侍タイムスリッパーのレビュー・感想・評価
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侍魂
とりあえずめっちゃ良かったよ。お金が無くても、役者が知らない人でも情熱なのかな。面白いものは作れる。現代を感じ涙する主人公の気持ち。泣ける。先人の歴史の上に今がある。
素晴らしい作品だった。
時代劇好きは是非観てください
みんなが「真剣」に頑張ったら奇跡が起きた!
「一生懸命、頑張っていれば、どこかで誰かが見ていてくれる」の言葉が刺さった。
私自身は「私の今の頑張りは世界中の誰も知らないけど頑張るしかないな。」と思って過ごしてきたので。
脚本を書いている時も演じている時も、このあと、超速のスピードでこの言葉が本当になるとは誰も思っていなかっただろうな。脚本が良いので制作の段階で目利きの映画のプロ達の協力を集めることに成功していたけれど。
前半は軽快なコメデイで場内あちこちで楽しそうな笑いが聞こえてきました。
和楽器のアップテンポなBGMも良かったです。
現代文明に驚愕してのけぞりまくる姿にテルマエのウォシュレットを思い出し、お寺の住職ご夫婦とのアットホームなシーンにほっこり。住職の奥様の絶妙な間合いとトークに吉本劇場を思い出し、時代劇の行く末を憂う言葉に失われつつある殺陣の技、時代劇の裏方の匠たちをハリウッドに集結させた真田広之さんを思い出し、楽しかった。
なのに泣いてしまうとは!
脚本の変更を読み、会津の人達の悲しい末路を知って涙を流すシーン、涙が出ました。
戦乱の世に生き武士道を貫き亡くなっていった仲間を思い涙する。そしてここから、笑いは消え、真剣勝負に至るまでの間、客席のみんなが緊張感にあふれるのが感じられました。
そして、その緊張感に終止符を打ったのが優子さんの一撃でしたね。一瞬でコメデイ路線に戻ったのはさすがと思いました。
そしてラスト、もしかしたら忘れていた人もいたかも、場内は「あ〜!?」というざわめき、ため息?「そうか!君はここに!?」という感じ。
良かった。なんとなく心に引っかかっていた。漆黒の闇の中一人残され彼はどうしたのだろうか。最後に、解決した安堵感。
でも大丈夫、頼れる先輩が2人いるから君は大丈夫という安堵感、満足感を持って映画館を後にしました。面白かった!
楽しかったです。
観て良かった!
私、幼い頃より祖母と一緒に東映時代劇3本立てを観に行きクライマックスでは夢中で声を上げて主演の侍を応援。
映画館はライブ会場のように騒然と盛り上がっていたものでした。
もちろん遊びはチャンバラ 主役と悪役(斬られ役)を交代しながらね(笑)
時代は、用心棒〜椿三十郎、錦之助の宮本武蔵、市川雷蔵の眠狂四郎、座頭市
そしてTV時代劇へと私のヒーローは移り
木枯らし紋次郎〜鬼平犯科帳へ、映画版鬼平も江戸時代の雰囲気が溢れ格好良かった!
そんな私がこの映画を観て笑って泣いて胸を熱くしてエンドロールでは子供の時以来、スクリーンに拍手をしていました。
主役を演じられた山口馬木也さん最高!他の役者さんも 勿論監督最高!並びにスタッフの方々
ありがとうございました。
一緒に鑑賞して拍手を送ってくれた観客の皆様
ありがとうございました。
胸躍る映画でした。
映画館で映画を観る回数が激減していた昨今、単館から全国に拡がったという謳い文句に釣られて観に行き、満足して帰ってきました。
本作はいくつかの対比や暗示が上手く紡がれて物語を作っている感想です。
同じ殺陣を演じる役者として精進を重ね、片や人気の時期にスターとなってスポットライトを浴びる仇役に対し、斜陽の時期に大部屋俳優としてスポットライトの陰の立場にいる主人公。それは奇しくも、等しく信じる士道を歩んでいるのに光と陰になってしまった長州と会津に重ねられている。また最後の立ち合いのために型をつかっている最中、殺陣として上段の刃を天に向けていた構えを、刃を寝かせた構えに直す。それは様式美である殺陣から、相手を斬る為の剣術(斬る意志)に戻った事を暗示させる。さらに共に時代劇を愛し盛り上げようとしているはずなのに、武士の意地が故に本身を使い、殺陣でなく立ち合いをしてしまう。所々に散りばめられた主人公のヒロインへの淡い思慕や周囲の人達の温かさにほだされながら、それら全てを捨ててもとどめられぬ武士の意地。
これらのいくつもの段落がバラバラにならずきちんとした物語となっていて見応えがありました。
また最後の決闘のシーンは本当の武士同士の命をかけた斬り合いの様な気迫がかんじられ、肘掛けを掴んでしまう程でした。
唯一物足りなく思ってしまったのは、主人公が現代を認識し、殺陣に生きようとするまでの部分が薄く感じたところ。今を受け入れざるを得ないと納得する部分をもう少し厚くしても良かったのかな〜と。(長さの問題や、描きたい部分ではなかったとかテンポが悪くなるとか理由があったのかもしれませんが。)
平日の昼間にも関わらず結構のお客さん。土日には満席になることもあ...
平日の昼間にも関わらず結構のお客さん。土日には満席になることもあるという。
口コミで全国に広がった大ヒット中の映画。映画関係者の知人のお勧めを聞いて見に行った。
★とても誠実で人情味の溢れるコメディタッチの時代劇撮影現場の物語。いい映画で最後まで面白かった。日本の時代劇の面白さを今一度蘇らせたいという「思い」が伝わってきた。殺陣の迫力あるシーンは映画の見所である。俳優もそれぞれいい味を出していた。監督・脚本・撮影:安田淳一。
★戊辰戦争の頃の会津藩士の武士がタイムスリップして、京都の時代劇撮影現場に突如現れることから始まる。成り行きでその本物の侍が斬られ役として活躍し始め、その迫力ある演技?が話題となる。そして予期もしない展開に発展していく。幕末の会津と薩長との戦いを知る私としては、タイムスリップした会津藩の侍がある時突然知る会津の悲劇。そこにも感情移入してしまった。
★映画「太秦ライムライト」の主人公日本一の斬られ役・福本清三。彼の名前が映画のクレジットにも出てくる。(2021年1月1日に77歳で逝去)。
タイムスリップ時代劇コメディ
笑いあり、涙ありこれが自主映画なのかぁ、凄い。しかも安田淳一監督は米兼業農家の方。
自腹をはたいて製作したのもあっぱれ。
発送の着眼点も面白いし、適応能力の高い侍も
なるほどと思った。舞台挨拶で侍タイムストリッパーと間違えて言ったのも功を奏したよね。
ある意味この話で一生、旨いお酒が飲めるに違いない。
京都の撮影所の方々が脚本が面白いから
協力してくれたのも納得。
『今はその時ではない』は日常的に使いたくなる
名言。
殺陣は立派な仕事であると改めて認識。
爽やかで楽しい作品でした。
時代劇がまた、元気になる事を願います。
みんなあったかい。
お寺のお父さんも、助監督のゆうこちゃんも優し〜〜〜!!!私はお寺のお母さん、1番好きだなぁ〜。
笑っていいのか?ダメなのか?となってしまうことが幾度かあった。(特にビンタのところは劇場でチラホラ笑いがあったけど、次のコマでスンと消えた)
主役の人は、訛りが染み渡っていて、本当に迷い込んだみたいだった。感動してたお米も普通に食べるようになったり、住まいとかも無償だし、その他、もっと大袈裟に感謝するシーンが見たかったな〜。人情と義理堅い役なのだから、
他の人のコメントにあった、真剣の時に上段の構えをもとの位置に戻す、みたいなシーンがあったら嬉しかったな。
もとの時代で主人公がどんな生活してたか〜と、もとの時代を捨てて今を生きると覚悟する場面も、あるとよかったな。。相手との因縁も(自分に教養がなく)分かりづらかった、、。(それは自分のせい)
ドラマ、不適切みたいな印象。
カメトメみたいな、ミニシアター系映画で若干点数が高めだなと思った。
驚・笑・感・泣・笑
観られて良かった!
話題になっていると知り観たいと思っていましたが、まさか地方でまで上映してくれるとは。感謝感謝です。
過去から来た武士を演じ又、役者として武士を演じるとは、、、難しい役どころだったと思いました。しかし自然な会津弁や武士の所作などで見ている側はすっかり高坂新左衛門にハマっていました。この作品を見ていて脚本が面白いんだなぁと感じました。幕末に生きた武士(もののふ)の切なさ、武士らしさなど共感出来てしまい心を捉えられました。何といっても殺陣のカッコ良さ。思わず小さく『カッコいい』と声に出てました。見飽きない映画だと思います。最後のオチは笑えた。
主人公は師匠の言葉に従い、刀を捨てるべきだった
時代劇ラバーの自分としては、本作の監督とスタッフ、俳優陣の時代劇に対する熱意に頭が下がります。今の時代にこんな時代劇トリビュート映画を観ることができること自体、幸せなことです。ありがとうございます。
本作は3つのパートに分けることが出来ます
A:会津藩家老から密命を受け、同僚と二人で長州藩士を襲撃するが…
B:2007年頃の京都にタイムスリップし、周囲のサポートを得て時代劇の斬られ役になるまで
C:本格時代劇映画「最後の武士」の敵役に大抜擢されるが…
以下、パートごとに良かった点と気になった点など。
Aパート。
ここはガチの殺し合いシーンなので、Cパートよりもリアルさが要求される場面です。標的を待ちながら暗殺者の二人での思い出話は緊迫感が削がれます。これから人を斬ろうとする人間のようには見えませんでした。そういうのは前日の居酒屋で最後の盃を交わす設定にしておけば、もっとよかったかも。あと、斬り合いのシーンのライティングが白じらしい気がします。あれじゃ満月。しかもその後いきなり雷雨。このAパートの斬り合いにこそリアリティを込めて欲しかったです。
次に本作唯一のコメディタッチのBパート。
山口馬木也さんはじめ役者陣の熱演が光ります。時代と文化のギャップギャグ、武士が平和と繁栄を享受してしまうおかしみ、斬られ役の師弟関係、大変楽しめました。しいて言うなら、風呂とかトイレとか服とか、もっと身近な風俗についての驚きや戸惑いを見せてもらえるとより楽しめたと思います。
Cパート。
物語はここから一気にシリアスに。斬られ役の役者として軌道に乗った主人公は、会津藩の悲劇を知り深い葛藤に陥ります。「斬られ役の自分は偽物の存在に過ぎない…。必死で戦い、死んでいった者たち(本物)に申し訳ない…」この葛藤を乗り越えるためにどうするか。
主人公は抜擢された大作映画の中で、同じ武士である相手に本当の斬り合いを申し込みます。「大義のために命を捨てることこそモノノフの本懐である!」勝負は決し、相手は潔く死を受け入れます。主人公は思いとどまり、作り物であることを受け入れます。
本作の山場であるこのシークエンスが、実は時代劇が死んでしまった最大の原因でもあるという皮肉な構造になってしまいました。会津藩の悲劇も昭和の戦争も、すべてこの「大義」とやらのせいです。彼らの思想や生き様は戦後民主主義に受け入れられるはずもなく、「大義」を失った時代劇は勧善懲悪のチャンバラ活劇となり果て、衰亡しました。「武士道」や「大義」へのこだわりが時代劇衰退の大きな理由の一つです。
もう一つの理由は「本物らしさへのこだわり」ではないかと思います。厳格すぎる時代考証、本身を使っての死亡事故など、本物へこだわるあまり、時代劇は創造性を失い硬直化してしまいました。そもそもわれわれは「本物」など知らないのに。本物らしさを追求し本身でチャンバラすれば客は感動するというのは安易な思い込みです。チャンバラせずとも、言葉遣いや立ち居振る舞いで十分武士としての本物らしさは出せますし、山口馬木也さんの演技は見応えありました。
武士道に凝り固まった武士が、平和と繁栄を享受し、本物へのこだわりを捨て、作り物としてのプライドを獲得し、ラストで髷を落とす、そんなストーリーであればもっと若年層にも受けるのではないでしょうか。劇中で出てくる不良少年3人組。彼らに訴求する新しい時代劇を作ってこそ、時代劇復活の道があるのでは。ウェス・アンダーソン監督のように、あえて作り物感を主張するような時代劇映画があってもよいのでは。関本師匠の言う、「作り物を本物らしく見せることこそ、我らのプライドだ」という言葉は映画製作全体に当てはまる言葉だと思います。主人公は師匠の言葉に従い、刀を捨てるべきでした。
時代劇の歴史は3つのパートに分けることが出来ます。
A:チャンバラ活劇映画の量産時代
B:1954(S29)の「七人の侍」に始まる時代劇映画の黄金時代
C:勧善懲悪チャンバラTVドラマの量産時代
山本優子が好きな時代劇として口にするのは全部C時代のテレビドラマばかりです。時代劇業界は活況で、撮影所や役者陣は儲かったでしょうが、同じパターンの繰り返しに陥った時代劇はそのまま死んでしまいました。そういう意味で、劇中の無邪気な心配無用ノ介の姿には先の不安を感じました。やっぱり時代劇はチャンバラ活劇でしかないのでしょうか。変なこだわりに囚われず創造性に富んだ面白い時代劇がまた観られる日が来ますように。
タイムスリップ先がバツグン
自主制作で低予算と考えれば満点以上
新聞記事で読んで知り、話題になっているので観てみようと思い観ました。
上映館が拡大されて、行きつけのTOHOシネマズ新宿でも公開されることになり、auマンディで割安で観ることができました。
面白かった。
企画や脚本が良い。
登場人物も良くて、演じる役者さんも(前の口コミでは厳しい意見もありましたが)関西で活躍されている役者さんが多いとのことで、東京では馴染みが無いかもですが、皆良かったです。特に住職の妻がいい味でした。冨家ノリマサさんは以前観た「愛のぬくもり」に出ていて、全く違う役を演じ分けていて、さすがです。
よくあるタイムスリップして時代錯誤してドタバタするコメディかと思いましたが(“斬られ役”にはなりきれなくて本能でやり合ってしまうとか、誤って真剣で人を斬ってしまうとか)、そういう場面もありますが、悔いたり戸惑うよりも受け入れて前向きに生活していく姿が中心です。
会津のその後の悲惨な歴史を知ることになり、それは感情が爆発するのはそれはそうだろうと思いましたが、そこにクライマックスを持って来るのは深いと思いました。
内容の深さも、映画や歴史に対する主義主張も感じました。
劇中劇の結末はお見事と思いましたし、本編のラストには驚いて笑ってしまいました。
本当に良く出来ています。
とても自主制作で低予算とは思えないです。満点にはしませんでしたが、自主制作や低予算のレベルからは満点以上の作品です。
133分を感じさせない凝縮感。
時代劇に愛を込めて、真剣勝負は続く
都内1館からの公開が、評判が評判を呼び、現時点で全国200館以上に!
あの“カメ止め現象”再び…!
ファーストランや全国拡大から2ヶ月。やっと福島でも公開スタート。
と言っても隣町の映画館で一週間限定上映。急いで行ってきた。
“カメ止め”はゾンビ×映画愛だったが、こちらは時代劇愛と現代にタイムスリップしてきた侍…!?
幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門は、密命を受けて長州藩士と対する。
刃を交えた時、落雷が。
目を覚ますと、見知らぬ城下町。さ迷っていると、か弱きおなごの悲鳴が…!
不届き者め、成敗致す!
その時、“心配無用ノ介”と名乗るご仁が。
助太刀致す!
カット! お前何やってんだ!?
…!? !? !?
やがて分かる。徳川幕府が滅んで百四十の歳月…。
ここは、時の果ての日ノ本。時代劇の撮影所だった…!
大昔の侍が現代にタイムスリップ。特別目新しい設定ではない。幾つか思い浮かぶほど。
使い回されたネタだが、それでもまた作られるのは、侍×現代、そこに何か面白さと魅力のケミストリーがあるから。
本作もベタと言えばベタなのだ。
“撮影”を“本当”と思って助太刀。タイムスリップ時代劇のTHE定番。
重石(作り物)を軽々持ち上げるおなごに驚き、幽霊(特殊メイクした怪談映画出演者)にこれまた驚き…。
コントか!漫画か!
でもそれを、こちらの期待通りに面白く見せてくれる。
これも監督の腕。自主製作映画を撮り続け、本作が3作目の安田淳一。
超低予算故、インタビュー記事なんか見ると相当苦労して完成に漕ぎ着けたという。
それが最高の形となって報われ、花開いた。
映画は予算や話題やビッグネームなんかじゃない。面白いアイデア、情熱や愛があれば、飛びっきりの映画は作れる。
これもベタな事だが、それを体現した。
『男はつらいよ』の大ファンだと言う監督。山田洋次に本作を見て貰うのが夢。
だからか、あのシーン(笑)。とあるシーンで、“滑る”とか“落ちる”とか禁句。寅さんでも定番のこのネタに、私ゃ堪らなく嬉しくなった。
新さんが周囲への把握を出来る人物で良かった。いつまでも“ここはどこ? わたしはだぁれ?”だったら話にならないし。
とうの昔に侍の時代は終わった。侍はもう不要。ならばここで惨めに生きてたって…。
一度は命を絶とうとするが、救いの手が。
撮影所の助監督・優子。現代に来たばかりの新さんを最初に相手にしてくれた人であり、新さんは一度病院に運び込まれるも逃げ出す。気に掛け、探していた。
居候させてくれた寺の住職夫婦。
彼らの善意が優しい。この人情も寅さんだね。新さんの事は記憶喪失者と思ってるけど…。
握ってくれたおむすびが美味しい。米の美味しさは変わらない…いや、自分のいた時代よりずっと美味しい。本当にあのおむすびが美味しそう。監督は米農家でもあるとか。
ケーキなるもの。これほど美味なる菓子が…! そうか、こんなに美味なものを皆が食べられる時代になったのか…。涙を流しながらケーキを食べる新さんに、何故だか私も貰い泣き。
絵が動いた!(TVです) あの“心配無用ノ介”! TVにも驚いて、興奮して、ぼろ泣きして…。
もうとにかく、新さんの人間力にやられる。
真面目。実直。謙虚。感謝を忘れず、礼儀を通し、忠義を貫く。
本物の侍にしか見えない。
THE侍であり、人情侍であり、恋する侍でもある。
時代劇を中心に多くの映画やTVに出ていたようだが、キャリア25年にして初の主演映画。
山口馬木也。もう誰もが彼を忘れないだろう。
パッと見渡辺謙を彷彿させる風貌。
体現した新さんがやがて見出だした道は、“アノ人”。
寺で時代劇の撮影。
が、斬られ役の一人が体調不良に。
何処かに侍の格好をした代役が…いた!
急遽撮影に参加。言われるがままに。
ド緊張の中、“坂本龍馬”の名に会津藩士の目が光る。
本物のような(本物なんだけど)気迫。“斬られ役”を見事こなす。
すると、スタッフ/キャストの間で評判上々。
それがし、この時の果ての日ノ本で、何の道を行くか。分かった気がするでござる。
いざ、撮影所へ。
弟子入りも志願。
時代劇の斬られ役…!
新さんは腕の立つ侍だ。落雷のあったあの夜、対した長州藩士が名を聞いたほど。
そんな本物の侍が現代に来たんだから、誰にも負けず、時代劇でもスターとして…じゃない所が本作のミソ。
侍としては本物だが、斬られ役としてはズブの素人。教えを乞う。
斬られ役をコツコツコツコツと。
声が掛かるようになり、次第に多忙に。
そして遂には、一話限りだが“心配無用ノ介”のライバル役を務めるまでに。
まさかまさかの名斬られ役に…!
時代劇ファン、映画ファンならすぐ分かる。新さんの新たな人生は、日本一の斬られ役、故・福本清三氏。100%、モデルと言っていい。作品も福本氏に捧げられているし、新さんが教えを乞う殺陣の師範役は福本氏の弟子でもあった峰蘭太郎。
福本氏の生きざまを彷彿させる新さんの姿と物語に、また私の涙腺が…。
福本氏の生きざまって、誰にも通じるものがある。
目立たなくたって、華やかでなくたってもいい。地道にコツコツコツコツと。
頑張れば、どこかで誰かがきっと…。
この福本氏を表した格言でモットーは劇中でも。
福本氏はハリウッド映画『ラストサムライ』に抜擢されたが、新さんにも思わぬオファーが…!
撮影所で久々に製作される大型時代劇映画。しかも主演は時代劇のスター・風見恭一郎で、10年ぶりの時代劇復帰作。そのライバル役=準主役!
斬られ役にとっては一生に一度かもしれない大チャンス!
ところが新さん、これを断る。自分は一介の斬られ役。分不相応。
そんな時、風見が驚きの正体を告げる。
これには唸った。脚本の妙。
風見は、あの落雷の夜、対した長州藩士であった…!
新さんより30年前の時代にタイムスリップした風見。
新さんと同じ。訳が分からず。次第にここが遠い時代だと知る。
時代劇の撮影所をうろついていたら、端役と間違われ、斬られ役としてスタート。大成し、主演を務めるスターに。
この時代にもすっかり順応した。スターとして。
そんな時、TVで時代劇の斬られ役として出ていた新さんの存在を知る。
あの時の会津藩士…!
ここで会ったが百年目。決着を付けに…ではなかった。
会った一番の理由は、共に時代劇を撮ろう。侍が失われたこの時代に、本物の侍の生きざまを見せてやろう。
もう我らの時代ではないのだ。藩の為とか密命とか遺恨など下らない。
新さんは侍としてそれを捨てきれない。断るのもそれ故。
双方の言い分は分かる。時代に順応する。己の信念を曲げない。譲れないものがある。
が、今の自分は何なのか。
師範の言葉。斬られ役の悲願。
新さんは出演を決める。
作り物の時代劇に、本物の侍が二人。
その構図だけでもユニークだが、しっかりとこの二人の関係性も描いている。
かつては本気で斬り合おうとした二人。何かといがみ合う。と言うか、風見はオープンだが、新さんの方がそっぽ向く。
端から見れば大スターに斬られ役がタメ口で。
しかし、撮影をしていく中で…これもベタながら胸がすく。
徐々に打ち解けていく。分かり合っていく。
時には助力にもなり、貸し借りナシ。
風見が時代劇を10年も離れた…いや、捨てた理由。元の時代で自分が犯した罪。
時代劇で本当に人を殺めないとは言え、あの時の悪夢が脳裏を過る。堪えられない。
風見もただの大スター然ではなく、味わい深く内面も。終盤のドラマを支える。冨家ノリマサの風格。
ライバル同士が交流を深める。出演する映画の設定ではそうとは知らず交流を深めた二人が斬り合う運命に。『座頭市』第1作を彷彿。
撮影も佳境に。中打ち上げで盛り上がる。
脚本に追加部分が。それを読んで新さんは嗚咽する。
会津藩の悲劇…。
何かを失ったように。飲めない酒を飲み、町中を放浪する。チンピラに絡まれる。
惨めな自分。会津藩士が悲惨に死んでいったように、自分も惨めに朽ち果てていくのか…?
自分は何者だ? 斬られ役か? 侍か?
斬られ役ならば、このままおめおめと斬られるだけなのか…?
侍ならば、何の為に生きるのか…?
新さんは風見や監督に提案する。
真剣勝負がしたい。
真剣を使って撮影する。
おいおい、幾ら何でもそれはあり得ないだろ?
…まんざらそうでもない。かつては本当にあったとか。が、『座頭市(1989年)』の撮影で真剣を使って事故が起こり、禁止に。
無理もない。一大事。どころではない。一命に関わる。
新さんの気持ちは変わらない。
撮影の為のリアリティー追求ではない。
侍としての生きざまを刻む。この一瞬に全てを。
誰も賛同しないと思われたが…、監督は熱狂。風見も承諾する。
この時、風見が流した涙…。彼も失ってはいなかったのだ。侍の精神を。
全ての準備や安全を整えて、いよいよ当日。
もはや映画の撮影じゃない。本当の闘い。
あの落雷の夜から、こうなる事は運命だったのかもしれない。
新左衛門対風見。本物の侍二人が見せる真剣勝負。
緊迫感溢れる睨み合い。実に40秒近く。やはりこのシーン、『椿三十郎』へのオマージュ。
遂に刀と刀がぶつかる。
劇中劇云々ではなく、本作は映画だ。だから勿論、真剣など使われていない。
が、二人の気迫、ぶつかり合う刀と刀…。
真剣は使われなくとも、そこに漲るは紛れもない真剣であった。
果たしてオチはどうなるのか…?
一瞬、アッともさせられたが…。
当人同士は本当にそうだったかもしれない。生きるか、死ぬか。でも、もしそうなったら、映画として後味が悪い。時代劇映画ならまだしも、本作はあくまで時代劇撮影。
オチ、そう来たか~!
ちゃんと映画作品としての捻りや笑いも忘れない。
あの優子さんのビンタ。誰もが沙倉ゆうのに胸キュンなっただろう。
満足感、充実感、面白さ、感動、後味も最高!
ラストシーンもナイス! 『侍タイムスリッパー2』…?
期待以上。評判に便乗してじゃない。
見ていて笑いがこぼれ、自然と涙も溢れ、やっぱり映画って最高。幸福感にも包まれた。
本年度BEST!
優れたタイムスリップSFであり、笑えるコメディであり、感動のドラマであり、本格時代劇である。
時代劇の今の現状も訴える。
かつては毎週毎日のようにTV放送されていた時代劇。それがいつの間にか民放から姿を消し、今時代劇と言ったらNHKかたまの特番か映画くらい。
時代劇は日本の伝統。宝でもある。
それはもう、消えゆく運命しかないのか…?
否!
今年ハリウッドが見せた本気の時代劇。
本作のようにユニークな形でも。
今後も時代劇映画の期待作もある。
そしていつの日か再び、あの頃のように民放TVで時代劇を楽しめるように。
時代劇は失われちゃいない。
日本で、世界で、時代劇の精神は受け継がれている。
今日も新さんたちは挑む。
時代劇に携わる者、愛する者の真剣勝負は続いていくーーー。
全917件中、321~340件目を表示