「ダラダラと台詞で説明しすぎ。脚本がペラペラ。」侍タイムスリッパー かろさんの映画レビュー(感想・評価)
ダラダラと台詞で説明しすぎ。脚本がペラペラ。
どうして大絶賛コメントばかりなのか、理解に苦しむ。
・高坂が仲間である村田のことを、心配する様子がない。思い出しもしない→薄情。
・高坂が家老から直々に命じられた大役を仕損じたことを、悔やまない→責任感がない。
・元いた時代を懐かしんだり、現代とのギャップに憤ったり喜んだりが、タイムスリップものなのに極端に少ない。
・東映のバックアップを得られて気が大きくなったのか、やたらと立ち回りのシーンが多い。
ここぞというところで出すからカタルシスがあるのに、全編ずーーーっと立ち回りがある。
役者さんの殺陣は素晴らしいが、飽きる。
・20年時代劇で斬った斬られたを散々やってきた風見が、20年目にいきなり「昔殺した一人の武士の、恨めし気な顔を思い出すようになって」時代劇を捨てるのが不自然。
・会津の悲惨な末路を知って、高坂が風見に真剣勝負を挑む…え?なんで?
風見が直接会津を攻めた軍勢に加わっていたならまだしも…100歩譲って「新政府軍の中でも、最も苛烈に会津を攻めたのは長州であった」等の描写があるならまだしも。
友情を育んだ風見と今さら「殺し合い」をする根拠が弱い。
過去に映画撮影で真剣を使った役者の死亡事故が起きています。
「真剣を使いたい」と、もし役者が言い出したら、制作側は全力で止めるはず。
監督が「それ面白いね」で通る話ではない。
要するに、ラストの見せ場:真剣勝負に持ち込む納得できる理由を、監督が思いつかなかったのでしょう。
この映画を見て感じたのは「見せたい(撮りたい)画があるから映画を撮る」という監督の姿勢で、あくまで画面優先であること。
内容は後から付け足しにすぎないので、キャラクターが練られていないし、薄っぺらい。
侍から見た現代は、良いところだけでなく悪いところも沢山あるはずで「血を流して手に入れた新しい世が、こんな有様になっているとは!」と愕然とし、後悔する→武士の魂を現代に残そうとするのが「メインキャラ2人が侍である意味」だと思うのですが、そんな描写はまったくない。
その割にムダなシーンが多い。
・高坂が撮影所で幽霊の扮装の役者に驚く→心配無用ノ介の撮影現場でクレーンに頭をぶつければ良い話で、まだるっこしい。
・優子を寺の娘に設定すれば、カットできるシーンが大量にある。
実家(寺)で時代劇撮影が頻繁にある→時代劇好きになる→助監督の道への方が自然。
・高坂が不良少年に絡まれるシーンは、中打ち上げ直後の出来事にすれば良かったのに。別シーンにする意味がない。
中打ち上げといえば、あの場で追加台本を配るのはあり得ない。
アマチュア映画なら良いが、「最後の武士」はハリウッドから声がかかる有名監督が撮る大作映画。
酒の入った席で、台本を紛失して内容が流出したら一大事!
そのあたりが、アマチュア監督の「想像力のなさ」が出てしまっている。
結論:日本アカデミー賞最優秀作品賞は過大評価。
米でSHOGUNがゴールデングローブ賞を取ったので、それにあやかって日本でも時代劇ブームを盛り上げよう!ということかなと。
(東映の時代劇に携わるプロフェッショナルの皆さんは素晴らしかったです。)