劇場公開日 2024年8月17日

「今も生きている東映時代劇の魂」侍タイムスリッパー 椿六十郎さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5今も生きている東映時代劇の魂

2025年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

楽しい

 やっとアマプラに上がっていたので昨日見ることが出来た。娯楽時代劇としてはもう文句の付けようのない良い出来だったが、更に驚いたのは、同じ日の18:45からBS・NHKでやっていた「アナザーストーリーズ」での・・・この映画の特集である。

 確かに、この映画のヒットは、インディーズで・・・、たった2,500万円の予算で・・・、それも時代劇で・・・、シネマ・ロサと云う、申し訳無いが「場末」の映画館ひとつから始まり、今では10億を超えようという興収を上げたと云う事は、安田監督が作った奇跡と言える。しかし、このドキュメタリーを見れば、それだけでは無く、太秦の東映京都撮影所の・・・例えば撮影部・衣装部・小道具・床山そして殺陣師達の魂が注入されてこその仕上がりだ!と云う事が分かった。

 特に、監督の要望に合うように撮影所の財産である着物を惜しげも無く出してくる衣装部。どんどん伸びてく日程にも拘わらず何とか時間をやりくりしてくれる撮影部やプロデューサー、そして何よりもこの映画への出演を予定していた福本清三さんの意志をつぐ殺陣師集団・東映剣(つるぎ)会の心意気だ・・・。この映画を「第二のカメラを止めるな現象」と言う人もいるが、この東映時代劇に関わって来た人達の気持ちを思うと少し違った映画の制作風景が見えてくる。

 ごらんになっていない方は、是非!そして、「アナザーストーリーズ」と一緒に!再放送は28日午前中にNHK・BSであります。

 最後に・・・、この映画が日本アカデミー賞に相応しいか否かについて疑問を呈する発言が散見されるが、基本的に大した権威も無い日本アカデミー賞への幻想に基づく発言だと思う。元々このコンペは、世界三大映画祭にも入っていない映画関係者の人気投票でしかない米国アカデミー賞を、この小さな島国に移入したものに過ぎず、およそ権威などとは無縁のもので、映画に対する絶対的な評価だと思わない方が良いと思う。まあ、昨年は大手制作会社(と言っても日本に大手と呼べる製作会社が有るのかも疑問だが)にこれだ・・・、といった作品が無かったから票が集まったと言うことであろう。

椿六十郎
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