でもありますし、たそがれ清兵衛ではリハーサルで大杉漣が振った本身の真剣が飛んで大騒ぎになったシーンがおまけ映像で付いてますしね。(苦笑)
クライマックスの殺陣。これはマジで凄い!!監督によれば現代風のワイヤーアクションや手持ちカメラや広角レンズの撮影を使わず、敢えて昔風の据え置きキャメラでの撮影にしたのだそうですが、その迫力が尋常じゃない!!殺陣とは人間の力によって成り立つもので、VFXでは決してこの迫力は出ません。この斬り合いのシーンはマジでみんなに見て欲しい。これ見るためだけに私はブルーレイ買います!
何はともあれ、上映時間をたっぷり楽しませていただきました。本当はここであれも言いたい、これも伝えたいと思っているのですが、これ以上はネタバレになるので。とりあえず一言。
「だが、それは今ではない」
作り手の時代劇愛が起こした奇跡の一作
クレジットロールでの、安田淳一監督と沙倉ゆうの助監督(沙倉ゆうのは作中でも助監督役で主演)が担った役割の多さからも明らかなように、ほぼ実写映画水準の制作体制と単館での封切だったにも関わらず、評価面でも興行面でも大躍進している本作、そのどこが素晴らしいのかは各種のレビュー、評論が物語っていますが、結論的に言うならば最終盤の状況を体感したいなら、劇場での鑑賞以外の選択肢はほぼあり得ない、と断言できます。
ドラマ部分の面白さ、熟達した時代劇俳優による見事な剣戟自体は、ホームシアターでも味わうことができるんですが、このクライマックスだけは、演出の特性上、劇場で他の観客と鑑賞体験を共にしている、という状況が必須となります。単に作り手の時代劇愛を表現するのではなく、こうした劇場でしか体験できない要素を入れ込んでいるあたり、映画巧者ぶりがうかがえます。
東映京都撮影所がロケーションの提供などかなり強力に支援しているおかげで、演技、映像共に隙が無い、どころか近年制作の優れた時代劇映画と比較してもかなりの高水準に達しています。少なくとも鑑賞中に、「やっぱ自主映画だね…」などと感じることはほぼありませんでした(序盤の音響に少し引っかかるところがあったけど)。
クライマックスに至る物語の運びと、非常に優れた役どころだった沙倉ゆうの扮する助監督の扱いが、この部分だけかなりおざなり、というかありがちだった点だけ引っかかったけど、作品全体の評価を左右するほどではないと感じました。まずは劇場で、主演の山口馬木也を愛でましょう!
上手さは無いが監督の時代劇愛と主人公の魅力が溢れた良作
物語や展開に驚きがあるわけではなく、主演の山口馬木也さん以外の方は演技が特別優れてるわけでもありませんでしたが、とにかく監督の映画愛、時代劇愛が詰まっており心地良い鑑賞感を味わえました。
あとはなんと言っても山口馬木也さんの演技とそこから生まれる主人公高坂の人間的魅力の高さがこの高評価の全てだと思っています。
大好きな主人公でした。
万人にオススメできる素敵な作品でした✨
当初は1館のみで公開された自主制作作品が、口コミで人気が拡大。嬉しいことにまさかの地元でも公開です☺
幕末の侍が現代にタイムスリップしてしまい、時代劇の切られ役として現代で生きていくといった内容。
文明の進化に驚き、その反応にクスリと笑えるコメディタッチ。
真剣を持った侍が現代に現れたら、もっとトラブルになりそうなものだが、主人公は礼儀正しい侍であり、意外とほのぼのとした世界観。
序盤の感想として、確かに面白いとは思ったが、そこまで人気が出るほどか?という感じで観ていました。
しかし、後半になるにつれ様相が変わってくる。
クライマックスでは、手に汗握る緊張感と感動をいただきました。
何も考えずに観られるおバカ映画かと思っていたら、とんでもなかった😅
結果的にとても素敵な作品だなと感じました。
若者からお年寄りまで、誰にでもオススメできる作品です✨
壮齢以上に刺さる良作!
いやー、面白かった!
脚本や監督も良いのだけれど、更に良かったのが役者陣。
時代劇は勉強不足で、ほとんどの役者の方を知らなかったが、主役の山口馬木也さんの喜怒哀楽やユーモアに関する細かい表現力から、迫力のある立ち回りや心の慟哭。こんなに渋くて、上手い役者さんがいたのか!と魅入ってしまいました。そして、ライバル役の冨家ノリマサさんも上手い!言葉を発しない表情や佇まいで心情や思考を伝える事ができるのは、これまでにしっかりと研鑽を積み重ねてきた技術の証で、その役者さん達の努力と歴史を見ているよう。感心するだけでなく、尊敬するし、嬉しくなる。その他の役者さん達もしっかりした演技力で完全に安心して観ていられた。下手な人なんて誰もいなかったぐらい皆さんの完成度が高い。その演技を観ているだけで、笑顔になったし、涙も出た。
有名な役者やセットにロケ、そしてCGと、予算を掛けた大迫力の作品こそ映画の醍醐味!と思う観念を打ち崩してくれ、お金を掛けなくても個々の要素の品質が高ければ、立派に最高のものが作れると言う事を証明した作品だと思います。ああ、いかに我々はメディアに踊らされているのか。この作品に出るような役者さんやスタッフさんにしっかりとライトが当たってほしい。そして、そんな作品はなかなか作れないし、観れないけれど、たまにこう言った作品に出会えるから、映画って奥深いし、どんなに忙しくても時間を作って、自分は映画館に足を運ぶんだろうなあ、と改めて感銘を受けた作品でした!
目から鱗が落ちる大傑作
10 人で撮り始めた映画で、本年8月当初の公開は1館のみだったという時代劇映画である。口コミで話題となって公開スクリーン数が徐々に増えていき、遂に我が町でも公開されたので見に行った。目から鱗が落ちる大傑作であった。
時代劇は現在制作数が激減して瀕死の状態にあるが、日本のモラルを作って来たかけがえのない存在だったと思っている。日本人は、イスラムやキリスト教などのように宗教に頼らずに、世界にも稀な高いモラルを構築して来た民族である。その基盤となったのは、恥ずかしい人間になるなという教えが各家庭で徹底していたことで、恥ずかしい人間とはどういうものかというのは、江戸時代以前から芝居や講談などで語られて来た悪役の姿であったに違いない。昨今、闇バイトといった悪い誘いに易々と乗って人生を棒に振る若者が増えているのは、身近に悪い人間とはどういうものかと教えてくれる時代劇がなくなってしまったためではないかと思っている。
「鬼滅の刃」にも見られるように、かつての日本人は敵もそれぞれ事情を抱えた者と認識して、倒した後も手厚く葬るのを忘れなかった。この行いは、日清日露の戦争から第二次大戦中に至る日本兵の振舞いにも共通しており、日本兵は敵兵の遺骸を手厚く葬って墓標まで建ててやっている。敵といえども亡くなった後は仏になるという思いからの行動であった。
幕末の侍が現代にタイムスリップして来たらというアイデアは本作が最初ではないが、本作の会津武士の高坂新左衛門はリアリティが段違いだった。現代の街並みやテレビなどの現代文明に驚くのは共通しているが、ただの塩握りの美味しさと美しさに感動したり、いちごのショートケーキを一口食べただけで涙を流すほど感激して、自分たちの時代より間違いなく良い時代になっていることを全身全霊で感じる姿には、見ているこちらが涙を誘われた。
我々が見慣れた時代劇の1回放送分でも、彼らには見たこともないほど感動的なお芝居であることは、想像に難くない。こうした人物描写の一つ一つが実に丁寧で、登場人物のリアリティを爆上げしてくれていた。実に見事な脚本の手柄という他はない。
現代にタイムスリップした侍が誰よりも上手く出来そうな仕事が時代劇の斬られ役というのも無理がない展開で、上段に構える時は切先を上に向けないと背後の役者を傷つけてしまうといった時代劇ならではの配慮も、なるほどと唸らせられたし、本物の侍から見ても時代劇の斬られ役の演技はリアルなのだというセリフにも納得させられた。
戊辰の役の会津戦争における会津藩の仕置きは幕末史の一大汚点であり、西郷隆盛ほどの高潔な人格を持たなかった者が官軍の責任者だったために、幕末の京都で新撰組と一緒になって勤王の志士を殺戮された恨みを晴らそうとするかのように、戦死者の埋葬を半年も許さなかったと言われる。故郷のために命懸けで戦った者たちに対し、その埋葬を許さず、悪臭を放ちながら朽ちていく様子を晒しものにして死者を鞭打つというのであるから、まさに、時代劇に出てくる悪人そのものの所業である。
会津の人たちは薩摩人や長州人を深く恨み、近年に至るまで鹿児島県人や山口県人との結婚を許さないという家も多かった。昭和 63 年に、明治維新から 120 年経ったのを契機に、山口県人会から会津に対して仲直りの提案があったが、「まだ 120 年しか経っていない」と断られている。
生まれ故郷を追われて下北半島の斗南藩に追いやられた会津藩士たちは、酷寒の荒地で次々と餓死した。これらの仕置きを知った高坂の無念の思いはいかばかりであっただろうか。肉を切られて骨を折られたような気になったに違いない。その思いを晴らすために、高坂は命懸けの撮影を申し出る。一筆書いたからと言って許されるものではなく、完全に犯罪行為である。
この最後の戦闘シーンの迫力は筆舌に尽くし難い緊張感にあふれるもので、全身の筋肉を強張らせながら見入ってしまった。実際に斬り合いを目撃した江戸時代の人物の書き残したものを見ると、お互いに一歩も動かない時間がずっと続いたと書かれている。負ければこれまでの一生かけて築き上げた人生が一瞬で消えてしまうのである。容易に手は出せない。互いに動かない時間が長かったのがリアリティを爆上げしていた。実に見事な演出だった。
見覚えのある俳優は非常に僅かで、見たこともない人たちで描かれる世界は却ってリアルだった。高坂役の山口馬木也は頬のこけ具合など幕末武士の雰囲気を漂わせて余りあり、抜けない侍言葉や会津訛りが人となりを際立たせて見事だった。音楽があまり時代劇的でなかったのが残念だったが、文句のない大傑作だった。非常にお勧めの作品である。
(映像5+脚本5+役者5+音楽4+演出5)×4= 96 点。
日本人で良かった
コメディのはずなのに、140年の歴史の重みや、各登場人物の様々な思いを感じ、ジーンとくる場面がいくつもありました。
侍スピリッツは、皆の中に受け継がれている…この国に生まれてよかった。
タイトルなし
地味だし、役者は下手だし、華もないし、でも、ラストシーンは良かった。これまでのタイムスリップものをひっくり返す哲学的ストーリー。無念に歴史の中で亡くなっていった敗者たちの想いを吸い上げる話。会津の人たちがどれだけ残虐な仕打ちを敗戦後受けたか、武士として生きてきた自分は、単に生計のために生きるだけではなく、無念を新政府方への、自分の生きてきた倫理に沿えば、真剣で勝負を望むのが人として本当に生きる道なのだということを表現した。その点で胸を打つ。だからこそ、その気持ちこそがわかる相手も真剣で臨み、殺されることを望んだのだ。そして、その地点で、今の時代を行き直そうと決心する。何と倫理的な映画なのかと思う。日ノ本はこんなに豊かな国になったのかと涙するシーン。侍の精神は、野蛮だと思われようと、今よりずっと倫理的だったのだということを思わせる。そして、この2人の秘密を他の人達は最後まで知らないのもよい。そこには、時代劇を好きな人たちがいて、二重の世界が構成されているのもいい。
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